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『冥府の河の向こうは綺麗かな。』  作者: 朧塚
新約・冥府の河の向こうは綺麗かな。
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CASE 不死の霊薬。-海底都市にて。‐ 3

 再び、博物館に行って聞かされた事だ。


 この国の古い時代に、国を制していた悪女なんて存在しない。

 全て民が妄想して縋った存在。


 どうやら、博物館の館員達はミイラの正体を知っていたみたいだった。

 だが、ある種のロマンに壊さない為に一般の者達に言わないだけみたいだった。そして不老不死への妄執によって作られたものが、あの教団だ。

 

 権力者は偶像。

 強大な暴君の存在を求めた結果が、悪女伝説に過ぎない。


 何もかもが馬鹿馬鹿しい。

 外側から狂気の類だと思われていても、内側だと盲目になるだろう。


「ほんと。一銭にもならなかった」

 セルジュは愚痴る。


「なんだ。やはり金にならなかった事が不満か」

 デス・ウィングは訊ねる。


「それはそうだろ。当たり前だろう」

 セルジュは悪態を付く。


「なら。あの不快な教団から金目のものを奪ってこればいいだろう。どうだ?」


「なるほど。それもいいかもしれねぇな。俺達を襲撃してきたんだ。じゃあ、襲撃し返されてもも仕方ねぇよな」


「くくっ。まあ、その通りだな」

 デス・ウィングは笑った。


 セルジュも笑い返した。



 教団は大竜巻によって、建物が半壊していった。

 デス・ウィングの力で竜巻を生み出したのだった。


 中の信者達は逃げまどい、必死に女帝の名を叫び続けた。


「これは女帝様からの罰だっ! 信仰心の足りない我々への罰だっ!」

 教団に所属している魚人の一人はそう叫んでいた。


「そうだ、女帝様に嘆願すれば、我らの声は天に届く筈だっ! ああ、女帝様、我々は貴方様への不敬などしておりませぬ。熱心に貴方様への祈りを毎日、捧げ続けておりますっ!」

 熱心な狂信者達は、そう叫び続けていた。


 街の遥か高い場所で、遠くから見ていたデス・ウィングとセルジュの二人は、少し呆れ顔で教団員達の女帝への信仰に苦笑いをしていた。


「馬鹿じゃないのか? あいつら?」

 セルジュが呟く。

「縋る者が偶像で。永遠に偶像に縋り続けて、挙句にこの世の全ての理不尽は自分達が信じる者からの神の怒りと思っている連中の末路だな。くくっ、本当に笑える」

 デス・ウィングは途中、買ってきた肉饅頭を頬張りながら自身で起こした惨状を眺めて喜んでいた。


「なあ、セルジュ。やはり、此処に金目のモノは無いぞ。もう帰った方がいい」

「そうだな。見ていて、馬鹿馬鹿しい…………」


 セルジュは頷く。


 二人の遥か遠くには、まるで天からの罰のようにグチャグチャに破壊された教団の施設があった。



 やがて、風の噂であの教団の魚人達が不老不死と女帝からの声を求めて、地上に上がったのだと聞いた。

 彼らは顔面にマスクを被り、ただ、教団の教えを広めていた。

 

 きっちり教団を始末しなかった為に、彼らはあの街の外に出て、外の世界に不死の霊薬を探し求め、更に不死への信仰を広め始めた。


 セルジュは時折、彼らの姿を見ると極めて不愉快になる。

 カルトというものは無くならない。



 ある日。不老不死の薬とは、別の依頼があった。


 それは、あの不快なカルト教団を滅ぼして欲しいという依頼だった。

 どうやら近隣住民にとって迷惑らしい。

 頭が海洋生物の化け物達が、人間世界にやってきて、不老不死の説法をしている。そういった状況を好まない者達も多いのだろう。


 その辺りの近隣住民からの依頼で、デス・ウィングを通してセルジュに回ってきたものだった。


「私が行くと金にならないぞ。お前やるか?」

「やるよ。この前は一銭にもならなかったからな」

 セルジュは即答で、連中を始末する事に決めた。


 教団に侵入して、適当に偉い人間の首を落とす事にした。


 教団内部では、相変わらず意味の分からない修行のようなものを行っていた。

 教団の中では、さらってきた人間達に対して生きながら奇妙な実験を行っているみたいだった。人間の身体に魚やタコ、貝類といった他の海洋生物の鱗や触手をくっ付けてみたり、切断した手足に頭を縫い付けようとしているみたいだった。


だが、ある種のキメラを作るにしても、あの施設の奥にあった、歪な“クリスマス・ツリー”のように、人々を生かしながら永遠の苦しむを与えるといった技術を教団壊滅の際に失ってしまったのか。どうやら、ちぐはぐに縫い付けた死体ばかりが詰み上がっているみたいだった。


 それでもなお、彼らは不老不死へと近付いていると躍起になっているみたいだった。

 

「あー。本当にイカれてやがるぜ…………」

 セルジュは施設の内部に入り込みながら、呆れた声を出す。

 彼らは教団が壊滅しようが分裂しようが、きっと教徒が残っている限り、ずっと不老不死を追い求めているのだろう。女帝なるものの存在の降臨を望んでいるのだろう。彼らは何処までも残酷だった。それは女帝がかつて行ったとされる残酷行為を礼賛しているからなのだろうか。


 セルジュは教祖の元へと向かう。

 教祖の部屋の中には、あのタイの頭をしている魚人がいた。

教祖の部屋の中では謎のミイラが大量に作られていた。


女のミイラであり豪奢なチャイナ風のドレスをまとっていた。

教祖は彼女達に対してうやうやしくお辞儀をしていた。


 セルジュは有無を言わせず、タイの頭をした魚人と、彼の側近らしき者達の頭をはね飛ばす。びくんびくんと震えて、彼らは絶命した。


「どうせ。教祖を殺しても、此処はずっと存続するんだろうな…………」

 セルジュは小さく溜め息を吐く。


 教団内部にいる者達をてっとり早く全滅させた方が早い。

 一般教徒共も皆殺しにすれば問題無い。


 ……面倒臭ぇな。

 そう思いながらも、セルジュは一般人への被害人数を考えて念入りに始末する事に決めた。

 

一般教徒の数は百を少し超えるか。

あまり余計な殺傷はしたくない。

少し考えるが。


……やはり害悪だな。

セルジュは小さく溜め息を付いて行動を起こす事にした。


 教団から火が上がる。

 彼らの妄執は薪となって消えていくのだろうか。


 セルジュは火を点けた後の建物の残骸を後にした。



「不老不死の薬が見つかった」

 デス・ウィングは骨董店の中で呟く。


「そうなのか?」

 セルジュは訊ねる。


「プラナリアとクラゲの遺伝子を組み込んだ細胞で、それを人体に摂取するらしいのだが。人間には実用的では無いらしい。まあろくに売れそうに無いな」

 デス・ウィングは詰まらなそうに言う。


「はん。馬鹿みてぇな話じゃねぇか」

 セルジュは苦笑する。


 デス・ウィングの店の中には、あの教団内から持ち出してきたものが飾ってある。それは人間と魚介類の身体の一部を歪に組み合わせたものだった。セルジュが持ち帰り、デス・ウィングが安く買い取ったものだ。


 その中には魚人の人間部位を切り取って、歪に接合して、人間らしきものを作ろうとした“神の出来損ない”みたいのようなミイラもあった。


 


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