幕間 クラスメイト
俺の名前は相田敦士。生まれてからずっと出席番号が一番ということ以外は、どこにでもいる男子高校生だ。うちのクラスにはカリスマと呼べる人間が二人いる。一人は、サッカー部のエース、天王寺聖也。こいつは、運動神経バツグンがとにかくよくて、おまけにイケメン。これだけの人間なら、俺たちもてない男達はコイツに呪詛を吐きまくってるはずだ。しかし、この男なんか性格もいい。だから、俺たちのような冴えない奴らにも優しいから恨めないんだよね。
もうひとりは星野麗華。うちのクラスのアイドル的存在で男子はみんな彼女のことが好きだ。もちろん俺も好きだ。スタイル抜群で、アイドルみたいな顔、さらに誰とでも仲良くなる人間性。男子共は、みんな彼女の事が大好きでファンクラブが存在している。たまに、ガチ恋勢という輪を乱す裏切り者がいるが、大抵振られて泣いているのでタオルを渡せば俺たちは仲間だった。
そんな、天王寺聖也と星野麗華がリーダー格を務める、我らが2年2組は彼らの性格もあって上っ面は仲良しクラスだった。もちろん不満があるやつもいるけど、天王寺と星野に逆らうのは骨が折れるので基本的には黙ってる。だけど、クラスから浮いてしまってる人間がいる。
一人は黒崎陸斗。休み時間には、ライトノベルを読むか、スマホゲームをしている。一年生の時に友達作りに失敗してしまって、その感覚で2年生になってしまったんだろう。だからか、人を寄せ付けないオーラをだしてる。俺は同じゲームやってるから、ちょっと仲良くなりたいけど難しそうなんだよね。唯一仲良くなれたのは、星野だけで、
「あの黒崎まで陥落したのか」
とファンクラブでは、話題になり。星野の神格化が進んだ。
もうひとりの白川千香も、黒崎と同じように他者と関わろうとせず。一人小説を読んでいる、低身長ということから影では座敷わらしちゃんと呼ばれている。悪意はないとは思うが、本人が聞いたら嫌だよな思えるあだ名だな。そんな、他者を受け付けない座敷わらしちゃんあらため、白川は一年から同じクラスの天王寺には心を少し許してるんだよな。やはり、顔か顔なのか。イケメンは悪い文明滅ぼさなきゃ。
おふざけはさておき、浮いた子たちはいたが表面上は平和だったうちのクラスに天王寺と星野が付き合ったという噂が流れる。発信源はサッカー部のやつで、デマではないだろうとファンクラブでは、結論づけたが。多くの男子生徒はその噂を信じたくなかった。反対に受け入れてるやつもいた。女子は、クラスのカリスマ達の噂に興味を持ってワクワクしていた。
実際、二人が手を組んで登校すると教室中は大騒ぎだった。ショックで泣き叫ぶもの、二人に質問攻めするものなど。朝礼の時間になっても教室が落ち着かず、我らの担任である紗絵ちゃん先生は泣きそうだった。ちなみに俺はリア充二人をみて、とりあえず爆発しろとささやかに祝福した。
問題は、週明け月曜日だ。先週と同じようにラブラブで登校してきた二人を見て。またこいつらの話題で一日が終わりそうだなと思ったら。うん、それ以上の話題を提供してくれた奴らがいた。
黒崎陸斗と白川千香がかなりイメチェンをして、さらに手を繋いで登校してきたのだ。
クラス中が、まずこいつら誰?てなったあと、正体がわかると嘘だろ信じられないの大騒ぎ。
黒崎は、イケメンとは言えないが無駄に長かった髪を切って爽やかになって印象が良くなった。女子からも、今まではボッチ陰キャでキモいとか思ってたけどこの格好ならあり。とかいう子がぼちぼちいた。良かったな黒崎モテ期だ。
正直黒崎の変化は大したことない。問題は、白川だ。座敷わらしちゃんがアイドルに大変身しやがった。身長は伸びてないので、モデル並みのスタイルをもつ星野と比べると負けるが顔は、星野とは違うタイプの顔とはいえ良かったのでどっちがタイプかと男子共にアンケートをした結果引き分けになっていた。それと同時に、髪切る前から白川のこと可愛いと思っていた自称白川古参勢が台頭した。
そして二人が恋人だと聞き、荒れる教室。質問攻めにあった二人はキャパオーバーになり逃走。二人は、対人経験値が少ないから仕方ないだろう。あと、クラス内でこのカップルは騒ぎ立てると可愛そうだからゆっくり育てていこうと話し合いでまとまった。
この時、天王寺と星野が浮かない顔をしてたのが気になったが。すぐにもとに戻ったので忘れた。
ゆっくり育てていこうと、言ったのに白川が黒崎に弁当作ってきた事ですっかり興味を持ち二人の昼食風景をクラスメイト一同観察していた。ごめん二人共。それと黒崎、白川の事で怒ったお前はかなりかっこよかったぞ。
黒崎と白川が付き合いだしてから、二人から出ていた他者を寄せ付けない壁がなくなったので、挨拶ぐらいはできるようになった。
「おはよう、今日もいちゃついているな。爆発しろ」
とささやかに祝福して、いつか友達になれる日を期待する。




