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84-5.狭間での満腹(ユリアネス視点)

お待たせしましたー







 *・*・*(ユリアネス視点)








「あ〜〜……美味しかった!」


「おいちかっちゃ!」


「……もう。ふたり共、たらふく食べたものね?」



 狭間の空間に戻ってきてから、地面があるようでないけれど、固定された地空間に大の大人と赤児がまるで親子のように大の字で寝転んだ。



「そりゃ〜、ぜんざいだったしね? 君も、あの子にPT与え過ぎたくらい美味しかったでしょ?」


「え、ええ……それは、まあ」



 あれは……。あれは、予想以上に美味しすぎたわ!


 異能(ギフト)・『幸福の錬金術(ハッピークッキング)』の管理者として、製造時に疑似的に食事する事でPTは付与させるのだけど。


 実際に自分の舌で、直に確かめた時の幸福感と言ったらない。


 炙った事で少し香ばしさを感じるモチの部分。


 そこを、アンコのスープに浸す事でトロトロと柔らかくて。


 アンコのスープ自体も、ほのかに塩気を感じつつも甘さが絶妙過ぎてお代わりを欲しくなる味で。


 思わず、いちご大福の後にもう一杯おかわりしてしまったけど。


 あれは、美味し過ぎた!


 ピザ並みにPTを付与させて惜しくない対象だったわ!



「ばぁば! しあ、いい子してちゃ?」



 やっと起き上がったディーシアも、まだ味の余韻に浸っているのかにへらと笑いながら私の足元にやってきた。



「……そうね。あんまり、あの子に要求し過ぎるのはいけないけど。基本的にはいい子だったわ」



 見た目以上に齢を重ねているせいで、少し賢い赤児に見えはしただろうが。


 基本的には、精神的に幼い子供と差がほとんどない。だから、あの子にも少しワガママな赤児にしか思われていないはず。


 と思ったのは、ディーシアに興味を持ち始めた時にあの子の心を少し読んだからだけど。


 転生者……特に、蒼の世界(レイの管理下)では娯楽文化が富んでいるから、勘が鋭い子が多い。


 今日は、例の悠花(マックス)という子はいなかったが。


 あの子の場合、こちらの正体にほぼほぼ気づいているだろう。


 けど、踏み込んでこないのは、きっと。


 私達(・・)、特に夫のフィルドが施した記憶の封印術に、思考する事を阻まれているから。


 だから、直接的にはなにも言わないでくれてはいるけども。


 それもきっと、時間の問題ね。



「やっちゃ! ばぁばに褒められちゃ!」


「けど。欲しいからって、じぃじのように駄々をこねてはダメよ?」


「う?」


「あっはは〜、俺駄々っ子?」


「ええ。あの子に料理を要求する予定はなかったでしょう?」



 とは言え、私も実のところ食べてはみたかったけども。


 魚と味噌、そして酒。


 水鏡で見聞きしてた部分もあったが、今日チャロナが説明してくれた事でもっと興味が湧いてきた。


 絶対、美味以上に心を蕩かせてくれる逸品になるに違いないと。



「レイの世界じゃー? サバのミソ煮?って言ってたっけ? 米とよく合うって」


「おこめー?」


「シアにはまだ食べさせてなかったっけ? フィーも(くろ)の世界に持ち込んでる、気に入りの作物さ。今日食べたオモチの材料に似てるね?」


「オモチ!」



 夫からの説明を聞くと、彼の方に向いたシアは飛び上がらんばかりにはしゃぎ出した。


 ぜんざいもだけど、あのいちご大福も気に入っていたもの。



(苺をああ使うなんて、思いもよらなかったわ……)



 とても弾力があるのに、雲のようにふわふわとしてて。


 噛むと、少し弾力が勝つが、よく噛めば程よく切れて。


 モチ自体にはそこまで味付けはされていなかったが、中のアンコと食せばとても調和がとれていた。さらに、後から苺をかじれば甘酸っぱさがアンコに勝つことも負けることもなく。


 どちらもモチを引き立たせる調和がとれていて。


 あれは、ウルクルから差し出されたとは言え、特に女子供が気にいるはずだわ。


 ウルクルは昨日もかなり一人占めしてたとは言え……神だからとは言っても食べ過ぎだったろうに。



「箸はないから、フォークだけど。シア、今日も上手に使えてたからそこは心配ないね?」


「あい!」


「1歳児が使えるには少し早い気もするけど……」



 だ、大丈夫だったかしら?


 料理長とかは、齢も齢だったから勘付かれていたかもだけど……表面上はにこにこしてたし?


 チャロナの前だから、取り繕ってはいたかもしれないけど。


 今度の時は、マックスもいるだろうから、説明は少し偽らなくっちゃね?



「しあ、がんばりゅ!」


「うんうん。お口周りはあんまり汚さないようにねー?」


「にゅ、あの妖精(ふぇありー)ちょも、あしょびたかった!」


「ほどほどになさいね? あの精霊擬きは特殊だから」



 見た目と中身が赤児同然でも、ディーシアも本質的には神。


 そして、個とは別でなにかしらの術を施してしまうかもしれない新雪の神だ。


 気に入った存在に、なにか加護を与えてもおかしくはない。


 それは、ただでさえ私達以外にもこの世界の高位神から加護を与えているあの子に、さらに負担をかけさせたくないからだ。



「うん! あの妖精(ふぇありー)と飛びちゃい!」


「それはダメ!」



 単純思考の返事でも、フィルドは笑ってたが私はコンコンと叱るしかなかったのだった。


次は金曜日にー

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