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林間学校7

 お風呂からでて、少し体が熱かったのでソシャゲの周回しながら、涼もうと思い僕はテラスに出た。テラスにいるのは、仲間同士でダベっている運動部員達ぐらいで端の方には人の気配はないので、僕はそこを安住の地にすることにした。


「ふー、今日は種火周回が捗るな」


 と僕は、どうでもいいことを呟いて視界の端にあるものから逃げようとする。テラスの隅で泣いている千香に僕は、声をかける勇気が出なかった。というよりなんで泣いてるの……。えっ、なにいじめられたの?


 いくら待っても動かない千香に僕のほうが限界になった。


「おい、何泣いてるんだよ」

「うぅ、陸斗?」

「そうだよ」

「な、ないてないし」

「おいおい、それは流石に誰も信じないぞ」

「そ、そうね」


 と千香は目をこすった。


「それで、一体何があったんだ」


 僕は千香に尋ねる。千香は、しばらく悩んだ後に切なげな笑顔で


「なんでもないや」


 と答えたので僕は、


「そうか」


 と答え、お互い会話をすることなく星を眺め続けた。







「ねぇ、陸斗。キスしようか」


 10分程してから千香はそんなことを言い出した。僕は一通りあたふたした後、千香の顔を見た。なんていうか投げやりでつらそうな顔をしていた。なんだかんだいって僕と千香は同類だから考えてることも大抵分かる。だから僕は……


「ふざけんじゃねーよ。お前なんかにファーストキスをやるわけねーだろ!僕の初めては星野にやるんだからな!」


 ブチギレた。


「でも、向こうは二回目以降だよ」

「それがどうした!向こうが初めてじゃなくても僕はファーストキスは好きな人にあげたい!僕たちの関係は奴らを見返し奪うことであって、慰め合うことじゃない!仮にキスをするとしても、奴らの前であってここではない!そうだろ!!」


 僕が息を切らしてそう言うと、千香は少し黙った後笑い出した。


「ごめん、陸斗。私、天王寺君と星野麗華がキスしてたの見て焦っちゃった。でも、陸斗の言う通り私達の目的は見返すことだったね」

「ああ」

「天王寺君のファーストキスは、奪われたけどセカンドキス以降は私が見返して奪ってやるんだから」


 千香は、ニカッと笑った。その笑顔は僕が恋い焦がれたあの星野麗華の笑顔のようで僕は少し見惚れてしまった。


「それと千香、天王寺と星野があれしたことを言うのはやめてくれ。まだ、僕の中では割り切れてないから」

「はぁ、軟弱な男ね」

「さっきまで、メソメソ泣いていたやつに言われたくないんだけど」

「なにー、あんたもその目で見ればよかったのよキッス」

「ぐはっ」


 そんなやり取りを暫く続けると、教師たちがテラスにいる生徒達に部屋に戻るように告げたので、僕たちは重い腰をあげて部屋に戻ることにした。前を先行していた千香が僕の方を向いて聞いてきた。


「ねぇ、天王寺君たちに見せつけるためだったら、陸斗はキスするの?」

「するわけ無いだろう。ファーストキス同士のたどたどしいのを見せびらかしたって、効果ないだろう。なれたキスをしようものなら僕は何回キスをすることになるのかわからないだろう。お断りだ。」


 僕の回答に千香は笑って


「そうね」


 と答えた。



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