107-2.暇で暇で(マックス《悠花》視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(マックス《悠花》視点)
暇だわ……超暇。
まあ、ぶっちゃけ?
チーちゃんである本人がいないと、あたしの任務って冒険者ギルドに行く以外暇で暇でしょうがないけどもぉ。
今日ばかりは、カイル達の出先で何が起こった場合すぐに駆け付けれるようにしてなくちゃいけないから、実質待機状態。
だけど、暇に変わりない。
「レイは、技術向上のために厨房に行ってるし。レクターは今日は魔法医の仕事。愛しのエイマーは当然厨房の仕事だし……暇、暇暇暇暇暇暇暇、ひーまーだーわー!!」
パーティーを解散した直後は、単独でチーちゃんを探す日々に明け暮れていたし、暇なんてあんまりなかった。
それがどうしてみたことか。
目的のチーちゃんが見つかって、あたしが出会った日のうちに同じ転生者だってことがきっかけで、ほぼ強引にSPをカイルに提案したわけだが。
ここんとこもだけど、リュシアに行く時以外は、チーちゃんは厨房にいるからあたしの出番はない。警護についても、ロティちゃんにベタ惚れではあるが精霊のレイがいるおかげで出番がない。
それなら自分も厨房の手伝いをすればいいんじゃないかと思っても、フィーがいくら魔法で改造させた厨房だからって、あたしみたいなガタイのでかい奴だと……チーちゃんの手伝いの時はともかく四六時中いると手狭になってしまう。
だもんで、一応自粛してるわけ。
あと、これでも伯爵家嫡男だから、時々はいいとしてもしょっちゅう手伝うのは体裁的にあまりよくないというかなんというか。
あと、シェトラスの目があるからエイマーにベタベタ出来ないのが残念。それに、エイマーも仕事は仕事と割り切っているから構ってくれないのよ!
つーか、最後のが結局最大の理由!
「……あー。別に勉強するとかないし。婚約しても式の準備とかは当分先だし、日本と違って貴族だから親父と母さんが楽しみながら準備してるし。ほんと、暇暇暇ぁあああ!!」
なにしてればいいのよ、あたし!?
前世でも社畜まっしぐらな生活だったから、寝に帰る以外はほんと会社に缶詰状態だったしぃ!?
この世界では成人するまでやることいっぱいあったり、カイル達に追いついたら追いついたでチーちゃん探しで忙しかったし。
けど、目的が遂行されたあたしは、爵位を継ぐまでは実質暇状態。
これどーしろってんの?
「……鍛錬しようにも、カイルがいないと手合わせ出来ないし?」
同じくらい渡り合えるのはフィーだけど、あっちはあっちで爵位継いでるから忙しい日々の真っ最中。
ならもう、今日すべきことは!
「……って。それで消去法で僕のとこに来たわけ?」
「あんたとしか、チーちゃんの話出来ないじゃないの」
で、結局レクターのいる医務室に来たわけ。
他の助手達には、話に入ってこれないように調合室にこもってもらってる。レクターはカルテを整理してたのか、紙の束をまとめていたわ。
「まあ、姫様については。みんな気付いていても、転生者のことはほとんどの人が知らないしね?」
「そう、そこ。だから、厨房だとエイマー達のスペース取っちゃうと思ったからこっちに来たわけ」
「まあね?……本当に、カイルは想いを告げたのかな?」
「あれだけ、最高神から妨害されてるから……今回はって思えないわ」
「そうだね。けど、どちらも思い合っているのに……最高神はいつの機会に二人を結ばせてくれるのかな?」
「ほんとにね」
カイルもだけど、チーちゃんには絶対に幸せになってほしいわ。
あたしとエイマー、レクターとリーンを結んでくれた恩もあるけど。純粋にマブダチとして応援しているわ。
絶対、絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対、ぜーったいに幸せになってほしいのよ!
あんな日本でいた頃も、可愛くて性格は控えめだけど、芯はしっかりしてる女の子がいたら、絶対惚れるわ!
守ってあげたくなるような危うい面も、きっとカイルには響いたはず。
だけど、あたしも口にした通り、フィルドのせいで告白場面はことごとく失敗どころか、なかったことにさせられている。
内容はあたし達のも封じられているので思い出せないが、『あった』ことだけは覚えさせられている。
神なのに、なんでこんな中途半端な封印術を施すのか意味わかんないけど。
「それか、何か進展とかあってほしいけど」
「チーちゃんはともかく、カイルよ? あのカイルがあり得るかしら?」
「そこなんだよね……女性の扱いに人一倍疎いし」
「あんたには悪いけど、リーンはあの性格だし。パーティーにいた頃も、カレリアはほえほえぽわぽわだったし?」
「うん。姫様のような女性が近くにいなかったからね?」
「ねー?」
もし、戦争もあの時に終息していて、王妃様も生きててチーちゃんも王女として生活してたら。
きっと、もっと違う恋愛の心を育んでいたかもしんないけど、それはあり得ない夢物語だ。
今は王妃様は死んでいて、チーちゃんはほとんど孤児で育った。
そこはもう変えられない現実だから。
「まだ帰って来ないけど、ちゃんとデートしてるのかな?」
「さすがのカイルでも、チーちゃんのことだから下準備とかしてたんじゃない?」
「僕に隠れてコソコソ……ふふ、カイルもやる奴だったのかな?」
「あんたが言うと怖く聞こえるわ」
「そーう?」
姉に似た腹黒魔神め。
しかも、自覚してるんだからタチが悪いってんの!
けど、カイルが下準備しながら微笑む姿とか想像しにくいわ。幼馴染みではあるけど、あいつ笑顔にならなくなったのって、あたしがまだ赤ん坊のガキの頃だったからね?
「あー、尾行したかったけど。カイルとチーちゃんの時間は邪魔したくなかったから、ほんと暇だわー」
「だったら、仕事する?」
「なにを?」
顔を上げると、思いっきり腹黒魔神の笑みになっていて。
話し相手の選択を間違えちゃったわ、と片隅に思いながら後悔するあたしだった。
次回は火曜日〜




