権力構想。
ロウケイシャンに伝え終えた事だし、各州の、元(←ここ大事っ!)ケラスィンの婚約者候補さん改め、代表者さん達とも話し合わないとだよなっ!
どうせなら平和的に各州の代表者さん達に、ケラスィンから手を引いてもらいたいもんな。
どう言えばロウノームスにおける『王族』という権力が付いてくる、ケラスィンとの結婚を諦めてもらえるんだろうか?
ケラスィンとの結婚の代わりになりそうなのは、各州の代表者さん達を元老院の一員にする事。
つまり『元老院』というロウノームスの権力を渡す事だ。
だが、その話がどうなっているのか僕は知らない。
でもその前にアクスファド先生に、各州の代表者さん達がこれからどうロウノームスと関係を持つつもりでいるかの考えを、聞いてもらった方がいいんだろうか?
それとも州の中で1番気安いグリオース州のテンパリトさんに話をするべきか?
まあ、まずは現状確認だよね。
「ところで、ロウ。前に店でちらっと話した、各州の代表者さんに元老院に空いた穴を埋めてもらう話は進んだ?」
あとこの際だ。
ロウに押しつけて、そのままにしていた事を全部聞いちゃえ~と僕は問いを重ねる。
「それと奴隷制度の廃止後の混乱って、どうなってる? 奴隷制度廃止の相談役になっているアクスファド先生って忙しい? 今、時間とれるかな?」
するとロウが渋い表情になった。
「我もその両方の件でエイブに話があったのだ」
「両方?」
「うむ。先生と各州の代表者達も同じ時に集めて、会談を行いたいのだが、そこにエイブも加わって欲しい」
「僕も?」
確かに元老院の穴を、各州の代表者さん達に埋めてもらうという話の言い出しっぺは、僕。
あの時はロウとオリエースト州の代表者さんだけじゃなく、州の窓口係さんも案内人として一緒に居たから、行政府の方にも元老院に対する僕の案は筒抜けになっていそうだ。
つまりロウノームスの政治を動かしている人達が、元老院の人員交代を進めようとしているはず。
それなのにアイデアを出しただけの僕の元に話を返してくる?
しかも、奴隷制度廃止についても話がある?
どういうことだ?
「エイブから見た、現状に対する意見を聞きたい」
「つまり順調に進んでない、と」
「そういう事だ」
「む~」
両方とも始めは混乱するかもしれないけど、時間が経てば落ち着くと思ってたのにな~。
州の代表者さん達が街だけではなく、王城内でも入れる所はあちこち見て回っている話なら、僕の耳に入ってきている。
各州に対する窓口担当者さん達が知恵を絞って、ロウノームスの現状を州の代表者さん達に色々見せようと努めてくれているからだ。
もともと州の代表者さん達はやり手だからこそ、代表者に選ばれた人が多い。
そろそろ元老院会議に呆れかえってたっていい頃だ。
でも何故、ロウノームスの貴族達は現状を見ようとしないのだろう。
このまま悪足掻きが続けば、自分の身が危ないと気づけないのだろうか?
いい加減行状が治らなければ、次は自分達が処分対象になるって事も伝えているはずなんだけど……。
行政府の人達が集めた資料だって、処分対象になった際には使う予定なんだけどなぁ。
もしかして自分だけは大丈夫とか、甘いことを考えてたりするんだろうか?
そこまで考えたところで、ロウから咳払いが……あっ!
今はケラスィンも一緒だったっ!
「え~っと、……そうだっ! その集まる日にケラスィンとの結婚が決まった事も言っちゃっていい?」
「そうしよう」
未だ僕は各州からの代表者さん達を敵情視察しただけで、まともなライバル宣言は出来ずに終わっている。
ライバル宣言が出来たのは、街の食堂で一緒した時、出会い頭じゃないけどオリエースト州の代表者さんに宣戦布告した事と、アクスファド先生の甥っ子達に、勘違いでしちゃっただけ……。
だから今度こそ、僕からケラスィンを取ろうとするかもしれない人達に、ケラスィンと結婚するのは僕だと言っておきたいっ!
すり合わせ
「ちょっと時間をいただけないでしょうか? グリオースの」
「オリエーストの。私の名はテンパリト。名前で呼んでもらえないだろうか?」
「すまない。アプエールという。話は、……島の人。分かるだろうか?」
「ああ。この前、街にある姫君の店で」
「話したことは?」
「そういうアプエールさんは?」
「私も姫君の店で。どう思われた?」
「会ってみても恐ろしさは感じられなかった」
「私もです。でも知って、調べれば調べるほど恐ろしく思います」
「ええ。あの人ほど一見普通に見える人は居ない」
「最初はこれまでにないアイデアを、ぽんっと出すだけの人かと思っていました」
「私は街の情報を集める情報収集家なだけかと思っていましたよ」
「ちょっとその話、詳しく教えてもらえませんか?」
「私にも。ずっと気になっていたんです」
「おや。姫君仲間が勢揃いですな」
「皆さん、時間はおありですか?」




