32話 認識阻害
「こんにちは。教材を配りますのでそのままお待ちください」
私たちをこの教室まで案内してくれたスーツのお姉さんが手提げ袋を配り始めた。
前から回ってきたそれの中身を見てみると、教科書みたいなのが入っていた。
「何これ。運転教本と、学科教本?」
「運転教本は自動車の運転について、学科教本は筆記試験の内容についての教科書です。必ず毎回持ってきてくださいね」
「うぇ!? 筆記試験なんてあるの? 運転だけかと思ってた!」
輝夜ちゃんにそう話しかけると、お姉さんの話があるからシーッてされた。私、子どもですかい?
「あと、皆さんの予定に合わせたスケジュールが組まれています。しっかり確認してください」
スケジュール……これか! うわ、結構びっしり入ってる。×印が入っているのが私のバイトの時間だね。
輝夜ちゃんと私のバイトの時間がちょっと違うから、自動車学校のスケジュールもちょっとだけずれちゃってる。
確認するとブラッディと輝夜ちゃんが全部同じで、私はマリーちゃんと全部同じだった。うん、仲良くしよう。
もちろん輝夜ちゃんやブラッディと会えないわけではなく、8割くらいは一緒のスケジュールだったよ♪
「それでは今から適性検査という簡単なテストをします。しっかり答えてくださいね」
うへぇ……テストかぁ。響きだけで嫌だ。
と思ったけど、テスト内容はお勉強というより心理テストみたいな簡単なやつだった。助かった〜〜。
その後は視力検査を行い、無駄に目がいいことが発覚。
そして学科の1という授業を受けて、1日目のスケジュールは終了!
「お疲れ様〜! 明日から運転か〜。ドキドキするね」
「そうですね。自転車に初めて乗る時を思い出します」
自転車に初めて乗る輝夜ちゃん……見てみたい。タイムトラベラーになって見たい!
「灯さんとは同じ日程デスね! よろしくお願いしますデス!」
「うん、よろしくね、マリーちゃん」
……マリーちゃん? マリー……匂い好き……どこかで引っかかるな。何だろう。
「……灯、帰る」
考え込んでいたらみんな自動車学校の外にいた。容赦ない!
「はーい! 今行く〜」
私は少しの胸のつっかえを持ったまま、家に帰ったのです。
……って、つっかえたままでは終わらせられない!
「灯? 何か考え事ですか?」
「あ、わかる?」
「どこかうわの空だったので。いつもはもっと真剣にがっついてくるのに……」
「あ、ごめんね。物足りなかったかな?」
時刻は午前1:00。ちょうど輝夜ちゃんとの日課を終え、寝ようかという雰囲気になった頃。
「物足りないことはないですよ。ただ……シている時は私だけを考えて欲しいな、と」
ちょっと恥ずかしそうに、輝夜ちゃんは訴えた。
何この彼女、可愛い。
私は猛省した。こんな可愛い彼女との時間に他の女のことを考えていただなんて。そんなの良くない!
「ご、ごめんね……」
「それはいいです。それで? 何を考えていたのですか?」
「えっとね……今日……いや昨日か。マリーちゃんに出会ったでしょ? でもなんか初めましてじゃない気がして」
「ふむ……灯も同じでしたか」
その言葉にびっくりする。考え込んでいて下を向いていたけど、自然と視線が芸術作品みたいに綺麗な輝夜ちゃんに向いた。
「輝夜ちゃんも会ったことある気がするの?」
「はい。どこで会ったのかは覚えていませんが……」
絶対に[星乃川第一高校]の生徒ではない。あんな可愛い子がいたら注目を浴びるのは間違いないからね。
だとしたらどこだろう……ううっ、考えようとすると頭の左の方がズキズキと痛む。
「マリーちゃんに直接聞いた方がいいかなぁ」
「そうですね。その方がいいと思います」
「じゃあ明日……いや今日か。自動車学校で聞こう!」
本人に聞けば分かることだと思うしね。
……あれ? でも初めましてって言ってたしなぁ。
謎を謎のままにしたくはないけど、今日は朝から自動車学校がある。寝坊したら大変だからと、輝夜ちゃんに諭されて寝ることにした。
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