121-2.苦難のダンスレッスン①(シャミー視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(シャミー視点)
いや〜〜、しかし。
女の子は身綺麗にしたら、見違えるもんやなぁ?
チャロナちゃんもドレス姿になったら、ほんますごいわ。ずっと昔に見た、亡くなられた王妃様の絵姿と瓜二つやで?
そんな御方の練習相手とは言え、俺がダンスの相手でええんやろか? たしかに、年も近いし背丈の差も大き過ぎはしないけども。
(ええの? 俺、旦那様に殺されへん?)
実は俺。王女様もだけど、旦那様が王女様を気にかけていらっしゃるのを知っている。
だって、あの旦那様がやで?
王女様の作られるパンを、パン嫌いだったのが嘘やと思うくらい召し上がられるし。あれは、王女様のパンが美味過ぎるせいもあるけど。
でも、ほんのわずかやけど、微笑まれるし? あれには、旦那様の冒険者時代の異名【氷の守護者】が嘘やろ!? と思うくらいだった。絶対……絶対気があるどころじゃ済まないで? 多分やけど、今は使用人扱いの王女様の、後見人どころか婚約者になっていてもおかしくない!
ま、追求しても俺にとっては意味ないし、今はお役目を果たすまで。
王女様は、まだヒールに慣れていないせいかよろよろされていたので、俺が手を差し伸べた。
「リラックスやで〜、チャロナちゃん?」
「う、うん。けど、私こんなヒールの高い靴履いた事がなくて!」
「俺の足踏んでもいいから、慣れよか?」
「ひぃえ!」
とりあえず、ダンスのレッスンをまったくした事がない王女様の特訓や。
エイマーさんの方は、マックス様が頑張られていらっしゃるし、俺は俺で教えるしかない。とは言え、俺も執事の教養に組み込まれてたのを必死こいて覚えた程度。
サイラと同じく豪族の出身やから、ダンスの教養はいくらか。だもんで、本格的に覚えたのはこのお屋敷に来る前の、見習いの見習い時代。当時よりはマシになっていてもマジもんで教えれるかは怪しいけど。
が、メイド長からのご指名や。やるしかあらへん!
話し方がいつもの同僚口調でも、なんも言われんし!
「ほいほい。まず俺の前に立って?」
「う、うん。シャミー君結構大きいんだね?」
「ま。この年代じゃ普通程度やし。サイラとピデットと挟まれるとチビに見えるやろ?」
「ご、ごめん」
「ええってええって」
実際、あの二人に囲まれるとチビに見えるからなあ?
あいつらがデカ過ぎなだけやで? マックス様や旦那様には劣るけど。
(けど、ほんまちっこい)
この細っこい手でよくあれだけのパン作りが出来るなあ?
実家で、むっかーし家政婦のおばはんの手伝いをしたこともあったけど。パン作りは特に女性には重労働やで?
なんか秘密がありそうやけど、俺みたいな人間が聞いても良くないやろな?
「次に、俺の手に自分の手を添えて」
「こ、こう?」
「そうそう。ええでー?」
もともと立ち姿は綺麗だったし、器用ちゃ器用やな?
グローブ越しで手の感触まではよくわからないが、やっぱ孤児と冒険者だった生活を送っていたからお貴族様のような綺麗な手ではない。
けど、俺は悪くないと思うで?
だって、笑顔で一生懸命料理を作ってくれる手なんやから。
そのお返しになるかはわからんけども、今日は俺の出来ることをするまでやで!
「ほい。まず右、右」
「右……右?」
「かったい、固い。ヒールを怖がらんともっとゆったり」
「う、ううう……」
ドレス着る機会はまだ二度目らしいし。……先は長いなあ?
とりあえず、ステップよりも足運びを教えるのが中心になり、一旦離れて同じ動きをしてもらうことになった。
すると、王女様はヒールの高さに苦戦しながらも。俺と同じ動きをするのに頑張っていた。その愛らしさに、健気やなと思わずにいられない。
もし、旦那様と踊られたら……大旦那様のデュファン様と王妃様の再来やんな?
随分と昔やけど、陛下と王妃様を巡って取り合い合戦されてたらしいのは俺でも知っている。観劇にもなるくらいやしなあ?
「ほい。次は左、左」
「う、うん!」
先は長いけど。王女様にはあと半月程度で覚えて貰わなきゃあかんらしい。
なんでかは、ゼーレンさんにも教えてもらえなかったけど。
次回はまた明日〜




