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第3章ー16

 では、実際のところ、1941年5月初め時点のソ連極東軍の現状はどうだったのか。

 1939年9月に満州侵攻作戦を発動した時点で、約40個師団相当の部隊をソ連軍は投入していた。

 その後の1年半の戦闘により、少なくとも100万人、多く見積もれば200万人の兵員をソ連極東軍は失っていた。

 余りにも差が大きすぎないか、という指摘がありそうだが、これは日米の戦略爆撃による被害をどのように考えるかによって変わってくるところが大きい。


 日米の戦略爆撃による被害は被害として別に考えるならば100万人という数字に近づくし、戦闘による被害に変わりはないとして合算するならば200万人という数字に近づくのである。

 ソ連軍が、直接の日米満韓連合軍の戦闘により失った兵員は100万人にはとても届かない。

 だが、いわゆる戦病死者を入れれば、100万人を超える数字に到達してしまう。

 更に戦略爆撃による物資不足による餓死者や充分な治療を受けられなかったために戦死した者等を併せ考えていくならば、200万人に達するというのが現実だったのである。


 それでも、額面上は新規動員を行ったり、艦艇等を失った海軍軍人を地上部隊に再編制したり、軍用機を失った空軍軍人を地上部隊に再編制したり、といった方法により、失われた兵員は補充済みで、逆に額面上の部隊は増えており、約50個師団の部隊が日米満韓連合軍の侵攻に備えて編制されていたという。

 だが、問題は他にもあった。


 シベリア鉄道等に対する攻撃により、イルクーツク以東の輸送網はほぼ切断されたと言っても良い状況にソ連極東領はあった。

 そのために兵器がない、弾薬がない、燃料がない、食糧がない、の無いない尽くしにソ連極東軍は陥ってしまったのである。

 こういった現状を少しでも改善しようとして行われたのが、子どもの欧州方面等への疎開だった。


 ソ連政府(軍)は、ソ連極東領にいる子どもを欧州方面等に疎開させることで、戦禍から子どもを免れさせると共にソ連極東領の食料事情等の改善も図ったのである。

 しかし、この方策は。


 残された親や兄姉達にしてみれば、ある意味ではソ連政府に子どもが人質に取られたようなものだった。

 日米満韓連合軍の侵攻を前にして、新兵や民兵隊の募集がソ連極東領各地では行われたが、欧州方面等に送られた子ども達の両親や兄姉は積極的に新兵や民兵隊に志願した、いやせざるを得なかった。

 自分達が新兵や民兵隊に志願しなければ子どもがどんな目に遭うか、つい先日まで行われていた大粛清の恐怖は未だに生々しく民衆の間に刻まれていたままだったのだ。


 そして、女性を含む大量の兵員が日米満韓連合軍の侵攻をソ連極東領において迎え撃つことになり、このことはソ連極東領において、多大な悲劇を生んだ。

 また、ここでのソ連民衆の抵抗が欧州にも波及して、欧州でも女性や老人、少年さえも容赦なく戦場に投入されて戦死していくという悲劇が連鎖的に起こることになるのである。


 更にこの世界大戦終結後に旧ソ連領各地では世界大戦によって家族を失い、故郷に帰ることもできずに、故郷から遠く離れた土地で、自分達を中心に暮らさざるを得なくなった子どもが大量にできることになるのだが。

 その子ども達は、周囲に同様に怒りをたぎらせる仲間が集ったこともあり、家族を故郷を失ったことについて、日米英仏等の連合国の国民に対して多大な恨みを抱くことになった。


 かなり話が先走ってしまったが。

 ソ連極東領における戦闘が、ソ連欧州部における凄惨な戦闘の皮切りにもなったのは事実だった。

 ソ連極東領では、ソ連軍と住民とが一体となって連合国軍に対して苛烈な抵抗を行い、大量の犠牲者を出した。

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