109-5.罰を受けさせた(シュライゼン視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(シュライゼン視点)
……びっくりしたんだぞ。
神からの御言葉もだが、阿呆だと報告を受けたヴァーミス男爵が俺の妹の情報を得て、勝手に嫁がせようと画策していたのにも驚いた。
たかが、男爵であるのに王家に盾つく阿呆だとは知らなかった。
しかも、俺や父上が憎んでいる強固派だったとは。
だもんで、少し探りを入れるためにミュファン達暗部部隊をフィセルから借り受けて調査させていたんだが。
今日のミュファンからの報告で、急いでヴァーミス男爵を捕らえに行こうとした手前。
【急ぐのじゃ、若き王子よ。そなたの妹が危険な立場に追いやられる。案内しようぞ】
神からの御言葉により、俺自身の転移ではなく神の御力か何かで瞬間的に強制転移をされて。
気づいたら、貴族の衣服を着込んでるような小さな男の赤ん坊の前に立っていたんだけど。
「あーう、あーうぅ」
「これは……」
「誰なんだ? こんな幼児が城内に……?」
しかも親は見当たらず、たった一人で放置させているとは……これは、もしや新たな強固派の仕業かと思っていると。
「しかし、まとっている衣服は……ヴァーミス卿のものです!」
俺の予想とは裏腹に、ミュファンがとんでもないことを言い出した。
「へ? じゃ、誰なんだい? こんな魔法でも退化だなんて禁忌を犯したのは……?」
神以外に禁じられた呪法。
時間操作でも禁忌中の禁忌。
だが、先程聞こえてきた神自身が為されたのであれば。
【それは、我らが神による見せしめに近いが。強固派と呼んでる阿呆の子らの成れの果てよ。主らも、神の怒りに触れれば、これだけで済まないことを理解したろ?】
「「……は!」」
ミュファンにも同時に聞こえたらしい神の御言葉。
だが、今は神に害を与えない存在だからか、こうして生きてもいるし成長を逆戻りさせられてはいない。
思わず、ミュファンと同時にその場で膝をつくと、また神の御言葉が頭に聞こえてきた。
【ふむ。理解したのなら良い。セルディアスの王太子よ、これからも強固派の阿呆どもを引っ捕らえるのに力を尽くせ。さすれば、お主の妹のためにもなるさ】
そうして、御言葉はそこで終わってしまったのか。それ以降何も聞こえてこなかったんだぞ。
「……びっくりしたんだぞ」
「え、ええ。私もです……」
まさか本当に神の御業だと思わず。
ミュファンが抱えたままの、ヴァーミス男爵だったらしい赤児もどうすれば。
ひとまず、父上に報告すべく転移で向かったんだぞ。
「……どうした。その赤児は?」
爺や以外に誰も近侍がいないのにほっとして、俺は今さっき起こった真実を父上に伝えたんだが。
「……なに? 神の怒りに触れた理由が。マンシェリーをあの阿呆なウェスト公国の妃にして勢力拡大を目論んでいただと?」
予想通り、不機嫌度MAXになってしまったんだぞ!
赤児のヴァーミス卿は内容が分かってるか定かではないが、父上の形相に怯えて泣き喚いてしまった。
その声に、ミュファンは一応あやしてくれたが、父上も毒気が抜けたのか大きく息を吐いた。
「通常なら、牢に入れるところだが。その有り様ではな?」
「ですが、陛下。逆に見せしめにはなりませぬか? 男爵の屋敷内のことまではわかりかねますが、神の怒りに触れて赤児にさせられた真実を公表すれば。……強固派の根深い連中も、肝を冷やすのでは?」
「悪どいな、カイザー?」
「ほっほ」
爺や、マンシェリーが無理やり他国へ嫁がせられそうな計画に怒りを堪えきれなかったんだな?
今はにこにこ笑顔でも、腹の中はにえくり返そうな怒りがMAXだと思うんだぞ?
けど、その見せしめは俺も悪くないと思うんだぞ!
「じゃ、ミュファン。もう少し身なりを整えて。ヴァーミスを屋敷まで送って来て欲しいんだぞ。父上からの書状も添えて?」
「いいだろう。いっそ爵位剥奪してもいいが、ヴァーミスの長男はまだマシな奴だったな?」
「ええ、陛下。品行方正なごく普通の貴族男子でしたな」
「よし、すぐに当主交代を告げる書状を書く!」
「ふ、ふぇ!?」
けれど、書状を添えてヴァーミス元男爵を屋敷に送り届けても、男爵の長男は爵位を受け取らず。
元々騎士であったために、準爵位にさせてくれと進言があった。それを父上は潔いと認め、父だった赤児を育てなおせとの書状とともに、準爵位の任命証を後日送ったのだった。
次回は日曜日〜




