93-1.パンケーキ作り、実践へ(レクター視点)
企画四日目〜?
今日も少し短め
*・*・*(レクター視点)
いやはや、野営以来、僕らが料理するだなんて全然なくなってしまったが。
まさか、チャロナちゃんに教わるだなんて思ってもみなかった。
とりあえず、姫様は少しの間カイルのラフな格好にポーっとしてたけれど、そのカイルからの言葉もあったので、出来るだけいつも通り振る舞おうという姿勢は可愛らしい。
とにかく、まずは卵の仕分けらしいが。
「卵を出来るだけ半分に割って、黄身の部分を殻で受け止めてください。溢れる白身はボウルの中で大丈夫です。白身と完全に分けたら、黄身を別のボウルに入れます」
「「わかった(よ)」」
しかし、この作業は意外にも繊細さを問われた。
黄身を潰さないように殻で受け止めなきゃいけない上に、殻からスルスル落ちてく白身を出来るだけ黄身と分けなくてはいけない。
僕は治療師として、薬剤の生産はするけど、これは結構難しい。
子供達に教える部分としては、少しハードじゃないだろうか?
それか、あえて挑戦させるためか?
何故か、白身の方に氷結をかけて少し凍らせてはいたけども。
「では、次に。メレンゲの工程に移ります」
で、姫様が用意してくれたのは……砂糖と泡立て器だけ。
「え、これだけであの泡みたいな食感になるの?」
「はい、先生。これと重曹を使うとなります」
「……どれくらいまで泡立てるのだ?」
「この白身と砂糖を時々加えて混ぜることで、シャンプーのような泡になります」
「「え」」
なるの? 本当に?
僕も薬剤の仕事の時に、違う形態になるように仕込みをすることはあっても。
そんな工程は見たことも聞いたこともない。
これが、転生者の技術かと感心しそうになった。
「一度見本を見せますね?」
と言って、姫様は慣れた手つきで白身の入ったボウルを泡立てさせ。
ほんの数分で透明だったのが白くなり。
砂糖を少しずつ加えることも関係してるのか、だんだんと容量が増えて、泡になっていき。
終いには、角が立つくらいの泡が出来上がってしまった。
「……それが、メレンゲと言うのか?」
「はい、カイル様。これをケーキ以外の料理にも使えるんです。それをスフレと言います」
「……焼き上げが似てるのか?」
「そうですね。今度作ってみます」
「ああ」
わざと作らせる方向に誘導するんだから、まったく食については随分と貪欲になった男だ。
最も、仮の婚約者の手料理、って但し書きがつくかもしれないが。
「では、実践してみましょう!」
とにかく、ここが難関という工程に移ったわけだが。
手渡された、なんの魔力も施されてないごく普通の調理道具を扱っているだけなのに。
全然泡にならない。ちょっと白っぽくなってるだけだ。
「無心で頑張れや。俺とレイだって作ったんだからよ?」
一人除外されてたと思ってたマックスは、既に経験し終えた後だったようだ。
(う、うう〜ん……姫様は簡単に作ってたけど、根気のいる作業かも)
薬草をすりつぶす作業に近いというか遠い。
とにかくひたすらひたすらに腕を動かしてかき混ぜていくが。
少しすると、カイルの方から小さな声が上がった。
「少し変化したな?」
「その調子です。残りの砂糖も入れてしまいましょう」
なんと、カイルの方が先に出来上がりそうになっていた。
僕も少しは全体的に白くはなったけど、泡には程遠い。
なんだか悔しくなってきたので、少しスピードと力を込めていたら、泡が出来てきた!
「先生もその調子です。砂糖をもう二回ほど分けてかき混ぜてみてください」
「うん!」
姫様に合格点をもらえたのなら、頑張らなくちゃ!
そうして、二人とも綺麗な泡が出来上がったら、黄身の方にも砂糖以外に米の粉と重曹を加えて混ぜていく。
この二つを混ぜ合わせるらしいが。
「メレンゲを黄身のボウルに入れますが、せっかく作った泡を潰さないように混ぜるのがコツです」
「そうすれば、焼いた後にあの食感になるの?」
「その通りです」
これも最初に姫様が見本を見せてくださってから、僕とカイルも気をつけながら二つの材料を混ぜていく。
特に問題はなかったようなので、いよいよ……焼く作業に取り掛かることになった!
では、また明日〜




