❄54:一緒に親子に。
◇◇◇◇◇
力いっぱい寝ていたことにハッと気付きました。
慌てて起き上がり周囲を見回すと、私の隣にはすやすやと眠る赤ちゃん。
足元近くには、ベッドに上半身を乗せた状態で倒れるようにして眠っているランヴェルト様。
――――力尽きてる?
軽く寝ぼけていましたが、徐々に現実を理解。
そうでした、産まれたんでしたね。
「ハブリエル」
すやすやと眠る息子の瞼は白銀に縁取られてキラキラと輝いています。
そっと名前を呼ぶと、胸がじんわりと暖かくなりました。
「素敵な名前、付けてもらえたわね」
ふにふにとしたほっぺをツンとつついていると、小さな手で人差し指をきゅっと握りしめられました。
小さな命。
懸命に生きている命。
初めての子育て。
ちゃんと出来るか不安ではありますが、今日から――――。
「一緒に、親子になっていきましょうね」
そうハブリエルに囁くと、ベッドの足元で事切れたように眠っていたランヴェルト様がガバリと起き上がり、焦ったように枕元まで移動して来られました。
「私もっ、共に!」
「もちろんですよ。ふふっ」
今日一日で、ランヴェルト様の可愛いところを沢山見ることが出来ました。
きっとこれからは、素敵なお父様の姿を見せてくれるのでしょう。…………きっと。
今は無言でハブリエルの頬をツンツンツンツンツンツンしているだけなので、ちょっと不安ですが。
「凄い。どこも柔らかい」
「あまりツンツンすると起きてしまいますよ?」
「むあっ…………ん」
ランヴェルト様が慌てて手を引っ込めると、今度はベッドに両肘をつき、姿勢を低くしてハブリエルの顔を覗き込んでいます。
ニコニコと微笑み続けており、『氷の貴公子』の渾名が泣いていそうです。
「あっ! 目がひらい――――泣き出したぞ!? どうしたらいい!?」
「っ、あははっ! あははははは!」
ランヴェルト様があまりにも慌てふためくので、ちょっと本気で笑ってしまいました。
止まらない笑いを我慢しつつ、ハブリエルを抱き上げて、胸を差し出します。
少しくらいはわかるのです。教育はちゃんと受けていますから。
「凄い! ちゃんと飲んだ」
産まれたての赤ちゃんでも、しっかりとお乳を吸うことはできるのです。本能に備わっているのだとか。
そもそも、眠る前に少し授乳していたはずですが。
「その…………けっこうパニックに陥っていて、ちゃんと見ていなかったんだ。惜しいことをした」
何がどう惜しいのかわかりませんが、ランヴェルト様は子育てに協力したい派のようでした。





