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119-3.共有②

お待たせ致しましたー






 *・*・*









 自分のうっかりで、エスメラルダさんだけでなくサイラ君にも自分の正体を知られてしまったのだが。


 絶対言いふらさない、出来ない! と言ってくださったから、正直ほっとは出来たけども。


 とりあえず、ラザニアパスタの試作を食べることになり。作業場へとエスメラルダさんに案内してもらうことになった。


 中には誰もいなくて、調理場よりは設備は劣っても魔石コンロがあるらしい。湯がいていたのか、熱気とパスタを茹でた匂いがする。



「まあ、これなんだけどねぇ?」



 私が転生者と知っても、態度を変えないエスメラルダさんは調理場の奥を指さした。ちょうど、大鍋が置いてあるコンロの隣。


 金属のバットがあるところだった。



「作ってそのまま湯がいたんだが」



 食べてみてよと言われて、差し出されたのは平たいパスタ。


 仕上がりはどこをどう見ても、ラザニアに使えそうなパスタなのになにが悪いのだろうか?


 単純に考えれば、味だろうけど。


 とりあえず、切り分けてもらったそのパスタを口にしたが。



「……茹で過ぎですね?」



 粉っぽさとかは感じないが、もちゃもちゃとして噛みにくい。ぶよぶよしてて食感が悪い。


 けど、これの改善点は大丈夫だ。茹で時間を変えるだけでいいだろう。



「茹で過ぎ?」


「はい。ある程度柔らかくなるくらいで大丈夫です。生のパスタですし、他の火入れは窯とかで出来ちゃいますから」



 それと、せっかく私の異能(ギフト)を知ったのだから、技能(スキル)も知ってもらおう。


 熱湯(ボイリング)を入れた鍋を二つ用意して、湯がく前の綺麗な板状のパスタを準備したら。



召喚(サモナー)、タイマー!」



 タイマーを二つ召喚して、それぞれの鍋の前に設置した。



「ちゃ、チャロナ! なにそれ!?」


「私の技能なの。前世でもあったんだけど、時間を計って知らせてくれるのよ」


「へー? ってことは、チャロナ? あたいがかけ過ぎた時間を正確に教えてくれるのかい?」


「そう思っていただいて大丈夫です」



 しかし、乾燥パスタだから本当に茹で過ぎてはいけない。


 私は前世でもパン屋の職人だったし、パスタに関してはど素人だ。自宅で扱っていたのも基本的に乾燥のパスタ。


 なので、1分と2分と設定してから。ぐらぐらに沸いたお湯の中にパスタを投入。そして、すぐにタイマーを起動。



「「う、動いた!?」」


「カウント……時間を逆に刻むので、正確な時間が計れます。あとは……」



 1分の方はすぐなので、サイラ君にお願いしてザルの上に上げてもらい。


 このままでは多分くっつくし、ブニョブニョするから大抵の麺類と同じように流水で滑りを軽く取る。2分のも出来たら同じく。


 で、タイマーを消そうとしたら。



「チャロナ。これの構造はどんなんだい?」


「と言いますと?」


「あんたにとっては、なんてことのない技能だけど。こりゃ世界を揺るがしかねないもんだよ? 時間を逆に刻み、時計とは逆方向に動く技能。……時計を持つのが不可能な人間にとって、重宝されるもんだ」


「あー……」



 たしかに、ストップウォッチ機能はないけど。時間をお手軽に計れたら、世情が揺らいでも無理はない。でも私しか使えないし、シェトラスさん達も今では普通に貸して欲しいと言われてるから。……あんまり実感がなかったのだ。



「そうさね? 錬金術師……カレリアはあんたのことは知っているのかい?」


「あ、はい。旦那様から許可をいただいて」


「この技能は?」


「これは……見せていないです」


「「これは??」」


「まだ……いっぱい、あります」


「「おいおいおいおい!?」」



 とりあえず、本題はラザニアパスタなので試食することにした。


 1分のと2分のと、切り方を変えて包丁でカットして。フォークを手に持って、いただきますをした。


 まずは、1分。



「「「んん!?」」」



 生地の食感であるもちもち部分が、前世で食べたようなラザニアと寸分も違わない。味付けはほとんどないけど、これはいい。ラザニアの濃い味付けにはきっと合うだろう。


 次は2分。



「「「……ブニョブニョ」」」



 最初にエスメラルダさんに食べさせていただいたのよりはマシだけど、食感が悪い。歯で簡単に噛みちぎれるし、ブニョブニョしているせいで喉越しが悪い。


 パスタに大事なアルデンテの部分がまるでない。



「こりゃ、文句無しに1分の方だねぇ?」


「「はい!」」


「あたいも勉強になったよ。パスタは茹でればいいと思ってただけだからねぇ?」


「これを……そうですね? 一人一枚くらいで大丈夫なので。明日のお夕飯に作らせていただきます」


「わかった。頼んだよ!」


「はい!」


「なーなー、チャロナ」



 もう戻ろうとしたら、サイラ君に引き留められた。



「うん?」


「シャミーとかはともかく、エピアにはお前のこと言わねーの?」


「あ、あー……」



 そうきたか、と少し首を折った。


 ウルクル様は、ラスティさんに伝えられたご様子もないし、エピアちゃんにも少しだけ異能のことを話した程度。


 でも、私が転生者であることは全然だ。



「あんたらは友達なんだろう? 言い難かったことが今まで辛くなかったかい?」


「……はい」


「あたいらのことは、あたいが直接旦那様に言うさ。それか、今から旦那様のとこに行かないかい?」


「……そうします」



 多分、だけど。カイルキア様は許してくださると思う。


 今回は私の不注意だったけど、エスメラルダさん達は怒っていないし。深くは追求してこない。


 だから、きっと大丈夫だと思う。

次回はまた明日〜

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