林間学校1
うちの高校はゴールデンウィーク初日から全校生徒で3日間の林間学校に行く、本来ならリア充のために作られたイベントなので是非とも休みたいのだが、去年休んだ長谷川くんの事を思い出すと休もうにも休めなかった。
彼は、家の都合で休まざる得なかった。ゴールデンウィーク明け、彼を待ち受けていたのはどこかよそよそしいクラスメイトたちだった。4月の後半、まだグループが固まりきれてないこの時期の大イベント、ここで多くの生徒のクラスでのポジションが確定する。中心人物だったり、盛り上げ役だったりだ。
僕はどうだったかといえば、おとなしい男子の地位を手に入れ、それ以降公的な話ではない限り話しかけられることはなかった。別に寂しくなんかなかったんだからね。テンプレツンデレムーブをかましつつ長谷川くんの話に戻ろう。
それから、一学期の間はもともと仲が良かったグループから浮いてしまい完全に孤立していた。クラスメイトと打ち解けたのは10月の文化祭だった。
長谷川くんの方が最終的には友達ができたんだから、休んでもいい気がするが、僕は呼ばれる際に(林間学校を休んだ)黒崎くんと、前置詞がつけられるわけにはいかない。でも現在、(バカップルの彼氏の方の)黒崎くんと呼ばれてる気がするがこっちは気にしない。
そんな、林間学校だが移動のバスで僕は帰りたかった。
最初は僕も少しは楽しむ気でいた。でもさ、
「よろしくね、黒崎くん」
と隣に天王寺が座った時点で萎えるよね。席ぎめの時は、ちょうど古戦場を走っていたから右の列が、男子で左が女子ということと自分の席しか知らなかったんだよな。本当に天王寺が隣になるなら、休めばよかった。
隣が憎き恋敵でも話しかけてこなければ、持参したラノベを読めば苦ではないはずだったんだが、
「ねぇ、黒崎くん。白川さんとは、どこでデートしてるの?」
と質問してくる。コミュ障の僕には、質問の内容を含めて難しい。
「ええと、えとえと、しょ、ショッピング」
うん、グダグダだ。
「麗華と次にデートするところで悩んでるんだけどさ、黒崎くんオススメがあったら教えてくれないかな」
なんか、僕が教えたところを天王寺と星野が行くとか、死ぬほど嫌なんだけど。対岸にたまたま座った千香を見る。
「えっ?」
そういう言葉が出るくらい衝撃的な光景が横には広がっていた。なんと、千香が星野に抱きつかれていたのだ。いや、なんで千香が星野に抱きつかれているの?理由が僕には検討がつかない。おい、千香そこ代われ。
「麗華、白川さんが困惑してるだろ。離してあげなよ」
「いやぁ、白川さんが可愛くてつい、えへへ」
とはにかむ、星野。かわいい。
はっ、星野の可愛さにボーとしていたが冷静になった。千香を見ると、なぜか千香も惚けていた。大方、天王寺が助けてくれたから白馬の王子様にでも見えてるのだろう。
目の前で手を振ると、
「なに?」
としかめっ面をこっちに向けた。
「よく考えろ」
と僕は千香にしか聞こえない小声で千香に話す。
「あいつら、私達の隣でイチャついてたね。許せないわ」
「予定通り、林間学校でも見せつけてやるしかないな」
「そうね」
と僕たちが話していると、
「白川さーん、黒崎くんと何やってるの?」
千香の後ろから星野が顔を出した、動きが可愛い。
「本当に二人仲がいいね。お似合い」
うっ、好きな人にそう言われるって地味に辛いな。いやいや、そう言わすための計画だろ成功じゃないか。
「麗華の言う通りだよ。二人の仲の良さが、羨ましいよ」
「あら、聖也。私じゃ不満なの」
「いやいや、そうじゃないよ」
気づいたら、天王寺と星野がいちゃつき始めた。なので、僕たちは
「天王寺。着いたら、まずなにやるか知ってる?」
「星野さん、あとどれぐらいで着くか聞いてる?」
うまいこと話をそらした。
その後、到着まで天王寺と二人で話し続けた。天王寺はところどころのろけだすので、かなりイライラした。




