最終話 幸せな歩み
砂漠の中を、ローブを纏って歩く。
隣にいるのは小さな子どもに見えるが、本当はすごく偉い、魔を導く王だった者だ。
「さて、ブラッディよ。これからどうするかのぉ」
「……どこへでもついて行きます」
私たちが聖王に処罰を下され、私が人間界を100年見つめ、その後魔道王様と一緒に200年、牢屋に入った。
牢屋での200年間の思い出など、100年の人間界巡りに比べればあまりに薄味だ。
それほどまでに、人間界での思い出は強い。
今日釈放された私たちは魔道国に帰る途中だ。砂漠を抜けるとようやく魔道国首都に到着した。
「埃が多い玉座じゃなぁ! もう」
「人間界にいた時はきちんと掃除していました」
一応入れた注釈を無視して、魔道王様は埃を小さな手で払って玉座へと座られた。
「さて、そろそろ話してもらおうかの。ブラッディが見てきた100年のことを」
魔道王様は私に人間界でのことを聞いてくることはなかった。
でも今初めて、ここで聞かれた。なんとなく、私は今日聞かれる気はしていたけど。
「……はい。
私は灯という少女と仲良くなり、そこから人間界に愛着を持つようになりました。
そこからずっと何年も、灯に寄り添って生きてきました。
灯と、その恋人である輝夜とも仲良くなりました。
灯と輝夜は自分たちの願いを叶え、志した道をゆき、私もそれに続きました。
灯と輝夜は結ばれ、子どもを成し、美影という一人娘を大事に育てました。
美影が成人して大学を卒業した後、灯と輝夜は2人きりの人生を歩むことになりました。そこに私もよく顔を出しました。
いつでも笑顔で迎えてくれる灯と、優しく迎えてくれる輝夜。この2人に支えられ、私は最高の年月を歩むことができました。
でも、時の流れは残酷でした。
人間は長くても100年前後しか生きられません。
まず輝夜が88で亡くなりました。灯と美影、その子たちといっぱいいっぱい泣きました。
1人になった灯はだんだんと衰えるようになり、私は介護者として灯と同居することになりました。
灯は喜んで私と生活をしてくれましたが、輝夜のいない灯はどこかずっと寂しそうでした。
そして輝夜が天国に旅立ったちょうど3年後、灯も続きました。
私と美影とその子で泣きました。
私は1人になった気持ちになりました。
実際、1人になったんだと思います。仮の人間としてのブラッディ・カーマはそこで終わりました。
残った年数はただ人間たちの生活を傍観し、終えました」
「そうか」
私の頬には温かいものが流れた。
別れがこんなに辛いものだと、知らなかった。
でも、知っていたら出会いをやめるかと言ったら、そうではない。
私は確実に幸せだった。
灯と出会えて、輝夜と出会えて、上手じゃなかったかもしれけどいっぱい笑って、いっぱい泣いて。
これが私の人生の幸せだというのなら、十分納得できる。
「ありがとうございます。長い話を聞いてくれて」
「構わぬ。気が向いたらもっと話すといい」
「はい」
この物語に名前をつけるとしたらどうするだろうか。
魔法少女? 変態? いや、違う。
これは『ブラッディ・カーマの幸せな歩み』だ。
本編投稿から約2年、ありがとうございました!
これにて3主人公の物語、完結です!
……ですが、来週に蛇足となる話を投稿します。完結記念イラストが載る予定なのでぜひ来週も覗きに来てください♪




