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魔法少女が変態でした:零

魔法少女が変態でした。完結1周年です!

今も足を運んでいただき、ありがとうございます♪

 ずっとずっと昔のこと。

 恐ろしい勢力で陣地を拡大していった魔道国。彼らは異世界の領土では飽き足らず、地球にまでその食指を伸ばし始めた。

 魔獣という恐ろしい生命体を送り、地球制圧を目論んだが、それを阻む者たちがいた。

 聖王国が生み出した『魔法少女』である。


 魔法少女の物語を二分割するとしたら、とある魔法少女の出現から分けられるといえる。もっとも、長い魔法少女の歴史の中で後期のほんの数年の出来事であるが。


 これは……そんな特異点、ハニーランプ。彼女が魔法少女になる約5年前。魔獣と魔法少女が激戦を繰り広げていた頃の物語である。


 ◆


「マジカルインストール」


 呟く言葉はたったの一言。しかしそれで私の世界は一変する。

 青と白を基調とした衣装をこの身に纏い、髪をポニーテールに結う。これが私の戦闘衣装。


「さぁ、行きましょうか」


 世界を救うにはあまりに覇気のない呟きを、私は口から漏らしたのです。


 暗雲立ち込める星乃川市。その一番高いビルが私の狩り場となっています。……一人で狩っていたのですが、どうやらもう彼女たちはここに集う気しかないようですね。


「今日もここにいたでござるか」


 いの一番に声をかけてきたのは【テールインペリアル】さん。一言で表すのなら武士。私と同じくポニーテールに結っているため、少しばかりキャラの被りを感じざるを得ません。


「来ないでくださいと前回も言ったはずですが?」


「来ないとは一言も言ってないでござる」


 ……このまま話を続けても平行線ですね。あとから来た2人も同じことでしょう。


「よっす、今日も暴れるぜぇ」


「こんばんは、2人とも」


 あとから駆けつけてきたのは【ベビーラテラル】さんと【イヤーエンジェル】さん。

 私を含めて、この4人は今、期待を込められて『黄金世代』と呼ばれている。

 年齢は私と大差ないでしょう。10〜13歳くらいの少女たちです。


「またぞろぞろと……」


 私は群れるのが好きではないのですが……。

 何度そう言っても彼女たちは聞く耳を持たない。私と仲良くなろうとしているのか、はたまたライバル視しているからか。動機がまったく掴めませんね。


「……にしても今日は魔獣どもの気配がねぇな。珍しくねぇか?」


「そうでござるね。新しく手に入れた剣の切れ味を試したいのでござるが……」


「あ、ガチャったんだ。ついに【テールインペリアル】もSR武器デビューか〜」


 仲良さげですね。私のことは無視して3人で遊んでいればいいものを。

 ただ……【ベビーラテラル】さんの言った通り魔獣の気配がない。これは……どういうことなのでしょう。



 ◆ 同時刻、デスペラード魔道国



「やいブラッディ! 最近負け越しすぎではないか!?」


 ……魔道王様に呼ばれてきてみればこれだ。いつもの説教タイム。

 玉座の間に膝をつくのは【吸血姫】である私だけではない。【バフォメット】、【死天使】、【魔母】の四天王が揃い踏みしている。


「……申し訳ありません。魔法少女なるものの強さが尋常でなく、魔獣では対処の尽くしようが無いです。私たちに出動命令を下していただければいつでも……」


「ならぬ! お主らがあの【絶望の虹】にどうやって勝つつもりじゃ! 奴が出てきたら終わりなのじゃぞ!」


『あの』と言われても私は戦ったことはないどころか見たことすらないから想像がつかない。でも魔道王様すら警戒させる相手なのなら……私が全力を尽くしたところで敵う相手ではないのだろう。


「よろしいでしょうか、魔導王様」


 ゆっくりと手を挙げたのは【魔母】。魔獣を大量に生み出し続ける悪の母だ。泣きぼくろがセクシーだけど、あいにく大人の女すぎて私のストライクゾーンには入ってこない。


「うむ。話せ」


「私とバフォメットと死天使で調整した新型魔獣[ザ・リベリオン・エンジェル]を送り込むのはどうでしょう? まだ試作段階ですが他の有象無象たちよりは成果を挙げられるはずです」


