表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

蘇芳6

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

 光明は、陰陽師である加茂保行(やすゆき)と妻の昭子(あきこ)の間に生まれた。保行は、自分の意見を主張するのが苦手な性格で損をする事もあったが、勤勉で知識が豊富な為、暦博士として宮中で仕えていた。

 妻の昭子は、一言で言うと、とんでもない女だった。漢文や天文学の知識が豊富なばかりか、呪術まで使えた。男を立てない女として、貴族の間では良く思われていなかったが、光明はそんな昭子を尊敬していた。


 光明は、昭子のようになりたくて、必死に勉強した。昭子も、光明にあらゆる知識を教えてくれた。光明が十二歳になってからは、呪術も教えてくれるようになった。昭子の指導は厳しかったが、光明は幸せだった。


 しかし、光明が十七の時、昭子は病に倒れた。そして、昭子が床に臥せるようになって一年経ったある日、光明は、保行と昭子が二人で話しているのをこっそり聞いた。

「……保行様、私はもう長くない」

「……そんな事は無いと言っても、意味は無いのだろうな……」

「私は幸せだったよ。優しく賢い夫や可愛い息子に恵まれた。光明の将来も心配ないだろう。私より小賢しい人間に育った」

 昭子は苦笑した。


「……あの子は、あなたの跡を継いで暦博士になるのかな」

「本人はそのつもりのようだよ。今はまだ暦生だけど」

「私は、いつも『知識は人生の選択肢を広げる』と言って光明に勉学を教えてきた。……私は、間違っていなかったかな。光明の選択肢を広げる事が出来たかな」

「ああ、間違っていない。光明は、自分の人生を自分で切り開けるくらい立派に育った」

「ありがとう……」

 昭子は、ぼろぼろ泣いた。昭子が泣いている姿を見るのは、初めてだった。

 それから一か月後、昭子はこの世を去った。


 光明が目を覚ますと、杠葉がほっとした顔で光明を見ていた。辺りを見回すと、紅玉も部屋にいる。ここは、どうやら光明の屋敷のようだ。

「……私が気を失ってから、どれくらい経ちましたか?」

「一日も経っていません」


 紅玉の話によると、師宣は無事検非違使に引き渡されたらしい。そして、師宣は普段から光明が気に入らなくて、呪詛を教える際光明の姿を借りたという話も聞いた。

「蘇芳という名を使ったのは、加茂光明の名を使うとかえって正体が露見するかもしれないと思ったからだそうです。師宣は、本物の蘇芳の事を知っているわけでは無く、呪術を使う蘇芳という女がいると言う噂を聞いただけで、その名を使う事にしたようです」

「そうですか……」


 それから、師宣の余罪の数々も聞いた。芦原麗子が夫を呪詛した件にも、師宣が関わっていたらしい。

「……蘇芳の名を聞いたら、懐かしくなりました。……本物の蘇芳は今どうしているのか……」

「彼女は、三年前に亡くなりました」

「え?」

「家族を残して逝くのは無念だったでしょうが、それなりに幸せだったようですよ。彼女の息子も、多少捻くれて育ちましたが……まあ、元気にやっています」

「先生、あんた……」

 紅玉が目を見開いた。

「今度、詳しく話をしましょう」

 目を細めて、光明は笑った。


よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