❄40:今後のこと。
終わらせると決めて、ランヴェルト様が先ずしたことは、国王陛下と宰相様と王弟殿下――お義父様への報告と許可取り。
そして、隣国に戻ったアーデルヘイト嬢の母親への連絡でした。
国同士の問題や、たとえ気が狂っていても母親としての愛情が多少あるのかと思っていたのです。なぜなら、事件があった当初にアーデルヘイト嬢の命は助けてほしいという嘆願をしていたそうなので。
「一週間もしないうちに、届くものなのですか?」
隣国側から届いた返事は『私の関知するところではない』という、とても冷たい文書でした。
「いや、異例中の異例だな」
アーデルヘイト嬢の母親は降嫁したとはいえ元王女です。
ランヴェルト様の予想では、国に呼び戻し事情聴取することが先決だったこと、国の印象操作の必要性もあり、アーデルヘイト嬢の命を助けたがっているふりをする必要があったのではないか、ということでした。
「あちらも自国の王族の血を引くあの女の処分をどうしたらいいのか、迷いに迷っていたのだろう」
「渡りに船、といった感じだったのでしょうか?」
「たぶんな。それくらいに早い。早すぎる」
そもそも、彼女の母親が自国に連れ戻そうとしていなかったことからも、ずいぶんと前から切り捨てられていたのかもな、とランヴェルト様が苦笑いされていました。
少しかわいそうな気もしますが、犯した罪を考えると、妥当といえば妥当なのでしょう。
「賛否両論はあろうが、一人の命で国を危険に晒せない。そういうものだ」
「…………」
「幻滅した?」
「いえ」
それぞれ抱えるものが大きすぎて、一介の伯爵家の娘の感覚では考えが及ばないことが多いのだろうなと。
色々とお話を聞かないとわからないことが、まだまだ沢山あるようです。
「このあとの流れとしては――――」
アーデルヘイト嬢や他のご令嬢たちから受けた迷惑行為に対しての被害届けの提出。
そして起訴するとのことです。
「これから忙しくなるし、嫌なことも聞かされるだろう。最後まで、付き合ってくれるだろうか?」
「はい。もちろんです」
少しだけ不安そうな表情になっていたランヴェルト様。ハッキリと大丈夫だとお伝えすると、ほっとした表情になられました。
そのお顔を見た瞬間、なぜだか胸がぎゅっと締め付けられます。
たぶんときめきなのでしょうが、どういう理由で起こるのでしょうか?





