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97-4.たんぽぽオムライス(アイリーン視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(アイリーン視点)








 これは……。


 これは、とても美味しそうな予感がしますわ!


 作る工程をお手伝いさせていただいたり、拝見させていただきましたが。


 コカトリスの卵の艶々とした輝きと彩るケチャップの赤の光沢感。


 これに、スプーンを入れて食べるのが少し躊躇われますわ!


 ですが、せっかくチャロナお姉様(王女殿下)が作ってくださった味見用。


 シュラお兄様(皇太子殿下)もうずうずされながら味見を待たれていらっしゃいますが、レディーファーストということで、どうやら私がスプーンを入れるのを待ってくださってるようで。


 同様に、ユーカお姉様も待ってくださってる。ならば、わたくしが一番にスプーンを入れなくては。


 見た目は綺麗なオムレツですけれど、あの美味しいお米の味がケチャップとどう合うのか。


 楽しみにしてきましたので、いざ、とスプーンを入れました!



「まあ!」



 金に近い黄色の下には、赤い艶々とした米がたっぷりと出てきましたわ。


 他の彩りは、ピーマンの鮮やかな緑色。


 少し透き通って赤い玉ねぎ。


 あと、唯一のお肉であるコカトリスの柔らかそうな。


 卵のヴェールごとすくい上げて、口元にゆっくりと運ぶ。



「ん、まあ!」



 卵のヴェールはふわふわとろとろで、最初は少しかかったケチャップの味しかしませんでしたが。


 普通のオムレツとは違い、具材があのお米ですので、同じようにケチャップ……そして、コンソメなどの深い味わいとコクがたまりませんわ!



「お米のプチプチした食感もたまりませんわ! お肉も柔らかで、ピーマンの苦味もそこまで気になりません! その上で、この卵の淡い味わいが全てをまとめていますわ!」


「俺も食べるんだぞ!」


「俺も!」



 お兄様お姉様方も、豪快にすくってから口に運ばれて。


 すぐに、とろけるような笑みになられましたわ。



「ううう〜ん! 美味しいんだぞ!」


「このケチャップライスの味、卵のふわふわ感! 俺が転生してからも求めてやまなかったオムライスの味だ!」



 チーちゃん最強!とお姉様は殊の外喜ばれていらっしゃいましたわ。やはり、前世での思い出は素晴らしいものだったのですね?



『美味ちーでふううう!』


『米にこんな味つけをしても美味いんでやんすね?』


「これを一人分……と言っても、若い子達とかはおかわりしそうだ」


「料理長、私を見ないでください……」


「はは」



 これを頻繁に、この屋敷中心とはいえ、食べることが簡単になってしまう?


 羨ましいですが、殿下とは違い米の扱いに慣れていないわたくしが先ほどのように調理してもそううまくはいかないでしょう。


 ひとまず、今日はこちらでこのオムライスをご相伴に預かりますわ!



「たんぽぽオムライスとか、シンデレラオムライスとかもいいよな〜?」


「出来なくはないけど、最初はオーソドックスなのが食べやすいんじゃないかな?」


「たんぽぽ?」


「シンデレラ?」



 また可愛らしくて美味しそうな名前ですけれど、どんなものなのかシュラお兄様と聞き返してしまいましたわ。



「オムライスの卵の巻き方の違いですね。たんぽぽはプレーンのオムレツだけを作って、チキンライスの上に載せます。それをナイフで切り込みを入れると、花が開くように広がってライスにかぶさるんです。このタイプよりもふわふわですね」


「ふむふむ。シンデレラの方は?」


「卵を箸という道具で、薔薇の花のように巻いていく方法です。こちらは、ある童話のヒロインのドレスのように出来上がるのでそう呼ばれてるとも聞きました」


「ほほーう!」



 どちらも、誠に美味しそうですが。シンデレラという響きが特に愛らしいですわ!


 物語のヒロインのドレスのようだなんて、素敵ですわ!



「素敵ですわ素敵ですわ! 同じ料理でも少し趣向を変えただけで、愛らしくも美しくもなるのですね!」


「はい。他にも、カレーという料理やハヤシライスにビーフシチューをこの料理にかけたりするだけでも味が変わります」


「むむ。シチューはわからなくもないけど、合うのかい?」


「うっまいぜ? 米はチキンライスにこだわる必要はねーが、俺は好きだな?」


「くー、また食べたくなってしまうんだぞ!」


「我慢しろって」



 またもや美味なるお料理の数々に魅了されかけましたが……いにしえの口伝……いいえ、異世界のお料理はなんて多岐に渡っているのでしょう。


 わたくしも食べてみたいですが、今日は難しそうなので我慢しますわ!



「けど、カイルにはたんぽぽオムライスの方が好きじゃね?」


「そうなの?」


「あいつ、甘いもん以外にもふわふわしたの好きだしよ」


「ええ、そうですわね!」



 お兄様の好みはたしかにそうですわ。


 お父様を無表情にさせた、あまり表情が変わられないあのお兄様ですけれど、王女殿下のお料理の時は顔色が違うそうですもの。


 昼間のあの出来事以降、殿下はまた少し自信が無くされたようですが、胃袋ですでにお兄様の御心は掴まれていますわ!


 さらなる一歩前進のためにも、お兄様をさらに魅了させるのです!



「……わかりました。では、少し難しいですがたんぽぽオムライスにしますね」


「オムレツなら、私も手伝えるよ。一度作り方を見てもいいかな?」


「私も、手伝おう」


「お願いします」



 というわけで、たんぽぽオムライスの作り方とは。


 チキンライスをオムレツのように美しく盛り付け。


 そこに、フライパンで半熟に仕上げながら綺麗なオムレツに仕上げて。


 ゆっくりと、ふわふわのオムレツがライスの上に載せられたら。


 このままでも美味しそうですのに、王女殿下がナイフで真ん中に切り込みを入れられると、するっと広がってライスを覆ってしまった!



「これがたんぽぽオムライスです」


「美しいですわ!」


「卵がふわふわなんだぞ!」


「試食……と言いたいところですが、もう夕飯まであまり時間がありませんので、どなたか召し上がられますか?」


「! チャロナ、俺の部下がもうすぐ来るんだ。彼と彼の家族に出してあげて欲しいんだぞ!」


「部下さん、ですか?」


「ああ、メイミーの夫とその娘なんだぞ」


「え」



 まあ、それはギフラ殿のことですわね。


 あの方の家……正確には、ギフラ殿の祖母君が強固派ゆえにメイミーが跡継ぎを産むまで迎え入れないとされていますが。


 シュラお兄様は、たまの家族の団欒をお作りになられたのですね。


 ここにいないシャルお姉様もきっとご存知でしょうが、素敵だと思わずにはいられないですわ!



「わかりました。すぐにいらっしゃるのですか?」


「多分もうすぐ来ると思うんだぞ」


「こーんばんはー!」


「こら、大声を出すんじゃないサリー!」



 すると、食堂側の方から可愛らしい幼児の大声と、注意する男性のお声がしましたわ。



「うむ、ギフラとサリーだと思うんだぞ。チャロナ、先に紹介させてくれ」


「わかりました」



 ギフラ殿のことですから、サリー以外で焦ることはないでしょうけれど。


 亡き伯母様の生写しでいらっしゃる王女殿下のお顔を見られて。


 果たして、平常心でいられるでしょうか?


次回は月曜日〜

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