33話 初運転:前編
朝起きて、昨日の残り物を使った朝ごはんを食べたら[百合園荘]を出て、私のバイト先であるスーパーマーケットに到着!
そう、ここが私たちの自動車学校から出ている送迎バスの最寄駅なのです!
「ここまで送迎バスが来て助かるね〜」
「そうですね。電車とバスを乗り継ぐとかなり時間がかかりますもんね」
大学からも送迎バスが出ればいいのに〜なんて言ったらお母さんに「学費が増えるでしょ!」って怒られるんだろうな〜。
予定通りの時間に送迎バスが来て、乗り込んだら出発! こっち方面から来る人は滅多にいないのか、私と輝夜ちゃん以外に乗る人はいなかった。
今日、私も輝夜ちゃんも人生初めての運転を経験する。なんとなくだけど、送迎バスのドライバーさんの運転をまじまじと見つめてしまった。お爺ちゃんなのに、すごく俊敏な動き……。私にもできるかな。
「今日は灯と全く同じ日程ですね」
「そうだね、まず学科を受けて、いよいよ運転だね!」
楽しみ〜……と不安が混じってる。ぶつけたらどうしよう。
そんなことを思っているうちにバスは自動車学校に到着した。
運転手のお爺ちゃんにお礼を言ってバスを降りると、すぐそこにブラッディがいた。ゲートいいなぁ、欲しいかも。ど○でもドアみたいなものでしょ?
「……おはよう」
「おはようブラッディ。今日から頑張ろうね」
ブラッディは頷いて同調してくれた。声に出さないということは、ブラッディもそれなりに緊張しているのかもしれない。
「あー! 皆さん、おはようございますデス!」
緊張とは無縁そうな声が響いた。声の主の方へ顔を向けると、明るい金髪が揺れるのが見えた。
「お、おはようマリーちゃん。元気だね」
「はい♪ 運転楽しみデス!」
すごい強靭なメンタルだ……。緊張という言葉を知らないと言わんばかりにテンションが上がっている。
その後私たちは学科を受け、そしてついにやってきました運転講習!
それぞれ1人の先生に対して生徒1人みたいで、輝夜ちゃんたちとは50分間さよならしないとダメみたい。
「じゃあみんな、頑張ろうね。くれぐれも事故ったりしないように……」
「は、はい」
「……OK」
よしっ、それじゃあ運転だ!
私の先生は田中先生。どこかな〜……あ、いた。
「田中先生」と書かれたプラカードを持った女性の元へ向かう。第一印象は……大きい。何もかもが。
「こ、こんにちは」
「ちわっす! 田中っす! よろしくお願いしまっす!」
こ、声も大きい! 身長は180cmは超えているだろうし、胸もバーン! と主張している。何食べたらそうなるんだろう……。
「じゃ森野さん! ついてきてください! 視力は……良いっすね! オーケーっす!」
田中先生について行き、車の前に立った。白くて、少し古臭い……って言ったら車好きの人に怒られるかもだけど、街中を走っているような可愛い系の車ではない。
「んじゃあこれで自動車学校内のコースを運転してもらうっす! まずは助手席に乗ってくださいっす!」
「は、はい」
いきなり運転とかじゃなくて良かった。まずはコースから紹介してくれるみたいだね。
「今日は大外をぐるぐる回るだけでいいっす! んじゃ出発するっすよ〜、ゴー!」
田中先生はまるでアトラクションを運転するようにテンション高く車を発進させた。
「じゃあまず曲がり方のコツっす。ぐっとやって、ウィンウィーンってやったら、シュルルルって戻るっすから、それでオーケーっす」
「……へ?」
何一つわからなかった。この人本当に先生なの!? 感覚派すぎてよくわからない!
「アクセルを踏む時は踵をつけるっすよ〜。ブレーキを踏む時は踵を軽く浮かすっす!」
これはわかりやすいのに……。曲がる時はなんでよくわからなくなるんだろう。
ぐるぐると田中先生が動かす車が2周して、最初の出発地点に戻ってきた。
「さ、じゃあ森野さん、運転してみるっす!」
「は、はい!」
ついにこの時が来た! 私は助手席から降りて、運転席へ向かう。途中、先に運転が始まったらしい輝夜ちゃんと目が合い、ウィンクした。……よし、私も頑張ろう!




