蘇芳4
実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。
「なかなか有益な情報が得られませんね」
時子が言った。光明が命を狙われた三日後、光明、紅玉、時子、直通の四人は、町に集まっていた。『蘇芳』が町に現れた事があると聞いたからだ。
「そうですね。杠葉に偽蘇芳の気配の跡が無いか探ってもらっていますが、まだ何もわかりませんね」
光明が言うと、人間の姿の杠葉が頷いた。人間の姿ではあるが、今杠葉の姿は普通の人間には見えないように細工してある。
「しかし、お前には驚かされます」
光明が紅玉を見て言った。
「商人と絹や稲を用いた取引について話し、あんなに盛り上がるとは」
偽蘇芳について、商人にも聞き回っていた。
「お前、商いの知識まで師匠に教えてもらっていたのですか?」
「はい、あらゆる分野の知識を叩き込まれました。……師匠は、よく言っていました。『知識は、人生の選択肢を広げる』と……」
「知識は、人生の選択肢を広げる……」
光明はその言葉を聞いて、何か考え込むように黙った。
「ところで、お前が話していた平基家という男の事は、調べなくて良いのか?」
直通が話題を変えた。
「ああ、基家様の事も、杠葉に調べてもらっています。……あの方とは何度かお会いした事がありますが、人付き合いが苦手なようですね。本当に彼が偽蘇芳なら、どうやって貴族を唆したのやら……」
「人の悪口は、本人がいないか確認してから言え」
不意に声がして振り返ると、平基家その人が眉を顰めて立っていた。光明より一つ年上の漏刻博士は、少しうねった髪を器用に纏めていた。
「これは失礼。……基家様、何故このような所に?」
「どうでもいいだろう、そんな事。それより、お前こそ何だ。鬼や式神まで侍らせて。……あまり、出歩かない方がいいんじゃないのか」
さすがと言うべきか、一瞬で紅玉の正体や杠葉の存在を見破った。
「ご心配、ありがとうございます」
「……心配などしていない。俺は用があるので、これで失礼する。……気をつけろよ」
そう言って、基家は去って行った。
「おい、あれは、心配しているのか?」
「確かに、ご自分の気持ちをおっしゃるのが、苦手な方のようですね」
直通と時子が口々に言う。
「基家様の事は気になりますが、私はそろそろ陰陽寮に戻ります。御迷惑おかけしますが、引き続き調査をお願い致します」
そう言って光明は三人と別れた。
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