92-2.スフレパンケーキ作り
今日から、クリスマス・お正月企画の毎日更新!
アインズさんは、抱えてる包みと私を交互に見てから、前に出て私の前に立たれた。
「……良かったら、もらって欲しい」
そうして、綺麗な包みを私の前に差し出してくださった。
「あ、ありがとうございます!」
今も大事にして、半分はロティのクッションになりかけているあのマロウサギの人形もだが。
アインズさんの手作りは、きっとそんじょそこらの人形職人顔負けの逸品だろう。
とりあえず、受け取ってから包紙を破かないように開けると。
『くましゃーでふ!』
「う、うわ……可愛い!」
薄い紫色が主体の、一見普通のくまのぬいぐるみ。
多分、また何かの愛玩モンスターかもしれないが、とっても可愛い!
大きさは今のロティとそんなにも変わらないくらい。
そのロティは、ぬいぐるみの前におりてくると、私の正面からぎゅーっと抱きついてきた。
『フワモコ。フワモコでふうううううう!』
「ありがとうございます、アインズさん! このぬいぐるみも大事にします!」
「……そうか」
「へー、サイードベアか。いい選択だね?」
「サイード……ベア?」
「そのぬいぐるみみてーに、見た目は可愛いが攻撃力はおっかねーんだ。ま、子供が好きで『子供の守護者』とか言われてる、温厚なくまだな」
「へ、へー……」
悠花さんがそう言うのなら、きっとランクがおっかないモンスターなのだろう。
けど、見た目だけならこのくまのぬいぐるみはやっぱり可愛い。
ロティが今も夢中になるくらい、手触りもフワモコで抜群だし。
「ところで。今は八つ時のお菓子を作っているのかな?」
「は、はい。孤児院でお菓子教室を開く時のメニューにもしようかと」
「そうかそうか。……おじさん達も食べていいかい?」
「……デュファン」
「は、はい。少しお時間はかかりますが」
「うんうん。それは大丈夫」
と言うわけで、大旦那様達もパンケーキを召し上がることになり。
ぬいぐるみを一旦裏の小部屋に置いてきてから、取り掛かることにした。
今回は、小麦粉よりも米粉がいいと思ったので米粉のスフレパンケーキを作りたいと思います!
「男性の皆さんには、せっかくなので力仕事を任すことになります」
「っつーと、チーちゃんそれって」
「うん。卵白をメレンゲにしてもらいます!」
「うへー」
『「メレンゲ?」』
「はい。今回は重曹も使いますが。ふわふわなパンケーキを作るために、卵白で泡を作っていただくんです」
「泡……なのかい?」
「はい、エイマーさん。このひと手間でケーキが豪華になるんですよ」
「ほほぅ!」
まずメレンゲの見本。
卵黄と卵白に卵を分けて。
卵白のボウルに、軽く氷結させてから泡立て器でシャカシャカと混ぜて。
「白っぽくなってきたら、グラニュー糖を少し加えて混ぜて。途中でも何回か分けて混ぜ合わせていくと、固い泡が出来ます」
「ふむ。例えるなら、お風呂のシャンプーなどで作る泡よりも固いイメージかな?」
「そうですね。この泡立て器で、ホイップクリームを作る要領で掬い上げれるくらいが目安です」
『確かに、男の方が向いてる作業でやんすね?』
と言うわけで、見本途中の卵白のボウルをシェトラスさんに渡して。
悠花さんとレイ君にも別のボウルと泡立て器を渡して。重作業をすべく、すぐに取り掛かってもらった。
「ぬおおおおおおおお!」
『こりゃすぐには無理でやんす!』
「クリームをイメージか。ひと筋縄ではいきそうにないですな」
とりあえず、メレンゲはお任せして。
私とエイマーさん、ロティはもう一つの生地の材料を混ぜ合わせる作業に。
「米粉をしっかり振るって。分けておいた卵黄と一緒に、重曹も入れて混ぜます」
「しかし、何故卵白も一緒にしてはいけないのだい?」
「えと……スフレ、と言う料理が卵白の泡を潰さずに材料と混ぜてふわふわに仕上げる……からだったと思います。やり方にもよりますが、食感が泡のようになる焼き方もあるんです」
「それは面白い! 子供達も喜びそうだ」
それに、卵白を軽く凍らせればメレンゲも作りやすいし、人数も多いから手早く出来るはず。
それと予想通りに、まずシェトラスさんが一番乗りで出来上がっていた。
「こんな感じかな?」
「はい。綺麗に出来てます」
悠花さん達はもう少し時間がかかりそうだったのと、デュファン様達を待たせ過ぎてもいけないので。
生地にさっくりメレンゲを混ぜたのに、牛乳も少々加えて。
フライパンを火にかけて、弱火で温めてるところに油を薄く引いて。
温まってきたら、用意しておいた濡れ布巾の上にフライパンを乗せて一旦冷やす!
「「……これは?」」
「あまり高い熱で焼くと、中が焼けていないのに表面が焼け過ぎてしまうからです。焦げやすい場合もこうしますね?」
「「ほぅ……」」
次に、コンロに戻す前に生地を入れて、だいたい三等分にする。
そして、弱火にかけて蓋をして蒸し焼きに。時間の目安はだいたい十分。
焼き色がついたら、ひっくり返して。
(うん。綺麗な焼き色)
厚みもちょうどいいし、初回にしてはいい出来栄えだ。
悠花さん達のメレンゲも出来たら、どんどん焼いていきお皿に載せて。
蜂蜜もいいが、メープルシロップもあったので、それをたっぷりかけて二種類のアイスをスプーンで楕円状にまとめて載せる。
仕上げに、ミントの葉を添えれば。
「か、可愛い!」
「うむ。綺麗だし、茶色のケーキがアイスを引き立てているね。これは美味しそうだ」
「はい。悠花さん、カイル様達ももう来るかなあ?」
「たーぶんな?」
とりあえず、デュファン様達の分をワゴンに載せて食堂に繋がる通路を通ると。
いつの間にか、一部テーブルをつなぎ合わせているスペースにデュファン様達もだが、カイルキア様やレクター先生もいらした。
カイルキア様の方は、お隣にデュファン様がいらっしゃるからかすっごく不機嫌そうだった。
「お、お待たせしました……」
この空気の中に入るのは、とても気後れしそうになったが。うじうじしてるとせっかくのアイスが溶けちゃうので割り込むことにした。
すると、私の声にカイルキア様が気付いて険しい表情を少しだけ緩めた。
「……それが、ホットケーキというやつか?」
「少し変更しまして、パンケーキにしてみました。上に載せているのは手作りの冷たいアイスクリームというものです」
「おやおや、随分と可愛らしいケーキだね。男ばかりだが、愚息は大の甘党だから嬉しいだろう?」
「父上は黙っててください」
「いいじゃないか別に」
「……はあ」
とりあえず、カイルキア様から順にお出しして。
召し上がられる前に、食べ方を説明することにした。
では、また明日〜!




