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118-1.揚げパン絶賛!①(アインズバック視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(アインズバック視点)









 昨日、息子のシュライゼンと宰相のカイザークが。二回目の、パン作りの指導を受けるのにマンシェリーがいるローザリオン公爵家に行ってきた。


 そして、保存の魔法をかけられた土産のパンを、今目の前にしているのだが。


 だいぶ昔にお忍びで庶民の食堂などで、まずいパンを食べたりはしてきた。しかし、目の前にあるのはどのパンにもなかった、細長いパン。


 しかも、中にはジャムだったり、クリームだったり。シュライゼンが言うには、マンシェリーが前世でも好みの食事だったと言う、『カレー』と名のつく辛めの食材も使われているらしい。


 この国の辛さを基準にすると全然辛くないらしいが、それはあの無表情の甥のためだとか。たしかに、カイザーの孫のせいでてんで嫌いになってしまったからな?


 とりあえず、切り分けられたその『コッペパンサンド』や『揚げパン』を俺の私室でシュライゼンとカイザーと食べることにした。



「で。どれがカレーなんだ?」


「うむ! ちょっと茶色いやつなんだぞ!」



 シュライゼンが指したのは、たしかに白っぽいのと茶色いクリームのようなのが、二層になっているパンだった。白いのは、じゃがいもを使ってマヨネーズなどで味付けしているサラダのようなものらしい。


 庶民の食事であるのかと聞けば、マンシェリーの前世で存在していた一般的なサラダだそうだ。枯渇の悪食以前にあったかは定かではないが。


 とにかく、如何にも旨そうな柔らかいパンを手にして、勢いよくかぶりついた。



「ふ、ふま!?」



 なんだ、このパンの柔らかさと甘味は!?


 まだ数回しかマンシェリーのパンを口にはしていないが。初めて授賞式の時に口にしたのよりも、姪のアイリーンの祝賀会で食べたりもしたが。


 前回、シュライゼン達が持ち帰ってきたのよりも、断然こちらの方が好みだ。


 それに、クリームではなくソースのように味が濃いカレーの風味も抜群だ。


 マヨネーズ味のポテトサラダと、味の混乱をするどころかうまく調和し合っていた。もう夢中で、茶も飲まずに貪るように食べてしまったのだ。



「すごいだろう?」


「ああ。このカレーとやらは革命的だな? 辛いのもきっと美味いだろうが、辛味がほとんどないのにこのコクとキレの良さとは」


「マンシェリーが、最初に孤児院に持って行ったパンにもこのカレーを使ったんだぞ。カレーパンって言う単独のパンなんだぞ」


「う、美味そうだな?」


「ええ、陛下。ドーナツのように揚げていまして、腹にかなり満足感を与えるそうです」


「ほう。なら、子供にも食べやすいのか?」


「むしろ、リクエストが多くて。また今度持っていく予定なんだぞ」


「そうか」



 どれほどの美味か気にはなったが、ないものは仕方がない。それと、もう一つの組み合わせであるゆで卵のサラダとカレーの組み合わせも甲乙つけ難かった。


 その次に食べたのは、一見白いクリームかと思いきや。



「これは、ほとんどバターか? なのに濃厚な甘味だ!」


「俺がクリームを作ったんだぞ! マンシェリーに教わって作った牛乳パンのクリームなんだぞ!」


「たしかに、バターは牛乳から作るとは知っているが」


「それだけじゃないんだぞ? レンニューって言う、甘味をつけるシロップのようなものを作ったんだ。そのままだと、かなり甘いから。色んな材料に混ぜたり、ホムラではあるような削り()にかけると美味しいらしいんだぞ」


「……なるほど。甘味は砂糖だけではないのか?」



 削り氷はどちらかと言えば苦手ではあるが、甘い氷菓子と言うとマンシェリーが以前作ったアイスクリームが美味かった。


 あれは実に美味い。


 が、レシピがあっても宮廷料理人に作らせても難しいらしい。一部、マンシェリーの生存を知っている者らにレシピを渡して作らせたが、冷却(コールド)の加減が難しいそうだ。


 やはり、実物を知らないせいで。


 だから、我が娘が転生者でなければ。あの料理達は生み出せない。つくづく、最高神の計らいで、運命の歯車は回っているものだと思った。



「父上ー。こっちの揚げパンもやみつきになると思うんだぞ!」


「……見た目は、砂糖まみれのパンだが」



 マンシェリーの腕前を信じないわけではないのだが。少しばかり、お忍びで運悪く出会った砂糖まみれのドーナツを思い出したのだ。


 油を吸い過ぎて、ギトギトで異常に甘くて中身はスカスカ。


 だが、息子が絶賛するくらいならきっと美味いはず。


 俺はとりあえず、ココアがかかったのを手に取り。ひと口噛んでみたら……!?



「う……ま!?」



 油は感じるが、表面だけでカリカリと食感が良くて。


 中の白い部分はふわふわしている。のに、表面のココアと砂糖の味と喧嘩しない!


 むしろ、このための味付けと食感としか思えない!


 俺は、夢中になって他の味も試したがどれも美味かった!



「美味しかったでしょ?」


「……まずいな。癖になってしまいそうだ」


「エリザベート殿もご一緒に作られたのですよ」


「あの方なら、すぐにマンシェリーと同等の技術を会得出来るだろうな?」


「うむ! 俺達よりも、やはり飲み込みが早かったんだぞ!」



 だが、苦戦はするだろう。異能(ギフト)があれど、今までのパン作りがそうだった故に。


 とりあえず、対面で涙を溢さなかったのは流石としか言えない。俺も、授賞式で相当我慢したがな?



「つきましては、陛下」


「なんだ、カイザー?」


「はい、姫様がおっしゃったのですが。この揚げパン以外にも使える、『マッチャ』と言う茶があれば……と。私めも存じないのですが、殿下がホムラにあるのではないかとおっしゃったのです」


「マッチャ?」


「コーヒーとは全く違う、苦味の強い茶の一種らしいんだぞ! マンシェリーはあそこの孤児院で育ったからね? だが、皇室ならあるかもしれないんだぞ」


「なら、この揚げパンを持って出向くのか?」


「うむ! 明日辺りに行って来ようと思うんだぞ!」


「ん、わかった」



 苦いが、この揚げパンに合う食材。


 どのような味になるのか、俺も知りたかったからだ。


 とりあえず、残りはシュライゼンと取り合いしまくったがな!!

次回はまた明日〜

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