14・秋月型と出撃
昨夜、秋月型4人は旗風に興味津々だった。そりゃ、同じ防空艦だから、興味があるのは当然。4人で旗風に出向いて電探類や12.7センチ砲の話を聞いていたらしい。
「旗風さん、良いですね。物凄く充実した装備でした」
出撃前の一時、凉月が羨ましそうに感想を述べていた。
「でもさ、私達が優ってる点もあるよ?旗風さんは、大型電探を積む代償に高射装置が一基しか装備できないんだから」
冬月はそう言って胸を張っている。
「電波信管って、こうやれば出来そう」
「え、私もやってみる」
秋月と照月は何やら俺の理解の外な行動をやっている。
秋月と照月の行動を眺めていたらタブレットが鳴り出した。
「はい、古河です。女神さま、どうかしましたか?」
「古河さん、どうやら秋月さんが電波信管の召喚に成功したみたいです。神さまのお戯れを選択していないにも関わらず、限定的に発現することが今後も起きるかもしれません。特に悪影響は無いと思いますので、必要な時にお試しください」
まあ、結構な事じゃないか?因に、松型は自分では出せなかったが、旗風と砲弾に互換性があることが分かり、信管の融通を受けることが出来た。あ、金剛もちゃっかり受け取っていた。どうやらイージス艦とは砲弾や信管に全く互換性が無いらしい。
「さて、では、今日は秋月型は金剛と共にアハペナンマー方面へ掃討戦を行う。出撃準備」
松型はアバチャウン、オヤモッテ間の警備と哨戒。青葉と島風は航路上の哨戒と掃討。旗風はオヤモッテで留守番となった。
クラーケンは一度掃討したから出てこないという魔物ではない。地上の魔の森が常に魔物を産み出すように、何処かに魔の海が存在し、今もクラーケンや魔船を産み出しているわけだから、必ず出没する。魔の海が近ければ数も多くなる事が予想される。
その為、留守番といっても非番ではない。魔物の警戒はしないといけない。
「さて、では、出撃」
青葉と島風は既に出撃した。さすがガスタービンは始動が早い。
それを追うように松型も出撃していく。
「旗風、今日は頼む」
組合で帰還者を募集しているから早ければ数日中にはやって来るだろう。今、島に居るのは魔物探索と島の調査を行う組合員数名だけだ。
オヤモッテからアハペナンマーまでは我々で2日か3日、帆船なら1週間近いと思う。まだまだ距離がある。出来ればアハペナンマー近くにも泊地が出来ると有難いが、今はまだ先の話だ。今日は日帰りの予定なのであまり進めない。明日からはこの日帰り範囲を一月ほど哨戒と掃討を行う予定。
「こちら冬月、水中音を探知」
冬月と照月が周辺捜索に向かう。
しばらく2隻はゆっくり航行を続けたのち、同一方向に主砲を向ける。
「照月、魔物と思われる物体を探知」
更に2隻で範囲を狭めていく。
「冬月、威嚇発砲いきます」
ドンドンと2回発砲が行われ、海面に着弾した。
すると、海中からクラーケンの足が姿を現す。冬月はすぐには撃たずに待ちの状態。クラーケンは一度海中に姿を消したが冬月に接近して完全に姿を現した。
冬月は狙い済ましたように主砲を撃ち込む。
ドンドンドンドンドンドンドン
「金剛、秋月型って機関砲が主砲だっけ?」
見ていると機関砲に見えてしまう程の連続射撃だった。
「水上目標に交互撃ち方やってるみたい。全門を連続射撃で痛めないように休ませながら撃ってるね。きっと、昨日の夜、旗風に教えてもらったんじゃないかな」
旗風は5門、秋月型は8門、口径は小さいが3門増えるから威力は高いはず。
そんなことを考えている間に冬月はクラーケンを倒した。
「凉月、水中音探知」
「秋月、電探に感」
「金剛より、秋月、それ、魔物だよ」
戦後のレーダーを積む金剛はクラッター処理も出来るから精度が高い。しかも魔物検知機能が付いてるから判別も早い。ただ、戦艦だから水中の魔物は見つけられないし、発射速度や艦の運動性の問題で積極的には動けず、指揮艦の役割が多い。
凉月と秋月がそれぞれ別の方向へ向かう。
秋月の側面に躍り出たクラーケンはわずか3斉射で倒された。そして、後ろ2基を凉月の方向へ向けながら、前2基を反対に向けたまま警戒をおこなう。
凉月が冬月同様の方法でクラーケンをあぶり出すと秋月の後ろ2基が飛び出したクラーケンを叩く。凉月も8門を叩き込む。それでほぼ決まりだった。
「照月、新たな水中音」
照月はクラーケン2体に狙われたが分火射撃と冬月の支援でこれを撃退した。「明らかに松型じゃ比較にならんし、旗風にも優るなこりゃ・・・」
2隻づつがペアを組んでいることもあって物凄く効率が良かった。
結局、1日で30体のクラーケンを倒し、魔船1隻を文字通り粉砕した。
これだけ倒したとしても、1か月も放置すれば元に戻ることはアバチャウン周辺で分かっている。つまり、近くに魔の海がありそうなのだが・・・




