幕間 天王寺聖也
自慢じゃないが、俺は子供の時からモテた。
小学校の時は、サッカーをやっていてかつ足が速かったので人気があったが彼女はいなかった。
中学生になると、サッカーで挫折して家に引きこもった。友達にあるものを勧められてからは、外に出てからは、顔が良いという理由で二人の女の子に告白されてなんとなく付き合った。だけど、俺の部屋に来ると、逃げ出し振られてしまった。
高校生になっても中学時代とおんなじ理由で付き合ってて言ってくれる女子が二人もいた。性格も悪そうじゃないし、俺の趣味を受け入れてくれるかもしれないと期待して付き合った。最初の一ヶ月のデートは外ばっかだったけど大丈夫そうかなと思い部屋に連れてきたら、うん毎回の如く逃げられてしまった。確かに俺の趣味は人には大きな声で言えない。でもそんなにダメか、
……
…………
………………エロゲーマーていうのは。
中学生の頃、部活の試合で大失敗をした。それからなぜかボールを見るのが、怖くなってしまった。ボールは友達と暗示をかけてボールに触れても効果はなく、気持ち悪くなって戻してしまった。それがショックで引きこもりを始めた。毎日部活のやつや、クラスメイト達が訪ねてくるけど俺は、部屋から出る気にはならなかった。そんなある時、小学生の時からの友達に
「お前、これやってみろよ」
と渡されたのが、18禁原作のギャルゲーだった。内容は、絵が描けなくなった元天才画家の少年がヒロイン達と出会うことで、復活するという。今思うとなんも面白みのないゲームだったんだけど。俺は、アホみたいに自己投影した。
気づいた頃には、ドハマリしてコンプ率100%になっていて、調べると原作が18禁だったので、それを買ってこっちもコンプ率100%にしていた。それから、俺は同じライターのゲームを買い漁りやり込んだ、数ヶ月もすると俺は、立派な紳士という名のエロゲーマーになっていた。その頃には、俺のボールに対するトラウマもなくなっていて、無事サッカー部に復帰することができた。
流石にエロゲーというのは公に好きだというのは難しいと思うだから、隠してはいるんだが。でも、自分の部屋だけはオープンでいたかったので、俺の部屋にはエロゲーヒロインのエロいタペストリーが所狭しと飾ってある。まあ、それを見た歴代の彼女たちは全員逃げ出し、翌日から絶縁宣言をされた。隠せばいいって、いやそれは紳士としてのレギュレーション違反だろ。
高校生になって星野麗華を初めて見た時。誰とでも距離感を詰めていく彼女の生き方にすごい興味を持った。彼女だったら、自分の趣味を受け入れてくれるかもしれないと思い、星野を恋人にしようと思った。だから、積極的に距離を詰めていき親しくなった。2年になって同じクラスになったので、後は告白するだけだと思っていたのだが……。
告白、緊張するよね。本当に無理、やろうと思っても緊張で死にそうになる。
そんな時だった、白川千香からラブレターをもらったのは。
白川千香という少女に俺が抱いていた印象は、おとなしい読書家の女の子。本の話を嬉しそうにしてくれるので、ついこっちから何度も話しかけていた。
白川千香のことは嫌いではないし、麗華の事が好きではなかったら。多分、OKしていただろう。白川を放課後に校舎裏に呼び出すと、先に来た白川は震えながら俺を待っていて。俺は、この子をこれから振らなければいけないと思うと心が痛んだ。
実際振った後は、泣いて逃げられてしまってより心が痛んだ。
でも、俺は覚悟を決めた。翌日麗華を校舎裏に呼び出し。
「俺、麗華の事が好きだ!付き合ってくれ」
「はい、よろこんで」
こうして、俺と麗華は恋人になった。
翌日、腕を組んで登校して。文句言われつつ、祝福された。
だが、無事初デートを終えて安心しきった週明け問題が起こった。黒崎陸斗と白川がイメチェンして付き合い始めたのだ。
にしても、一昨日の初デート良かったな、映画館行って。ファミレスでご飯食べて、最後はカラオケで遊んだ。麗華がすんごい可愛かったです。本当に幸せだったわ。
それで、黒崎と白川の話だっけ。黒崎は話したことないからよくわかんないんだよね。麗華とは少し関わりがあるみたいだ。あれ、黒崎と話してる麗華を見るとモヤッとする。これが、独占欲か。
白川は、振った俺が言うのもあれだけど、好きって言ってくれた子が一週間経たずに違う男と付き合うていうのは、地味にショックだ。男なら誰でも良かったのかてなるし。ずっと俺のことを好きでいなくても全然構わないが、さすがにすぐ新しい男と付き合うとか男として自信なくなる。
この日は、黒崎と白川をついつい目で追ってしまった。麗華も浮かない様子だった。もしかして、以前黒崎と付き合っていたりは、流石にないか。にしても黒崎も白川も俺たちに見せつけるようにいちゃついてくるな。昼食の時は、あまりのイチャつき具合に箸を折りそうになった。
翌日以降もこの二人の事を目で追ってしまっていた。別に麗華に不満があるわけじゃない。好きすぎておかしくなりそうだし。一緒の登下校はすごく楽しい。でも、黒崎と白川が羨ましく見える。なんでだろうと、思ってた。
「だから、変なアレンジはよせって言っただろ」
「だって、美味しいて思ったもん」
「レシピ通りにに作れば、失敗しないことはわかってただろ」
「うん、でも……陸斗によろこんでもらいたかったんだもん」
「……うっ」
部活が終わり、片付けをしていると帰宅途中の黒崎と白川が通った。はっきりとは、聞こえなかったが言い争いをしてるのはわかった。それでわかってしまった。俺達になくて、こいつらにあるものを。
きっと、黒崎と白川はなんでも言える関係性なんだろう。だからエロゲーマーである事を隠してる俺には、なれない関係性なんだろう。今までの彼女みたいに麗華にもバラせばいいとも思った。でも、麗華に対しては、今までの彼女と違ってバレたくないと思ってる自分がいる。どうすればいいのだろう。
結局、この答えがわかるのはかなり先の事だった。
陸斗「僕よりだいぶキャラが濃いんだけど」




