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キスメット 【第7章まで完結】  作者: くにざゎゆぅ
【第二章】 文化祭編
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第48話 エピローグ ほーりゅう

「文化祭、終わったねぇ」


 そろそろ、暖かい陽射しを浴びても肌寒く感じる屋上に座り、脚を伸ばした上に広げたお弁当を食べ終わったわたしは、大きく伸びをした。

 これからは、雨の日にだけお弁当を食べるために使っている自習室で、昼休みを過ごすことになりそうだ。


「ねえ、ジプシー。演劇部の勧誘がすごいんだって? あれからずっと逃げ回ってるって明子ちゃんから聞いたけれど」


 わたしは、柵越しにぼんやりと街並みを眺めているジプシーに、声をかけた。


「演劇部のひとたちって、男としてのジプシーが欲しいんだろうか? それとも女装したジプシーが欲しいんだろうか?」


 続けたわたしの言葉に、ジプシーは、とっても嫌そうな目を向けてきた。


 そして、あれから千葉くんは本当に、一躍時の人となった。

 本人が、わけもわからないままにモテているけれど。

 でも、あの様子では、後夜祭にでたのが千葉くんではないとバレるのは、時間の問題かな。


 そして、もうひとり。

 文化祭の直後から、とてもモテはじめたのはジプシーだった。

 舞台のジュリエットを観たひとから、それも男女を問わず、毎日ラブレターが届くようになってしまった。

 それは、机のなかに入っていたり、校門で待ち伏せされて渡されたり。


 毎日届く手紙が、いい加減一日で二桁を越すようになるころ。

 騒がしさを嫌うジプシーのためにだろうか。

 ある日、わざわざクラスメートが見ている前で、京一郎が大きな声をだした。


「お、ジプシー。手紙が毎日たくさん届くなぁ。それっておまえ、全部どうしてんの? 護摩木の代わりに燃やしてんだろう?」


 とたんに、一斉にその場が凍りついた。

 それからは、ばったりと手紙が届かなくなった。

 さらには、いままでの手紙を返してくれと泣きついてきた男子もいたらしい。


 でも京一郎も、もっとマシな言い方があるのになぁ。

 これじゃあ、もともと変人扱いだったジプシーが、ますます怪しい人だと思われちゃうよ。


 そんなことを考えながら、わたしもジプシーと同じように、ぼんやりと遠くの景色を眺めながら日向ぼっこをしていたら。

 ふと思いだしたかのように、突然京一郎が、わたしに向かって口を開いた。


「なあ、ほーりゅう」

「? なに」


 真剣そうな表情の京一郎をみて。

 これって、いまから真面目な話がはじまるんだろうかと、わたしは身構える。

 なんだろう?


「とりあえず、文化祭も終わったことだし、期末試験に向かって勉強するか?」

「え? 期末? 試験なんて、まだまだ先じゃん!」


 抵抗するように叫ぶわたしへ、京一郎はドスをきかせた声をだした。


「おまえの前回のペースをみていたら、いまからやらねぇと試験範囲が終んねぇんだよ! 大きなイベントが終わったことだし、今日から学校がひけたら試験勉強はじめるぞ! この俺さまが責任持って、みっちりと叩きこんでやるからさ」


 京一郎と、そして夢乃とジプシーに囲まれて、逃げ場のないわたし。

 しぶしぶうなずきながらも、わたしは心のなかで叫んだ。




 みっちりと試験勉強だなんて。

 そんなの、いやだぁ!



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