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白髪の鬼5

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

 三人の目の前には、焼けた農村が広がっていた。

「本当にこの辺りにあの鬼がいるのか?」

 直通が辺りを見回しながら言った。

「この辺りなのは、間違いないと思うのですよ」


 光明が先程通りすがりの村人に話を聞いたところによると、数日前、武官のような恰好をした男が二人、村の家を回って人々を無理やり連れ去ったという。しかし、連れて行かれた先は山を一つ越えた別の集落で、特に危害を加えられる事はなかった。武官の姿もそれきり見えなくなり、不思議に思いながらも一部の村人が元の村に戻ってみると、村が焼け落ちていたという。

「その武官は、もしかして……」

「法眼の式神でしょう。式神がいなかったら、村人は命を落としていたかもしれません」

 直通と光明の話を聞いて、時子はほっとした。信じてはいたが、やはり法眼は人の命を大切に思ってくれていた。


「とにかく、早く法眼を見つけま……」

 最後まで言い終わらないうちに、光明ははっと辺りを見回した。

「どうした?」

「法眼の術の気配がします。お二人共、こちらへ」

 光明が走り出した。二人も慌てて後を追った。


 村の外れには小高い丘がある。木が茂っていて足場も悪いが、三人は急いで丘を駆けていく。木がまばらになって視界が開けたところで、三人は鬼四を見つけた。

 地面に座り込み、蔓のようなもので木に括りつけられている。体中傷だらけで、着物の半分は赤く染まっているように見える。側には、薄っすら笑う白樹もいた。白樹は、三人に気付くと落ち着いた声で言った。


「ああ、もしかして私の弟の友人かな。丁度良い。この場で殺そうか。なにせ、弟が変な術を使って、私が遠くへ行けないようにしているものだからね」

 よく見ると、鬼四と白樹の周りの地面には何枚か呪符のようなものが落ちている。

「……結界か」

 光明が呟いた。

「そう。結界を解いて欲しくて、毎日弟を痛めつけているのだけれど、解いてくれない。術者が死亡しても結界だけ残るなんて事になると困るから、殺す事も出来ない。……まあ、十一日間も痛め続けているから、流石に結界の効力は弱まっているだろうが」


 そう言うと、白樹は三人の方に歩み出した。そして、ある所で歩みを止めると、剣を抜いて空を切るような動作をした。

「結界が壊された……」

 光明が険しい表情で言った。


「手出しは……させない……」

 先程まで意識朦朧としていた鬼四が、蔓から抜け出そうともがいている。

「後は私達に任せなさい。お前、十一日間も結界を張り続けるなんて、下手したら死にますよ」

 結界を張るのにはかなりの体力を使う。鬼四は、素直に光明の指示に従った。

「後は宜しくお願いします……」


 白樹が自分の髪の毛を数本抜いて、空中に投げ出した。すると、髪の毛の一本一本が小鬼に変化し、人間である三人に襲い掛かってきた。光明は、呪符を取り出し呪文を唱えた。どこからか炎が巻き起こり、小鬼を焼き尽くしていく。

「時子様は法眼を安全な所に連れて行って下さい。申し訳ございませんが、直通様は私の援護をお願い致します」

 光明は次々と小鬼を退治していく。光明が退治し損ねた小鬼を、なんとか直通が切っていた。


「埒が明きませんね」

 光明が別の呪符を出し呪文を唱えると、嵐のように風が巻き起こった。小鬼は風に吹き飛ばされていく。光明は風に乗るようにして、一気に白樹との距離を詰めた。小鬼に邪魔されないうちに焼き尽くすつもりだった。だが、新たな呪符を出そうとした所で右腕を蔓のようなもので絡め取られた。そして、そのまま地面に体を叩き付けられた。


「そのまま地面と一緒になっていればいい。……あちらを構う方が面白そうだ」

 白樹はそう言うと、鬼四を括り付けている蔓を切ろうとしている時子の方に顔を向けた。

 武官の姿の式神が二人揃って白樹に切りかかるが、軽くいなされ、蔓で絡め取られてしまった。そして、別の蔓が時子の方に伸びてきた。

「時子!」

 直通が叫んだ。


 蔓は、時子に届く前に焼き払われていた。いつの間にか鬼四を括り付けていた蔓は切られており、鬼四が呪符で炎を出していたのだ。

「……絶対、この女には手出しさせない……」

「やはり、この女がお前にとって一番大切な存在のようだな。……面白い」


 白樹が小鬼と蔓の両方を鬼四と時子に向けて放った。鬼四は、まだ立てない状態だったが、渾身の力で焼き尽くしていった。

「お前、そんなに力を使ったら……」

 立ち上がった光明が呟いた。

 鬼四の放った炎は勢いを増し、白樹の右腕を焼いた。

「この炎、邪気を浄化する働きもあるのかな?少し力が抜けていくようだ」

 それでも白樹は、余裕のある表情をしていた。鬼四は、また攻撃が来ると思って身構えた

が、何故か白樹はもう攻撃してこなかった。

「身体を回復したいし、面白いものも見れたから、今日はもう失礼するよ。また会おう、可愛い弟」

 そう言って、白樹は風を纏うようにして去っていった。


「大丈夫ですか、法眼様」

 時子が慌てて声を掛ける。

「なんとか……。良かった、お前が無事で……」

 鬼四は力なく笑うと、意識を失った。


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