 ……そんな話、まったく聞いていない。私はハブられたわけか。


「ふふん! 悔しそうねブラッディ。何なら今から仲間に入れてあげても……」


「結構」


「なんでよ!?」


 馴れ合うつもりはない。私たちは魔道国の幹部なのだから、適切な距離を保って接するのが一番。


「よし、ならばその何たらエンジェルとやらを人間界に送り込んでみせよ! もし魔法少女を壊滅させられたら最高幹部の座に就かせてやることも検討する!」


「はっ!」


 どうやら今日の方針は決まったみたい。

 ……でも、何か心配だ。なら……



 ◆



 魔獣の襲撃がないことに安心感を覚え、ほんの少し油断していたその時、暗雲から一筋の光が差し込んだ。


「な、なんだぁ!?」


「落ち着いて。きっと魔獣よ」


「でもこの規模は……」


【ベビーラテラル】さんが話をしている途中で突風が吹いた。その風によって暗雲は吹き飛び、上空には夜空が広がった。そしてその中に、何か生命体の気配を感じる。

 晴れた空に座しているのは……天使? 【イヤーエンジェル】さんに近い見た目の魔獣と思われる生命が宙に浮かんでいた。


「何だあいつ……他のやつとは雰囲気が違くねぇか?」


「禍々しいオーラでござるな」


「っていうか私に似てない?」


「……[名槍:月姫]」


 私はいちいちリアクションを取ることなく槍を構えた。あれが他の魔獣と雰囲気が違ったとしても倒さねばならないという事実に変わりはありませんからね。

 そして私は他の3人に構うことなく、1人空へと飛翔する。もちろん飛べるわけではないので、魔法少女のスキルであるジャンプ力向上を使っています。早くこんなスキルは捨てて、ユニークにしたかったのですが意外と役に立ちますね。


「はぁ!」


 月明かりを反射する美槍で黒い天使のような魔獣に攻撃を仕掛けるも、なぜか槍は本体をすり抜けてしまった。


「……?」


 混乱する私に対し、黒い天使は標的ロックオンといった様子。やる気ですね。


「ゥ……ネグロ・ジュビア」


 機械的な声からは冷たさを感じた。しかしそんなものに気を取られている余裕はない。何しろ天使から黒い雲が放出され始めたから。間違いなく、何かしらの攻撃が来る!


 黒い雲は遥か上空へと打ち上げられ、空で魔法陣を形成した。


「おい【ネイベルナイト】、やばいんじゃねぇか?」


 ビルの屋上まで引いた私に声をかけてきた【ベビーラテラル】さん。私はそれに答えることなく防御体制を整える。


「『パワーシールド』」


「……チッ、お前らも防御しとけよ?」


 ほどなくして黒い雨が降り注いできた。それはビルを貫通し、街を破壊してゆく。修復可能な世界をあの餅が作り出してくれなければおしまいでしたね。


 数分後、雨が止み黒い雲が引いていった。足場は崩壊し、ぐちゃぐちゃに崩れている。ここまで壊れた町を見るのは初めてかもしれません。


「めちゃくちゃですね……」


 範囲も威力もケタ違い。今までの魔獣とはわけが違う。相手も焦り始めてきたということでしょうか。


「この近くにいるのは私たちだけみたいだし、4人で協力して戦いましょ。ね?」


【イヤーエンジェル】さんが明らかに私だけに向かって協力を呼びかけた。他の方は協力してくれる前提で、私だけ現状では目の上のたんこぶなのでしょうね。


「……馴れ合いたいのなら3人でどうぞ。私は干渉しません」


「おい! いい加減にしろよコラ! アタシたちの何が気に食わねぇってんだよ」


「ここは手を取り合うべき時でござるよ」


 激怒する【ベビーラテラル】さんと促す【テールインペリアル】さん。それでも私の意見は変わりません。


 空の天使は次なる攻撃のために何か黒い光をチャージしている。そして少なくとも物理攻撃は通らない。なら……


「『フレイムボール』」


 消費MPの少ない魔法で実験するしかないですね。

 燃え盛る炎の球は黒い天使へと向かっていく。しかし天使には直撃……はしたのですが、そのまま通り過ぎてしまった。


 実体のない生物? はたまた透過能力を持っている? 謎は深まるばかりですね。

 物理でも魔法でも攻撃は通じない。でも相手は広範囲高威力の攻撃を持っている。さて、どう攻略するべきか……。



 ◆



 ……心配で見にきたけれど、あの天使……相手からするとかなり厄介なギミックを持っている。これなら私が来る必要もなかったか。

 ただ相手には[ザ・リベリオン・エンジェル]を倒す手駒が揃っている。ギミックに頼りすぎて肝心の防御と体力が疎かになっている。バフォメットたちが作ったのが頷けるほど杜撰な作り。


「……少し、見ていこうかな」


 私は壊れた建物の瓦礫に座ってゆっくりと観戦することにした。


「……?」


 瓦礫の下から何かが出ている。そう思って引っ張り上げると1人の少女の腕だった。この戦闘中では時間が止まっていると言っても過言ではないから少女は固まったまま。

 歳は……人間だから12歳前後か。ギリギリストライクゾーンと言えなくもない。明るい顔が特徴の、元気そうな女の子だ。


 普段ならそこらにでも投げ捨てて無視をするところ。でも……なぜかこの子には目を奪われる。


 ふわふわのパジャマには名前と思われる文字が記されていた。『森野灯』……まぁ、取るに足らない人間の名前など覚えても仕方がないし、冷静になればこんな子どもを引っ張り上げる必要もなかった。


