ケインズ子爵家滅亡
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仕掛けが功を奏したのか、こっちが一気に優勢になった。ここで伯爵軍は潰しておきたい。なので、全力で押した、押せるならどんどんと押した方が良い状況だからだ。
ただ、壊滅させるのは無理だった。何とか野営地の破壊までは出来たんだけど、普通に撤退を許してしまったからな。それでも2割程度は討ち取ったとは思う。……伯爵軍の指揮官を確保できれば良かったんだがな。指揮官さえ捕まえてしまえば、後は何とかなったと思うんだけど……。
「クルト兄さん、向こうは撤退しましたけど、また来ますよね?」
「当然だな。再編して襲ってくるだろう。だが、その時にはこっちも再編が出来ているはずだ。流石に何とか押されなくて済むだろう。俺たちは予定通りケインズ子爵家を落とす。伯爵家を相手するのはその後の話だ」
でしょうね。ここで追撃なんて面倒な事はしたいとは思わないし。それに、こっちの兵士に無理をさせる事になる。そんな事は望んでいない。そう言えば……。
「クルト兄さん、こっちの兵士の損耗はどうなってますか?」
「負傷者は多数。それでもアーミンが治してくれたがな。……死者は6人だ。こちらだって必ずしも安全だと言う事はない。損耗を恐れるな。無敵の軍隊なんて存在しない。必ず犠牲は出てしまう。その数を少なくするのが俺たちの役目だ。そうだろう? 悲しむ前に、現実を見つめろ。これが戦争だ。損耗は当たり前の事ではあるんだから」
「……そうですね。切り替えます」
死者がとうとう出てしまった。故郷に帰れない兵士が出てきてしまった。もっと出来ることがあったんじゃないか。そう思わずには居られない。が、クルトがいった通り、誰も死なせないなんて不可能なんだ。犠牲は少ない方が良い。だけど、絶対に出さないというのは不可能なんだ。それは認識していても、堪えるものがある。何とかして、連れて帰ってやりたかった。そんな無念の気持ちでいっぱいだ。だけど、やらないといけない事でもある。無駄に命を散らしたとはさせない。無駄な命なんて無いんだって証明してやらないといけない。
その後は、応援が来るまで待機していた。ゼイレ子爵家の軍がここを目指していることは明らかだったからな。それらが来てから移動すると言う事にしていた。……幸いなことに、ロッテルベル伯爵軍も向こうの町で待機しているのか、こっちに仕掛けてくることは無かった。暫くは睨み合いになるんだろうとは思う。それで良いとは思うんだ。とりあえず今はな。
合流したので、今度はケインズ子爵家を落とす事をしていた。順番に落としていって、最終的には2つの町が残った。要塞都市コルバルともう1つの町だ。これは順当に行くのであれば、町から攻略する方が良いんだけど、クルトの考えとしては、ここで要塞都市コルバルを落としてしまう方が良いと言う事だった。補給が途切れることになるから、もうここで落とした方が無難だろうという判断らしい。その判断が出来るのが頼もしい。俺だとどっちに行くか迷う所だろうからな。
「一気呵成に攻め立てる。要塞都市コルバルといえども、後方はそこまで守りは硬くないはずだ。全軍奮起せよ。アーミンは要塞を破壊するための魔法を」
「解りました。破城槌、打ち込みます」
ドスンと大きな音がする。1度では無理だった。何度も何度も叩きつける。そして、最終的には要塞を破壊した。魔法って本当に便利だよな。こういう時にはしっかりとした魔法を使えた方がいいのは確かなんだよ。まあ、覚えてしまえば、誰でも使えるんだけどさ。
一気になだれ込む軍隊。要塞都市コルバルといえども、内部から崩されては元も子もない。要塞は外部からの攻撃に特化しているんだから。それを内部から破られれば、そこまで苦労する事は無いんだよ。だから、一気に攻めた。そして、要塞都市コルバルを1日で攻略してしまった。
コルバルを落とした後に、一気にケインズ子爵家の最後の町を落とした。これでケインズ子爵家は滅亡したと言ってもいい。これで敵は一気にロッテルベル伯爵家になった訳なんだけど、ここでも問題が起きる事になる。簡単に言えば、勝てるのかというとだ。
一当てしたから感覚的には解るんだけど、勝てるのかどうか。ロッテルベル伯爵家の軍隊は、どう考えても子爵家よりも強い。それを攻略できるのかって所なんだよな。確実に勝てるとは良いにくい。何故ならゼイレ子爵家の領地で戦った結果を見れば明らかだからだ。確実に子爵家よりは強敵である。しかも、防戦ならまだいい。攻勢に出ないといけない。攻め側の方が兵力は必要なのだ。それなのに、兵力は勝っていても、練度は負けている。なのに攻めないといけないというこの微妙な感じ。……俺たちが戦力になれることは解っている。だが、俺はこれ以上犠牲をだしたいとは思わないんだよな。けど、いかないといけないというのも解る。行かなければならない。そうじゃないと、保険にならないからだ。俺たちの戦果はこれで良いとは思う。十分に確保した。けど、それでもまだ足りない部分があるとすれば、派閥の戦果だ。それがまだ足りているとはいえない状況だとは思う。
十分な戦果を上げるには、ロッテルベル伯爵家を落とす必要がある。その事を共有できるのかどうかだ。それが結構大きな分かれ目になると思うんだよ。戦力的にはどうなのか。ギリギリなんじゃないのか。そう思う気持ちもあるんだよな。……側面から切り崩していけるのであれば、なんとかなるとは思うんだけど……。とりあえず、動きとしてはロッテルベル伯爵家を狙っていくことになるとは思うんだけどな。
「クルト兄さん、どんな感じだった? どうやって動くとか、行動方針があったのかなって思う訳なんですけど、どうなりました?」
「とりあえずは待機だ。まだデレイエ子爵家が落ちていないらしい。そこが落ちて、戦力がこっちに来てから動くことになりそうだ。それまでは、防衛に手を貸すと言う事になっている。ヨナターク子爵家がデレイエ子爵家を落とすために援軍に向かうそうだから、何とかなるとは思うが……。現状はそんな感じだな。とにかく、この場所からロッテルベル伯爵家を牽制しつつ、落とせるなら落としてしまうが、まあ、崩せないだろうな」
「そうですか……。となると、時間がかかりそうですね。デレイエ子爵家を落とす方が早いんじゃないかとも思ったんですが、子爵家の戦力と伯爵家の戦力では全然違うと言う事が解りましたしね。しかもデレイエ子爵家は、伯爵家に攻められているとは言っても、城塞都市を用意していますから、何とかなるかどうかですね。最悪は兵糧攻めになるとは思うんですけど……」
「そうだな。その辺が気がかりになってくる。確実に落とせるかどうかは未知数だ。急いで落とさないといけないのはそうなんだが、それにしては戦力がな」
「足りない可能性もありますよね。俺たちもそっちにいけば良かったんじゃないんですかね?」
「いや、俺たちはロッテルベル伯爵家を牽制するのに残した方が良いんじゃないかという意見が優勢だった。対抗するには、それなりの戦力が必要になるからな。ここから離れるよりも、何とか防衛しておく方が良いんじゃないかって判断だな。俺的には、戦果も欲しかったし、デレイエ子爵家を落とす方向に持っていきたかったんだが、こっちに残ってくれという意見が多かった。その意見もよく解るからな。向こうは伯爵家が中心になっているんだ。時間の問題だろう」
それなら良いんだけどな。何とかデレイエ子爵家を落とす方向で固まってくれれば良いんだが。




