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23話 一人旅

 灯たちを蕎麦屋に置いて、私は1人山梨の街を歩いた。

 振り返るとそこそこの行列ができている。あれは1時間以上はかかる。なら、私は行きたいところに行かせてもらおう。


「『(アーラ)』」


 人気のないところで翼を生やし、飛翔。どうかバレないようにと思いながら飛ぶけど、たぶん大丈夫。私はそこそこ運はいい。


 降り立ったのは深い森に囲まれた場所。身延市と、アニメでは行っていた。私が好きなキャンプアニメの聖地となっている。


「……ふぅ」


 全力を出して甲府市から飛んできたから疲れた。……5分だけ休もう。そう思って川の見える絶景スポットから市を一望した。


「うっ……うっ……」


「……え?」


 なんか泣き声がする。心霊スポットだった? いやそんな話聞いてない……。

 だ、大丈夫。幽霊なんてその気になれば斬れるはず。私に斬れないものはない……。

 近づいてくる泣き声。私はそっと剣を背中に隠し持つ。


「……お姉ちゃん誰?」


「……幼女」


 そう、幼女だった。幽霊でなく、幼女。

 その幼いルックスと泣き顔がマッチしており、まだ一度も染めるという経験をしたことがないであろう黒髪は艶かしくも映る。そして私的にポイントが高い靴。歩くと音が鳴るタイプをついに卒業し、スニーカーを履き始めた背伸びをする年頃。間違いない、私のもっともドストライクな幼女だ。(早口)


「よう……じょ?」


 幼女はキョトンと首を傾げる。しまった、幼女に向かって幼女というのはいただけない。


「なんでもない。何で泣いているの?」


 私は下心を全力で隠して問うた。幼女は泣き顔を我慢しつつ、頑張ろうという意思を見せる。私が信頼に足る者だと思ったのだろうか。


「お母さんがいなくなっちゃったの……」


 なるほど。つまるところ、迷子。ただ自分から迷子というのは少し恥ずかしいというプライドも芽生え始めた頃。やはり良い。この大人に見られたい、背伸びをしたいという幼女特有の願望が私の顔を緩ませる。いつかバフォメットに頼んで人類みんなを幼女にする魔法を作ってもらおう。(早口)


「そう。なら……一緒に探す?」


「いいの!?」


「うん。暇だし。ここの子? 名前は?」


「私は東京から来たの。名前は凛」


 私と同じ観光客で、名前はリンか。この子のお母さんを探す魔法があれば話は早かったけど、そう都合のいい魔法はない。地道に探すしかないか。


「ならリン、探しに行こう。でもその前に……」


「うん?」


 私はリンと手を繋いでとあるまんじゅう屋さんに来た。ここは私の好きなアニメのキャラクターたちがまんじゅうを買いに来たお店で、キャラクターの看板も置かれていた。うん、いい。実際にキャラクターたちが座っていた椅子もある。


「……すみません。まんじゅう1つ」


「あいよ〜。70円ね」


 ……安い。これならもっと買ってもよかったかも。私は悩んだ挙句、注文を4つに変更した。


「お姉ちゃんおまんじゅう食べるの?」


「ううん。リンが食べる」


「私が?」


 困惑気味のリン。それもそうかと思う。初めて会った人(?)にまんじゅうを突然奢られたら困るだろう。


「じゃあいただきま……」


「あ、待って」


「うん? どうしたの?」


「店の外のベンチで食べて欲しい。いい?」


「いいけど……」


 お店から出て、ベンチに移動した。

 リンは座ってすぐにパクッとまんじゅうに噛み付く。唇でハムハムしている姿が実に愛らしいと言える。これは女性になった者ではできない芸当。「幼女」だからできること。うん、幼女はいい(早口)


「美味しい!」


「そう。蛍の光、歌いたくなった?」


「……? 何それ?」


「……なんでもない」


 そう作品通りにはいかないか。と少しだけ肩を落とす。

 ベンチから見られる景色はとても良いものだった。キラキラと輝きながら流れる川や、雄大な自然が一望できる。あのキャラクターたちはこれを見て育ったのかと思うと感慨深い。


「あ、お母さん!」


 リンが突然立ち上がり走っていった。どうやら親が見つかったらしい。気がつかなかったけどここは大きな駅の側だった。見つかる可能性は一番高かったか。偶然だけど。


「ありがとーお姉ちゃん!」


「……うん」


 私はそっと微笑み、手を振った。

 少しほっこりした気持ちでまた人気のないところへ足を運ぶ。


「……戻ろう。『(アーラ)』」


 私の奇妙な一人旅は、これにて終了した。

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