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50話 灯の嫉妬

 輝夜ちゃんと瞳さんたちを乗せたバスはゆっくり北上している。行き先を聞いていなかったからどこに行くかわからないんだよねぇ。

 長いこと時間が生まれるから必然的にブラッディとの会話が弾み、もうどうでもいいことまで聞いてみることになる。


「ブラッディって永遠に飛び続けられるの?」


「そんなわけではない。でも昔、自分を試すために耐久レースをしてみたら19000時間くらいは飛べた。日数にすると790日くらい」


「す、すごいことしているんだね」


 時間の感覚が人間とは違うね。2年と少しの間ずっと同じことをし続けるなんて私では考えられないもん。

 そんなことをしている間にバスは大都会、東京へ。ビル群を縫って空を飛ぶってなんだか優越感に浸れるね。


「ブラッディ、バス車内はどう?」


 なんか直視するのが怖いからブラッディに聞いてみることにした。


「極めて健全……と言いたいけど、あの瞳という女が輝夜の太ももや肩に結構触れている。スキンシップが激しい」


「キィィィ!」


「……灯が悪役令嬢の断末魔みたいな声をあげてる……」


 バスは新宿駅に泊り、そこで輝夜ちゃん達は降車した。


「新宿……って何があるんだろう」


「新宿……歌舞伎町……夜の街」


「だ、ダメだよそんなの! まだ未成年だもん!」


 お酒を飲ませて輝夜ちゃんをお持ち帰り!? ありえる……だって大学生って浪人している可能性もあるし、瞳さんは20歳なのかもしれない。そしたらそういう考えにもなるかもだよね。


「そ、それだけは阻止しないと!」


 もう怖いとか言ってる場合じゃない。血眼になって凝視してやるんだから!


『ねぇ輝夜、こんなところでお酒を飲んだら大人の階段、登れそうじゃない?』


『ふふ、未成年ですよ』


 よしっ! いいよ輝夜ちゃん! 断り続けて!


『堅いわね〜。もう少し柔らかければ寄りやすくなるのに』


 キィィィ! なんであんなに距離が近いの! 許せない!


「ブラッディ斬ろう! 今すぐ斬ろう!」


「……落ち着いて。斬ったら取り返しがつかなくなる」


 別に一刀両断するまではいかなくても、ちょっと指切っちゃったよくらいの傷は負わせたい! そうじゃないとこのグツグツと煮えきった黒いエキスが溢れ出そう。


 私はハンカチを噛みちぎりそうな勢いのまま、輝夜ちゃん……というより瞳さんの監視を続けた。

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