53話 瞳さんのラストアタック
東京は夜になっても明るい。そう思い知らされるくらいにまだまだビル群は光り輝いていた。
これ、残業なんだよね……いやだなぁ、大人になるって。よく考えたら夜景が綺麗で売っている観光地って、世界がホワイト企業だけになったら潰れるんじゃない?
「……灯、どうでもいいこと考えてない?」
「はっ! 特に何もなさすぎて思考がトリップしてたよ」
輝夜ちゃんは瞳さんからのアプローチに対して塩対応を続け、見事に撃退している。輝夜ちゃんのガードが堅すぎてもう私の監視いらないんじゃないかと思っちゃうね。
「灯、あまり慢心は良くない。夜はこれから。寝静まったころに夜這いをかけるという作戦が一番ベターな気がする」
「……ブラッディってもしかしてそういう妄想をしてたりするの?」
「ノーコメント」
この子も煩悩強いタイプだよね、今更ながら。
桜に「除夜の鐘で打たれればいい」って言われそう。っていうか昔言われた気がする。
そして数時間が経過し、深夜。もう輝夜ちゃん達は夢の中へと旅立ってしまった。
「ねぇブラッディ、そういえば全然眠たくならないんだけど……」
「私が魔力干渉をしている。思い出したくない過去だけど、人間を襲う時にはこの要領で不眠症にさせていたりもしていた」
そう言うブラッディの顔はひどく寂しそうだった。きっと過去の行いを反省しているんだろうね。だったら友達として、これ以上の追及はなし!
「過去はともかく、今はありがとう。輝夜ちゃんを監視し続けられるよ!」
「……ん」
ブラッディの肩がわずかに震えた。
「なになに? どうしたの?」
「灯、よく見て」
『ふふ、楽しい夜は……これからね』
瞳さん……起きてる! しかも輝夜ちゃんの布団に近付いて行ってない!?
これはまずいよ! いかに輝夜ちゃんとはいえ襲われたら抵抗は難しいはず。でも未遂のまま動くわけにも……
『か〜ぐや♡』
『瞳さん? 眠れないんですか?』
『うん。ドキドキしちゃってね。何でだと思う?』
『更年期ですか? 瞳さん、もしかして何浪も……?』
輝夜ちゃん……それはあまりにも失礼すぎるよ……。
『ふふ、もういいわよ。いい思い出、作りましょう?』
そう言って瞳さんが輝夜ちゃんの胸へと手を伸ばした。
「ダ、ダメー!!」
だめだ、追いつけない!
パシッッ!!!!
強い音が響く。ブラッディの遠隔聴力を使っていなくても耳に届くくらいには大きい。
『すみません瞳さん。あなたの想いには薄々感づいていましたが私の人生に恋人は一人で十分です。私の運命の人は残念ですが瞳さんではありません』
『……そっか。残念』
輝夜ちゃんの強い拒絶に合い、瞳さんはあっさりと引いていった。でも私には見えた。飄々とした瞳さんが涙を流していたことを。
「……」
「……灯、これ以上は?」
「うん。帰ろっか」
まだ明日もあるけど、これで何も不埒なことは起きないと思う。輝夜ちゃんを信じているし、瞳さんもそんな人ではないと思うからね。
私はブラッディに連れられ、数分で星乃川市に到着したのでした。
◆
翌日の夜。
ついに輝夜ちゃんが帰ってくる日です。
「ただいまです、灯」
「おかえり〜。楽しかった?」
もちろん何をしていたかは半分見ていたから何となくわかるけどね。
「はい。東京はやっぱりすごいですね」
そう言って輝夜ちゃんはたくさんのお土産を冷蔵庫に入れてくれた。たくさん買ってきてくれたんだなぁ。嬉しいなぁ。
「あ、そうだ灯」
「どうしたの?」
「今度はちゃんと、2人きりで東京に行きましょうね」
「…………へ?」
ちゃんと? ってまさか……気がついていたの!?
困惑する私を見て輝夜ちゃんは
「ふふっ」
と優しく、微笑んでみせたのでした。
来週8/15は魔法少女が変態でした。完結から1周年!
ということで特別話を投稿します。普段は1200〜2000字なのですが5000字近いです。お暇な時にどうぞ〜。




