65話 初の飲酒!
「さ、さぁ! どれから飲む?」
卓上に用意された『ほろっと酔い』『ビール』『梅酒』『日本酒』『ワイン』『スピリタス』。それを見つめて私たちは唸っていた。
「初めてですし、無理せずほろっと酔いからで良いんじゃないですか?」
「初めてだよ!? 大切にいきたくない?」
「……スピリタス」
この吸血姫さんは私たちを破壊させたいのかな? 大学の廊下にも貼ってあるでしょ、飲み会の続きは病院ですか? みたいなポスター。
「ブラッディは飲まないの?」
「……血しか口にしないし」
「まぁそうだけど……あっ、じゃあこういうのはどう?」
ブラッディは私たちの部屋に血のボトルを何本かストックしている。正直やめて欲しいけど、親友の頼みとあっては断れなかった。そのボトルから血をグラスに注いで、スピリタスをちょろっと混ぜた。
「はい、血のリキュール!」
リキュールって言葉しか知らないから意味が合ってるかはわからないけど、とりあえず雰囲気ってことで。
深紅のお酒はブラッディによく似合う。これが映えるってやつなのかもね。
「……ありがとう」
私とブラッディがやりとりをしている間に、輝夜ちゃんが一本のボトルを握った。
「か、輝夜ちゃん!」
「えぇ。私は……ワインからいきます!」
「似合う!」
絶対今、私の目はハートだよ。ワイン片手の輝夜ちゃんなんてセクシーすぎて見た目だけで18禁!
コンビニで買った700円のワインだけど、輝夜ちゃんが注いで香りを嗅げば100万円!
「では、いただきます」
クイっと、思った何倍も軽快に輝夜ちゃんはワインを口へと滑らせた。
「うん、爽やかな酸味が広がって、美味しいです」
「美味しいんだ! よかった〜」
とりあえずワインが美味しいなら保留にしておこう。で、私は……
「うん、大和撫子な私は日本酒にしよう!」
「大和……撫子?」
「知らない? 大和撫子っていうのは……」
「意味は知ってる。灯が大和撫子というところに疑問符を打った」
「……」
失礼なブラッディは置いておいて、もう飲んじゃおう。お猪口も100均で買ってきたし、準備は万端!
「いざ、いただきます!」
お猪口3分の1くらいの量の日本酒をお口に運んだ。すると広がったこの風味はまさに……
「びょ、病院!?」
「どういうことです?」
「なんか! なんか口の中に病院が広がったの! 美味しくない!」
なんなのこれ! ガツンとくるし、匂いのわりに甘くないし! 完全に詐欺だよ!
結局私は『ほろっと酔い』に逃げた。これは甘くて美味しいね。輝夜ちゃんはワインが気に入ったみたいでごくごく飲んでる。私も一口もらったけど渋くて飲めたものじゃなかった。輝夜ちゃんすごい。
「う〜ん……」
「どうしました?」
「もっと酔ったら凄いことになるかと思ってたけど、そうでもないねぇ」
輝夜ちゃんは高校生の頃、ウィスキー入りチョコレートで酔ってた気がするけど……強くなったんだね。
「確かにそうですね。ただ……」
私たちはチラッと横を見る。
「灯〜、輝夜〜、うぇ〜い」
キャラ変した? ってくらいのブラッディ。血にちょっとスピリタスを混ぜただけなのにこうなってしまった。
「灯、飲んでなくないwowwow?」
「輝夜ちゃん絡まれた〜」
「……そっとしておいてあげましょう。そして今日のことは忘れてあげましょう」
今日、私たちは確実に大人への階段を登ると共に、ブラッディの弱点を一つ見つけたのでした。