 謎の魔力から解放された私は灯という少女をその辺の瓦礫の上に優しく置き去った。



 ◆



「物理攻撃が通らない、魔法攻撃が通らない、某の『インペリアルモンスター』でも攻撃できない……どうなっているでござるか?」


「知るかよ。アタシはそういう難しいことは考えねぇようにしてんだ」


「脳筋ね。でも嫌いじゃないわ」


 ……本当に手の打ち用がない。『イグジストナイトメア』を使ってみるという方法もありますがリスクが大きすぎる。


「おい【ネイベルナイト】、てめぇなんか思いつかねぇのか? 頭良さそうだろ」


「……」


「無視かよこの……」


「まぁまぁ、落ち着いて」


 少なくとも【ベビーラテラル】さんに相談して妙案が出るとは思えませんしね。

 あの天使の方も私たちの攻撃が脅威にならないと感じたからか一向に動く気配がありません。どこか今までの魔獣とは違う……なにか未完成のロボットのような印象を受けますね。


 脳まで筋肉でできたような発想ですが……ダメージを与えるならダメージが入るまで攻撃し続ければいいこと。やるべきことは一つです。


「『ジャンプ!』」


「また勝手に突っ込みやがった!」


 そう、勝手に突っ込ませていただきます。攻撃が通らないなら通るまで殴る。


「はぁ! やあっ! せりゃあ!」


 空中で槍を振り回して天使を貫こうとする。しかしそのすべてがすり抜け、攻撃の意味は無に帰した。


「もういい! アタシらも突っ込むぞ」


 どうやら皆さんも私と同じくゴリ押し戦術を取るようですね。私の戦術に乗るのであれば邪魔にならないので結構です。


「はぁ!」「おりゃあ!」「ふん!」「えい!」


【ネイベルナイト】の槍

【ベビーラテラル】の木刀

【テールインペリアル】の剣

【イヤーエンジェル】の天輪


 その4つが偶然……重なった。


「グオォォン!?」


「ダメージを……受けた!?」


 どういうことでしょう……なぜ今になってダメージを? 4つの攻撃すべてが物理か魔法による攻撃。別段変わったことはないはずですが……。


「なるほどな、複数人同時攻撃でダメージを喰らうわけだ」


 唾を吐いて木刀を握りなおす【ベビーラテラル】さん。


「行くぞお前ら!」


 そのまま【イヤーエンジェル】さんと【テールインペリアル】さんを引き連れて特攻する。これでダメージが入るのか……


 スッ……と消え失せるような音とともに攻撃がすり抜ける。


「はぁ!? 何でだよ!」


「もしかしたら4人同時攻撃が必要とか?」


「今考えられるのはそれしかないでござるな」


 どうやら勝手に結論を出したようで、みんな私の方を見つめてきた。


「……なんですか?」


「わかってるよな? お前の力が必要なんだよ」


「……魔法少女でいいならその辺に他の方がぶらついているでしょう。その方に……」


「あぁもういい加減にしろよ! 何がお前をそうさせるのか知らんがさっさと黙って攻撃に参加しろや!」


 激しい剣幕で迫られ、そこまでされたらやるしかないかという半ば諦めの気持ちになる。


「…………………わかりましたよ。攻撃すればいいのでしょう?」


 別に協力するわけではない。ただ攻撃するのに彼女たちが合わせるだけ。


「『イグジストナイトメア』」


 ダメージが入ると分かったのなら攻撃に集中しましょう。幸いダメージを受けてから天使は攻撃を仕掛けてこないですからね。


「行きます。はぁっ!」


 黒い立方体の粒子を纏った槍で天使に攻撃する。他の三方からも魔法少女たちが飛びかかって攻撃を仕掛けた。

 グサッと突き刺さる槍は赤い血を噴き出させた。美しい月姫も赤く染まり禍々しく映った。


「グ……ギギ……」


 天使はそのまま倒れ、やがて粒子状に消えてしまった。


「ずいぶんあっけない終わり方でござるな」


 それに反論するものは誰1人としていなかった。


「では今日はここまでですね。さようなら」


「おい【ネイベルナイト】、協力したんだから少しくらい……」


「勘違いしないように。協力したつもりなど毛頭ありません」


「なっ……てめぇ」


 彼女の心の氷が溶けるまで、あと5〜6年の時間を必要とするとはこの時は誰も思っていなかったのである。



 ◆



 ……やはり耐久力と安定性に欠けるか。


「あとでバフォメットたちを責める材料ができた」


 ポジティブに捉え、私は『ゲート』を開いて人間界を後にした。


 彼女が救われるのはこれから5〜6年後のことである。

5000字でオーバーヒートしてしまったので来週の更新はお休みです。

再来週からは大学2年生編がスタートです☆

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