17話 ブラッディの憂鬱
……おかしい。
何がおかしいかと言うと、最近私のパートが少ないことだ。確かに灯や輝夜のアルバイトも重要だろう。でも……私の出番があまりに少ない。というかほとんど無い。
「……と、言うわけでどうにかしてほしい」
「わざわざ家に来て何なの。あと出番って何!」
灯の家に来てみたら何か解決するかと思った。だから来てみたんだけど……あんまりよい返事は期待できそうになかった。
「輝夜も考えてほしい」
「いや……私も出番がどうとかはよくわからないのですが……」
ふぅ、灯と輝夜からいい返事が返ってくることはなさそう。だけど諦めるわけにはいかない。この状況を何とかしないと。
「とりあえず……ブラッディが活躍できる環境を考えてみたら?」
何となく灯が発した言葉。こういうのが案外的を射ていたりする。
「私が活躍できる環境……戦闘?」
「まぁそうだろうけど、今はそんなのないから!」
「大学にテロリストが乗り込んできて、私が無双して追い払うとか」
「中学生の妄想か!」
……むぅ、ままならない。この世界……特に日本はあまりにも平和すぎる。ほとんど争いが起きないと言ってもいい。些細な喧嘩はよく起こるけど、私が介入するレベルのものではない。
「そういえば、ブラッディはまだ魔法が使えるんですか?」
「もちろん。私は生まれつき魔法が使えるから。人間の灯たちとは違って……ん?」
「どうしたの?」
そうか……そうすればいいのか。
「灯、輝夜。手を出して」
「……え? いいけど」
「はい、どうぞ……」
素直に手を伸ばしてくれる灯と輝夜。さすが親友、まったく疑いの気持ちも持たずに手を差し出してくれた。
私は2人の手を取り、魔力を流し込む。
「え、えっ!? これって……」
「魔力……ですよね?」
「うん。譲渡可能」
魔力は人によって固有のものではない。入った器によって性質は変化しても魔力そのものが変化するわけではない。つまり、魔力を有した灯たちの身体は魔法少女時代のことを思い出すはず。
「灯、輝夜。変身してみて」
「うっ、嘘? なれるの?」
「信じられませんが……やってみましょう!」
半信半疑ながらも、ちょっと嬉しそうな2人。
「「マジカルインストール!」」
2人が叫んだ瞬間、体が眩く発光し始めた。灯には桃色の、そして輝夜には青色の衣が包まれる。
「うわぁ……! 【ハニーランプ】だぁ!」
「こっちも……【ネイベルナイト】です!」
正真正銘、魔法少女の体になった2人。やっぱり器となる身体は魔法少女時代の魔力を覚えていたか。
「……うん、何だか懐かしい気分」
私は素直にそう言った。とても懐かしい……色々な思い出が詰まった光景だ。
「おいっす〜。明後日の清掃のことなんだけど……」
「あ、守屋さん……」
「ご、ごめん。邪魔したかな」
「守屋さーーーん!!」
灯たちの格好を見て一瞬で引き返した女性。大家の守屋さんだっけ。
「終わった……完全にコスプレイヤーだと思われた……」
「ま、まぁいいじゃないですか。遊んでいたということで」
魔法を使うところを見られるよりは全然マシだろう。
「それで? 私たちに魔力をくれたのはいいけど、何をする気なの?」
「暇だから魔導国に行って戦う。2対1でいい」
灯と輝夜を足してちょうど私くらいだろう。
「え〜、でも私たち、かなり強くなったよ?」
「そうですよ。【バフォメット】を瞬殺できるくらいには強くなりましたよ?」
「……そうだっけ?」
だとしたらマズイかも。【バフォメット】瞬殺クラスが2人だと分が悪い。私の勝ち目は薄くなる。
「……なら1対1対1に変更」
我ながら情けない話だけど、まぁ仕方ない。2人にボコボコにされる方がカッコ悪いし。
「じゃあ魔導国に行く。ここなら空間も裂けるかな」
「あ、良かった〜。この格好で外に行かされるのかと思った」
「そんなことしたらもう、この辺りで生きていけないですよ……」
何でだろう。別にその格好は可愛くていいと思うんだけど……。人間の感性やら価値、判断基準は未だによくわからない。
「えい」
右腕を思いっきり振り上げて空間を裂く。そうすればゲートの完成。
「じゃあ、行こうか」
これで私の出番も増えるはず。輝く機会も増えるはず。……うん、ちょくちょくこの遊びを取り入れよう。灯たちも今のところ楽しそうだし。




