昔語り
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冬の80日。裏で策略を廻らせるのは苦手だ。そんな事が得意な人の方が珍しいとは思うけど、俺は苦手だ。だけど、今後はポーズだけでもしておいた方がいいんだろうな。その方が色々と勉強になることも多いだろうし。それに、話術が巧みであれば、ポロっと情報を落とすかもしれない。まあ、そんな話術は無いんだけどな。だけど、色々と聞いてみたいことはある訳で。それをコンラートにも聞かせないって話なのかという疑問はある訳なんだけど。そこまで隠さないといけない話なのかってのは疑問なんだよな。表で話しても別に構わない事しか、聞くことが無いんだよな。
でもそれでは問題がある訳で。いや、特に大きな問題になることは無いんだけど、話しておかないといけない内容か。……ヨナターク子爵とは何度か話しておきたいとは思うんだけど、それに関しては不可能だろうし。コンラートは会えるだろうけど、俺じゃあまだまだ格が足りないんだよな。手紙をヨナターク子爵が読んでくれたのは、偶然もあるんだろうし。運よく色々とこっちに教えられる機会が廻ってきたからってのが理由だろうしな。話しておきたことも、色々とあったのは当然の事ではあるんだろうし。
「はあ、策略ねえ。まあ、無縁じゃあ無いけどな。初代の時から一緒に居るんだからよ。ある程度の事は聞いている。ただの樵でも、聞こえてくることはあったからなあ。まあ、碌な話じゃねえのよ。俺たちだって、色々と面倒な事に巻き込まれてるんだなってのは解ってついてきているからな。平民だから知らないって事ではないって事なんだよ。難しいかもしれねえがな」
「秘密は誰にでもあるって事なんですね……。それでなんですけど、初代の人は、魔族に対してどんな感じだったんですか? ヨナターク子爵家の寄子になったんですから、ある程度は魔族に理解がある人だとは思うんですけど、村をこうやって4つに分けて、1つに押し込めたんですよね? それなら、初めから魔族を隔離する感じで動いていたんですか?」
「いや? 初代の時の待遇は良かったぞ。問題が出てきたのは2代目からだ。村が4つ完成したのは2代目の時だからな。開拓を成功させて、まずはアタライ村を作ったのが初代。で、そこでおっ死んで2代目になった訳だ。そこからだな。魔族を排斥し始めたのは。簡単に言うと、人間と魔族で態度が変わっていったんだよ。その時からだろうな。俺たちが認められなくなったのは。だから、初代に関しては思う事はねえんだが、2代目はなあ。あんまりいい印象がねえな。んで、3代目も放置。4代目も何も考えていないって感じで、今が5代目だろ? それで大体150年くらい前だからな。あんまり好ましくない奴らが村長になることもあったが、この村の村長をやる奴で、まともじゃなかったのは1回くらいしか無いんじゃねえか?」
「ん? んー? 思ったよりも村長はまともなんですね……。というか、もしかして、貴族家以外は、そこまで魔族がどうのこうのってない感じですかね?」
「昔はそんなのはどうでもよかったよな。まずは生き残ることがメインだったからよ。生き残って、子孫を残して、それで死んでいくってな。生活は苦しくても、次代は残さなければならねえって思っていたからな。どれだけ生活が苦しかろうが、次代は残さなければいけねえ。そうじゃないと、繋がっていかないだろう? そうじゃないと、村としても機能しねえからな。その辺は、皆思っている事じゃねえのかなってな。まあ、無理に子供を作っても、生き残れねえかもしれないんだがな。その時は、親である俺たちが死んでいけば良いからな。子供には、未来を託さねえといけねえ。その未来がどうなるのかは、こうやって生きてきたら、いい事もあるって事なんだよ。……まあ、こんなに良くなったのは初めてだがな。感謝はしているんだぜ? まともな仕事があって、まともに食えてッてな。酒も飲めるようになったし、感謝はしているんだ。……初代も、もしかしたら、あれだったのかもしれねえけどな。露骨にはしなかっただけで。もしかしたら、初めから腐っていたのかもしれねえな。その辺の事は俺は解らねえからよ。ただ、初代の頃は、まだ表には出していなかった。露骨にやってきたのは2代目からだな。初代が残っていれば話は違ったのかもしれねえが、初代から2代目に変わった時は、死んだすぐだったからなあ」
「あれ? 伝統的に、村長をやってから、次代を選ぶんじゃなかったんですか? これが伝統だって聞いてたんですけど……」
「その伝統は2代目からだ。初代はそもそもアタライ村を作って死んじまったんだから、そんな事は出来ねえって話でさ。2代目が4つの村を作って、子供にそれを管理させたんだ。そこからが始まりだな。そんで、馬鹿も1回はきたけど、それ以外はまあ、まともだったんじゃねえのか? この村の状況は何とも出来なかったようだけどな。それに関しては、出来たお前らが優秀だったってだけの話だからよ。普通はこんな村は、衰退していくだけなんだよ」
なるほどなあ。初代は、まともだったのか、上手く隠していたんだけど、2代目からは露骨にやって来たって事か。もしかしたら、魔族の住民は、ヨナターク子爵家の出身の技術者集団だったのか? その可能性が出てきたな。
「もしかしてですけど、ここの開拓メンバーって、初代が人間を集めて、ヨナターク子爵が魔族をそれに付けたって感じですかね?」
「おお? よく解ったな。それが正解だ。まあ、俺も大工をやってて、ある程度熟せるようになってきたから、開拓メンバーに選ばれたって感じだな。基本的にはスラムにいたような素人を使っての工事だったからな。厳しいなんてものじゃなかったぜ? まずは樵から教えないといけないんだからよ。木の伐り方も知らねえような奴らが中心だったんだぜ? まあ、そいつらはもう死んじまったんだけどな。人間の寿命は短くていけねえ。昔語りする連中は、皆ヨナターク子爵領の生活を知っている奴らだからな。その時は酒も飲めたし、まあまあいい生活は出来ていたんだがな。開拓メンバーに選ばれて、こっちに来てみたら、まあ、話が進まねえのなんのってな。まずは何から教えてばいいんだよって感じの奴らばっかりでな。まあ、苦労はしたさ。最近になって、また同じ苦労をしている訳なんだけどな。移民に教えるのも、百何十年ぶりかって感じだったからな。働き者の移民はいいぞ。基本的には指示通りに動いてくれるからな。まあ、あんなに樵を用意しても、この先どうするんだってのはあるんだけどな。何かしら用意はしてあるんだろうな?」
「そこは仕事を用意するので、問題なしですね。細々とした仕事も沢山あるので、樵を今の半分にしても、問題は出ませんよ。それよりも、木材不足の方が深刻ですからね」
「まあ、村を作るには、木材は絶対に必要だからな。その辺はしっかりと考えてやっているなら問題ない。樵を増やし過ぎても、問題が大きくなるだけだからな」
その辺はしっかりと考えているから安心してくれ。物流関係とか、牧場関係とか、沢山やることはあるんだよ。まあ、昔話をしてくれて助かったとは思うけどな。……最初から魔族排斥派だったんじゃないか。それを何とかヨナターク子爵が取り込もうとして、失敗したって感じか。初めから、人間だけで村を作ろうとして、無理だからって魔族の技術者を押し込んだと。それで、思想が変わってくれれば良かったんだろうが、2代目からは本性が出てきたと。そう言う事なんだろう。




