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第4章ー1 ベルリン及び中欧への侵攻

 第4章の始まりです。

 1941年5月10日、米英仏日等と共同して対独ソ宣戦を伊は布告した。

 言うまでもなく勝ち馬に乗るためである。

 既にエルベ河のほとりに米英仏日等の連合国軍は達しており、デンマークの解放まで果たしている。

 万に一つも連合国側の敗北は無いと、ムッソリーニ統領やその周囲が判断したことによる宣戦布告だった。


「これは世界を共産主義という悪魔から守る、正義を果たすための宣戦布告である。二十世紀の反共十字軍をここに私は宣言したい」

 ムッソリーニ統領は、対独ソ宣戦布告を国内外に告げる演説の中でそのように高らかに発言した。

 もっとも、この発言がどこまで共感を呼んだかは微妙なところで。


「あの男に十字軍を宣言されたくはないな」

 同じカトリック教徒が多数を占める仏の国民の多くがその発言を聞いた時に内心で思った。

 キリスト教徒が多数を占める米英等でも同じだった。

「多くがカトリック信者で無い日本人に十字軍に参加しろ、というのかね」

 米内光政首相をはじめ日本の国民の多くもそう考えた。


 現場の将兵も似たように思う者が多かった。

「伊に十字軍を宣言されたら、勝てる戦にも負ける気がしてくるな」

 アラン・ダヴー大尉は、腹心の部下であるフリアン曹長にそうぼやいた。

「全くその通りですな」

 フリアン曹長も同感だった。


 二人ともにスペイン内戦の際に、伊の義勇兵の逃げっぷりの良さを実見している。

 勿論、これはかなりの色眼鏡で伊の義勇兵全員が逃げた訳ではないが、

「日本の義勇兵1人は、伊の義勇兵10人に勝る」

 とフランコ総統から激賞された日本義勇兵の一員だった二人にしてみれば、伊の義勇兵全員が逃げたようにさえ覚えていたからだった。


土方勇中尉や岸総司大尉も、ムッソリーニ統領の十字軍宣言を聞いた瞬間に思った。

「お前が言ったら、勝てる戦も勝てなくなる気がする。エチオピア軍相手に大苦戦して、恥も外聞もなく毒ガスまで使用して、ようやく伊軍は勝ったではないか。そして、スペインでも。更に言えば、そもそも十字軍は最後は負けていなかったか、縁起が悪いにも程がある」

 と。

 その一方で、第1海兵師団所属のまま、ベルリンを目指す土方中尉はともかくとして、岸大尉はその頃、異動辞令を受けて、それへの対処に追われていた。


「第6海兵師団の麾下にある海兵中隊長に異動か」

 岸大尉は、その辞令を見た瞬間に複雑な想いを抱いた。

 ようやく上の異動が一段落し、尉官クラスにまで人事異動が完了したか。

 海兵本部は、兵は補充で基本的に賄うつもりだろうし、下士官は兵からの昇進で何とかするつもりなのではないか。

 これは色々と歯ごたえのある任務になりそうだ。


 第6海兵師団は、先に行われたフルダ渓谷を巡る戦闘の際に大損害を被っていた。

 その際に師団長の国府尽平中将(戦死に伴い特進)が、独軍の奇襲を見抜けなかった責任から自死といってよい壮絶な戦死を遂げ、師団参謀長の石川信吾大佐が、臨時に師団長の役をしばらくの間、務めていた。

 師団に所属する将兵の損害も凄まじいもので、このフルダ渓谷を巡る海兵隊全体の4分の1余りの損害が第6海兵師団に集中していた。


 こういった状況から、海兵本部が第6海兵師団の新師団長に任命したのは。

「よろしく頼む」

「こちらこそ」

 日頃から傲岸不遜で知られる石川大佐と言えども、丁寧な言葉遣いを新師団長の戦歴からはせざるを得なかった。


 先の世界大戦で大量の死者を出し、地獄を見たと謳われた海軍兵学校41期生で最初から海兵隊に入った士官としては唯一の生き残りである太田実少将。

 彼が、第6海兵師団立て直しのために新師団長に抜擢されていた。

 石川大佐は、何としても第6海兵師団を共に立て直そう、と決意した。

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