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第2章ー34

 なお、ポーランド軍(というより連合国軍)がライプツィヒを積極的に目指したのには、ある政治家を保護するという副次的な理由があった。

 その政治家は、反ナチス主義者として反共産主義者として知られた存在だった。

(カナリス提督率いる独国防軍情報部が日英米仏等の軍情報部と連携して秘密裡に保護していたので無事だったのだとささやかれているが)その政治家は、侵攻してきたポーランド軍の前に白旗を掲げて現れ、無事に保護されることが出来た。


 そして、速やかにその政治家の身柄は、(ドイツ人ということだけで兵士達から私的な復讐を受ける危険があった)ポーランド軍から米軍に渡され、米軍の庇護の下でパリへと運ばれた。

 パリではペタン仏首相がその政治家を暖かく出迎えた。

「ゲルデラーさん、ようこそパリへ」

「お世話になります」

 その政治家とは、カール・ゲルデラー元ライプツィヒ市長だった。


 ゲルデラーは、元々は独の帝政復活を訴える保守派政党のドイツ国家人民党所属の政治家だったが、ドイツ国家人民党がナチスにすり寄ったことに反発して離党した身だった。

 その後もゲルデラーは反ユダヤ主義を掲げるナチスと対立を続け、ライプツィヒ市長をゲルデラーはナチスに対する抗議の意思を示すために辞職したこともあり、外国にも名が知られていたのである。

 そして、その政治思想もあり、英仏米日等からゲルデラーは戦後のドイツ統治の一翼を担う様に秘密裡に依頼を受けて、ゲルデラーはその依頼を受けて脱出してきたという経緯になる。

(それに反共、反ナチの政治家として名が知られている以上、独国内において、ゲルデラーとしてはいつSS等に難癖をつけられて逮捕、処刑されるか分からない身の上でもあった。)


「ベック将軍等、反ナチグループの動きは独国内で強まりつつあります。ですが」

 ゲルデラーは、ペタン首相に対して反ナチ、反共の動きを強めるように、更に独の帝政復活を働きかけるつもりで、それと引き換えに自分の把握している情報を述べた。

「ヒトラーもそれを徐々に把握しているらしく、特に2月の連合国軍の攻勢開始以降は、自身の身辺警護を厳重に行い、更にベルリンの総統大本営に籠り切りになりつつあるようです。いよいよの時には自分はベルリンで最期を遂げる、自分の支持者達はソ連を頼り、祖国の民主主義を取り戻すために戦ってほしい、と側近達に公言したとも私は聞きました」

「ふむ」

 ペタン首相は、その言葉に肯きながら想った。

 我々も似たような情報を情報部を通じて把握している。

 反ナチグループの中枢に近いゲルデラーまでが言うのだ、となるとこの情報の信憑性は高い。


「そして、何とかヒトラー総統率いるナチスの面々を排除した後の独と連合国との間に講和条約の締結、せめて条件付きの降伏を独に認めてもらえないか、仏にその仲介の労を取ってもらえないか、と私は考えています。仏がその仲介の労を取ってくれるというのなら、私は反ナチグループに連絡を取り、仏が仲介の労を取ってくれること、そのためにはナチスの排除が必要なことを伝え、反ナチのクーデターを独国内で起こすように努めます」

 ゲルデラーは、懸命にペタン首相を説得した。


「ふむ」

 ペタン首相は考えを巡らせた。


 ゲルデラーの想いは、自分にも理解できるが。

 ルーズベルト米大統領も、チャーチル英首相も、独ソ中(共産中国)に対して無条件降伏しか認めないと呼号している。

 そして、不当な侵略を受けたポーランドやオランダ、ベルギー等も米英に味方している。

 米内光政首相率いる日本が、早く第二次世界大戦終結を図るべきという立場からゲルデラーの想いに共感する可能性がある程度で通ることは無いな。

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