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8月6日(木曜日)コミケの設営現場

 コミケ開催が明日に迫った木曜日。

 俺と音水は日本最大の展示場、東京ビッグサイトに来ていた。


 ここでは毎日のように、さまざまな展示会やイベントが開催されている。

 華やかなイメージがある一方、準備段階のフロアはまさに修羅場だ。


 その様子を見た音水は驚きの声をあげた。


「わわわ……! なんかすごい! まるで工事現場ですね」

「足元に気を付けろよ。ガチで怪我をするぜ」


 俺達は今、コミケの企業ブースが設営されるフロアに来ていた。

 明日の開催に向けて、作業員たちが必死に働いている。


 今日の俺たちの目的は、ブースの進捗状況の確認だ。


 ザニー社のスペースに行くと、ずんぐりむっくりな体型をした五十代の男性が作業をしていた。


「おやっさん。お疲れ様です」

「ぁあっ!? 笹宮じゃねえか! てめぇが担当かよ! チッ!」

「今回は補佐で入っているだけなんですが……」

「けっ! てめぇが絡むと、きまってオレの調子が悪くなるんだ! ったく! かっ! チッ!」


 この常時ケンカ腰の人がブースの設営業者さんだ。

 親しみを込めて、俺はいつも『おやっさん』と言っている。


 乱暴な態度のおやっさんは俺に向かって叫んだ。


「おらッ! 進捗状況を知りたいんだろ。もっと、こっちこいッ!」

「ありがとうございます。これ、差し入れのお茶です」

「けっ! ごますってんじゃねぇぞ。ったく! ありがとよッ!」


 怒っているようで感謝の言葉をいうツンデレなおやっさんをみて、音水は不思議そうな顔をする。


「笹宮さんって嫌われているんですか? 好かれているんですか?」

「この人は年がら年中、こういう喋り方なんだ」


 ブースの設営状況は順調のようだ。

 これなら明日は思う存分、コミケに集中できるだろう。


 事前の準備でトラブルがあると、開催直前まで作業をする時があるからな。

 別の展示会で一度だけあったが、あの時はひやひやしたぜ。


 ん……? なんだ、アレは……。


 ザニー社のブースから近い所に、際立って派手なブースがあった。

 大きさもさることながら、大型ディスプレイを所狭しと取り付けている。


 お台場の等身大ガンダムかと思ったぜ。


 おやっさんは派手なブースを見ながら、ペットボトルに入ったお茶を飲んだ。


「けっ! 大手は変わったブースを建てたがるからな。だが、注目度は確かにたけぇ。ありゃ、かなり客を持ってかれるぜ」


 今回ザニー社は初めてのコミケということで、与えられた場所が悪い。

 コミケ受けするキャラクターを持っていないのも痛手だ。


 加えて、近くにあんな派手なブースを建てられたら、集客はかなり厳しいものとなるだろう。


 音水は不安気な様子で、俺に近づいてきた。


「笹宮さん。もしかしてザニー社のブースって不利なんですか?」

「正直、きついな」


 企業ブースは競争ではないが、ここでしっかりと存在を示せるかどうかは今後に関わる。


 なにより、あの楓坂が真剣に向き合ってきた仕事だ。

 成功させてやりたい。


 なにか手があればいいんだが……。


 ふと気づくと、隣に立っている音水がキラキラした瞳でこちらを見ていた。


「……おい。……なんだその目は?」

「笹宮さんなら、こんな状況をひっくり返すような逆転アイデアを思いつくんじゃないかって」

「できるか」


 以前からそうだが、音水は俺を過大評価しすぎだ。

 確かにトラブル回避で俺は評価されているが、特別なことはできない。

 営業成績も突出して高いという事はなかった。


 なのに音水は俺にヒーローを求めている。

 期待に応えたいとは思うが、残念ながら俺は凡人だ。


 ここで音水は自慢げな表情を作り、ずぃ~と近づいた。 


「んっふふ~。実は私にナイスなご提案があるんですけど、ひと口どうですか?」

「自信がありそうだな。聞かせてもらおう」

「コスプレで呼び込みなんてどうでしょう。きっと注目を集められると思いますよ」


 今回のイベントでスタッフはユニフォームを着用するが、デザインは至ってシンプルなものだ。

 他の展示会ならそれでいいが、コミケなら確かにコスプレは有効だろう。


 しかし、いったい誰がコスプレをするんだ?

 楓坂は絶対にやらないぞ。


 だとすれば……。


「なぁ、音水。もしかして、お前がコスプレするとか言い出すつもりか?」


 すると彼女はここで奇想天外なことを言い始める。


「もうっ! 笹宮さんに決まってるじゃないですか。やだなぁ~!」

「……。……正気か?」

「ちなみにコスプレは、ゴスロリメイドでキツネ耳&キツネしっぽということで」

「ちょ……、あのさ……。音水って俺のこと嫌いなのか……」

「むしろラブな感じですけど」

「悪意しか感じない提案なんだが?」


 忘れていたが、ザニー社の昔のゲームにキツネ耳のゴスロリメイドがいたんだっけ。

 しかし、そのコスプレを俺にやらせようとするか?


 さすが音水、油断ならない後輩だ……。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、本当にうれしいです!


次回、コミケ一日目はラブコメハプニング!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*'ワ'*)

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― 新着の感想 ―
[一言] ささみーのキツネ耳のゴスロリメイド?ちょっと見たい。 音水ちゃんのキツネ耳のゴスロリメイドは、ものすごく見たい。 楓坂ちゃんのキツネ耳のゴスロリメイドも、ものすごく見たい。 結衣花ちゃんの・…
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