31話 集う変態たち
8月6日。暑いったらなんの。嫌になりそうなところだけどとりあえず気合いでここ、[星乃川自動車学校]にやってきました!
今日はここで入校式です!
「ちょっと遠いけど、[百合園荘]近くのスーパーまで送迎バスが来てくれるってのはいいね!」
「そうですね、ちょっとしたVIP気分です」
ちなみにブラッディさんは『ゲート』で直接移動するから送迎バスはいらないそうです。っていうか住所も明らかに偽装していたし……大丈夫なのかな。
そんな心配をよそにブラッディが合流した。いつもの3人で免許を取ることになったね。
「では入校式を行うので対象の生徒さんは2階5号室へお願いしまーす」
スーツを着た女性スタッフの後について教室へ。
自動車学校の教室ってどんな感じだろうって思ったけど、なんか大学の教室とそんな大差ないかも。高校とはまた違うね。オフィス寄りというか、なんというか。
私たちは3人掛けの席に輝夜ちゃん、私、ブラッディの並びで着いた。
「えっと……入校式は15分後だね」
「まだ時間ありますね。お手洗い大丈夫ですか?」
「うん、平気」
そんな何気ない会話をしていると、教室前方から金髪の美少女が入ってきたのを確認した。私の美少女センサーはすごいよ! 普段輝夜ちゃんという美少女で鍛えられているだけあって、すぐに反応しちゃうんだから!
「幼……女!?」
ガタッとブラッディが立ち上がった。
たしかに見た目はかなり幼い。でも自動車学校に来ている時点でおそらく同世代以上なんだから幼女ではないと思うんだけど……。
そんな美少女ちゃんはテクテクとこちらに近づいてきた。どうやら1人みたいだね。私たちの前の席が3つとも空いているからそこに座るのかな?
私の予想通り、その美少女は前の席に座った。近くで見るとちょっと顔が異国風だった。ハーフさんかな?
後ろ姿をまじまじと見ていると、突然その美少女が振り返った!
「こんにちは! デス!」
「ここ、こんにちは……」
突然のことでびっくりした……それにしてもまったく知らない人と知らない空間で話しかけるなんて、この子のコミュニケーション能力はどうなってるの?
ちなみに輝夜ちゃんはいつも通り、ブラッディは鼻息荒く興奮冷めやらぬという感じだった。ステイ、ステイだよ、ブラッディ。
「私、松花マリーと申しますデス! お友達は先に免許を取っていたので、1人ぼっちなのデス! よかったらお友達になってくださいなのデス♪」
おおっ……ちょっとだけカタコトだ。別に気になるレベルじゃない。むしろ語尾の「デス」の使い方のほうが気になる。
「私はブラッディ。末永くよろしく」
そう言ってブラッディはマリーちゃんの手を両手で包んだ。なに求婚してるの……。
「はい♪ よろしくデス!」
マリーちゃんの無垢な笑顔。それはブラッディを射殺すのに十分だったようで、ブラッディは溶けてなくなってしまった。
「よ、よろしくねマリーちゃん。私は森野灯。こっちはブラッディで……」
「私は美山輝夜です。よろしくお願いします」
「はい♪ 灯さんに、ブラッディさん、輝夜さん! 覚えたデスよ〜♪」
なんだか不思議な子。ポワポワしてて、すっごく女子って感じ。お花とか似合いそう。
「ところでこの教室、いい匂いするデス!」
「えっ……そうかな? する?」
「いえ……普通の多目的室という匂いですが」
「はぁぁ〜♡ 私、こういう匂いが大好きなんデス! 部屋の匂いと女の子の匂いが混ざって……キャッ!」
……なんだろう。この……どっかで見たことあるような、個人的にそこそこの恨みを持っているような感じは。
記憶のどこかに刺さっている小さな棘を抜いて、マリーちゃんに向き合うことにした。
「ヒヒッ! 愛……愛だねぇ……」
後ろにいる怖い少女のことに気がつくまで、あと5日。




