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117-5.それはそれ(マックス《悠花》視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)









 まったく、もぅ。


 レクターに説教されるくらいだもの、やり過ぎよ?


 しかも、慣れない正座でひーひー言って、限界で倒れ込むくらいなんだもの。


 自業自得だわ、まったく。



「……俺は今回もチーちゃんの味方だぜ?」


「……だが、あれは美味過ぎた」


「否定はしねーぜ?」



 たしかに、専門店顔負けなくらいの出来栄えだったわ。食パンの再利用として、この世界でもフレンチトーストは存在するもの。


 けど、それも【枯渇の悪食】でちゃんとしたレシピを復活出来ていなかったから。転生者のあたしにとってはまあまあの出来だったのよね?


 でも、チーちゃんのは違った。


 焼く加減も、シェトラス達に教えたんだろうけど。ふわふわのトロトロで美味しい、フランスパンでのフレンチトーストだったなんて。


 この世界のどこの国に行っても、きっと美味しいですまなくなる出来栄えだったわ!


 おかわりしたかったけど〜、まだチーちゃんはこの屋敷にいるし、また食べられるだろうからと今日はカイルのお仕置きに専念することにした。


 と言っても、あたしは見張りくらいだろうけど。


 カイルの私室に着いたら、とりあえずベッドにポイッと捨てるようにして投げた。



「ぐ!?」


「か〜〜い〜〜る〜〜ぅ?」


「う」



 今まで黙ってたレクターにより、カイルは大人しくベッドの上で正座をし直したのだった。あたしは、ドアを閉めてそのまま待機。


 レクターは、カイルの前に仁王立ちになって、カンカンに怒ってるわ。



「あれだけ、食べ過ぎについて注意してきたでしょ!? なんで、なんで今日もやらかしかけたの!?」


「……だが、美味かった」


「姫様の料理が美味しいのは当然だけど! でも、あんな皆の目の前で、問い詰めなくてもいいでしょ!!」


「……すまん」


「半分しか反省してないでしょ!?」



 さすがは、乳兄弟。


 幼馴染みのあたしとはまた違い、同じ屋敷で過ごして来たんだから。表情筋皆無に等しかった、カイルの表情を読み取るのもお手の物ね?


 チーちゃんと再会してからは、それもちょっとずつ緩んできてはいるけど。


 それでも、あたしが覚えてる範囲の快活だったあいつには程遠い。



(最高神の計らいのせいで、チーちゃんとはある意味両片想いだし。はがゆいわねぇ?)



 生誕祭まで、あとひと月を切ったところだが。昨日来たシュラ達もこっそりあたしとかに伝えてくることもなかった。


 つまりは、まだ色々と準備中なのだろう。


 こっちも、そろそろエイマーをカモフラージュにして、チーちゃんの行儀見習いを始める予定だ。


 うまくいって欲しいけど、まだまだ付け焼き刃程度の作法しか身についていないから、難しいのよね?


 授賞式の時は、本当に絵姿の王妃様のように綺麗になってしまってたけど。



(カイルと結ばれたら、ぱっと見、デュファン様と王妃様の再来よねぇ?)



 実の父親である陛下も、一応頷いてはいるし、婚約の儀も……最高神がもし祝福を与えるのなら、やるだろうし。


 けど、あの子煩悩が、今でもだけどこの屋敷より早く王宮に住まわせてやりたいらしいのを、シュラから時々聞かされていた。


 王としての考えと、親の心境がせめぎ合うのよね? よく、わかるわ。



「……わ、かった。派手な、行動は……取らない」


「わかったならよし!」



 考えにふけってたら、もうお説教は終わったようね?


 と言うか、カイルのHPがかつてないくらい低く見えるんだけど!?


 どんな説教してたのよ!!


 カイルのやつ、ベッドの上で倒れ込んでいるわよ!!



「おいおい、加減したのか?」


「今日の仕事は粗方終わらせたし、大丈夫だよ!」


「ん? もう終わったのか?」


「領地問題も順調だし、あとは姫様のマナーレッスンくらいだよ」


「……そのご褒美程度に、おかわりくらいよくね?」


「それはそれ! これはこれ! 医者としてうんとは言えないね!」


「……そーかい」



 厄介な乳兄弟を持ったものね、カイルも。


 けど、ちゃんとチーちゃんを想って動いているのなら。


 あと少し。チーちゃんへのサプライズ式典まで、きっと隠し通すしかないわね?

次回はまた明日〜

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