37話 仮免試験:後編
「それじゃあ闇宮さん、レッツゴーっす!」
「はぁい……」
闇宮さんの運転が始まった。
私はじっくり後ろから見るんだけど、彼女の運転スキルに間違いはなかった。しっかり基礎を実行できている。理想的と言えるかもね。
普通、こういう試験になると顔が強張ると思うんだけど、闇宮さんはどちらかといえば笑っていた。なんかこう……にたぁ、って感じ。怖い。
「いい感じっすね〜……おっと、喋っちゃいけないんだったっす」
先生にもルールがあるんだ。知らなかった……。
その後、闇宮さんは特に何の問題もなく(私が見た限りでは)運転を終えた。さて、私の番か!
後部座席から降りて、運転席にいる闇宮さんと交代しようとする。
闇宮さんとすれ違う時、目線を感じたから愛想笑いを送ると……
「キヒヒッ! 頑張ってねぇ……」
「え、ど、どうも……」
闇宮さんからエール? をもらった。
ちょっと怖い子だけど、エールはエール。ありがたく受け取っておこう。うん、その心大事!
「それじゃあ森野さん、始めていくっすよ!」
「は、はい!」
ミラーに映った自分の顔はやっぱり強張っている。闇宮さんがおかしいだけ……だよね、うん。
意を決してついに発進させた。先生がメモを取る音が余計に私の緊張度を上げる。
ちょっと気になって外周待ちの時に闇宮さんの顔をミラーで確認してみた。そしたらなんと、私の方を向いてニタァっと笑っている。
なんなんだろう。怖い……。
まぁでも最悪、私たちには用心棒の吸血姫さんがいるし、なんとかなるか。
そんなことより今は運転に集中だ! ここで落ちたらみんなと足並みが崩れちゃう!
外周を問題なく周り、次は坂道へ。ここ、やること多いんだよねぇ。
習った手順通りにやるはずなんだけど、緊張しているとなんだか手順を飛ばしているような気がして不安になる。
窓を開けて踏切の安全確認をしたらふわっと、微かにいい香りが舞い込んできた。これは……輝夜ちゃんの匂いだ!
輝夜ちゃんの成分が微粒子レベルで私の体内に取り込まれている。……よし、これならいける!
落ち着きを取り戻した私はスイスイと進み、S字もさらりとこなしてみせた。
「お疲れ様っす! 結果はメインルームの大型モニターで発表されるっすから、そこに集まってくださいっす」
「はーい。ありがとうございました」
「ヒヒッ! ありがとぉございましたぁ」
必然、闇宮さんとメインルームへ向かうことになる。
話しかけた方がいいのかな? いやでもなんか怖いし……。
「今日はお連れの人たちと別れちゃって寂しいねぇ〜?」
「え? えっ? あ……はい」
話しかけてきた!
「キヒッ! 寂しさもまた愛……いいねぇ」
そう言って闇宮さんはメインルームへ向かう階段から逸れて、どこかへ行ってしまった。
……なんだったんだろう。
メインルームに着くと、そのお連れの中の一人を発見した。
「ブラッディお疲れ〜。どうだった?」
「……私にかかれば余裕」
すまし顔でブラッディは答えた。いいなぁ、その余裕の1%でいいから分けて欲しいよ。
続々と試験を終えた子たちがメインルームに集まってきて、輝夜ちゃんやマリーちゃんとも合流できた。
お昼ご飯を食べていると試験官の先生が出てきて、モニターを動かし始めた。
「それでは今から実技試験の合格者を発表します。この中に自分の生徒番号が記載されていない方は退室をお願いします。……では!」
私の生徒番号は……G2070。あるか……ないか!
「あった! やったぁ!」
とりあえず実技は合格だ〜!
「ふぅ、何とかなりましたね」
「やったデース」
輝夜ちゃんもマリーちゃんも喜びを表している。ブラッディは寡黙だね、流石クール。
と思ったらブラッディは荷物をまとめ始めた。
「ブラッディどうしたの? 筆記試験の会場はここだよ?」
「……落ちた。バイバイ」
「えっ? ちょ、ええっ!?」
あまりにサラッと「落ちた」と言うブラッディ。追いかける間も無く私たちに筆記試験が課された。
……ちなみに私たちは筆記試験も合格。晴れて仮免を取得できました。
……ブラッディ、頑張って!
来週は自動車学校を離れ、スイーツ作りの話をお届けします♪




