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お弁当

 クラスメイト達の質問攻めに耐えられなくなった、私はまた屋上まで来ていた。


「まてよ、千香」


 私を追った陸斗が私の手を掴む。あっ……さっきまで手を繋いでいたのを思い出して恥ずかしくなる。陸斗の手、ゴツゴツしていたな……。


「なんで、陸斗私を追いかけてきてるのよ?」

「あんなに質問されたら、キャパオーバーだろ」


 陸斗の言葉に私はうなずく。クラスメイトの怒涛の質問攻めは本当に怖かった。


「にしても陸斗、星野麗華にデレデレだったわね」


 私がそう言うと陸斗は、アワアワしたあと。


「そ、それを言うなら、千香だって天王寺にデレデレだっただろ」

「し、しかたないじゃない。可愛くなったなんていわれたんだから」


 質問攻めの時天王寺君が小声で、可愛くなったねなんて言ってくれたのだ。そんな事を言ってもらえたら、嬉しくなるに決まってる。思い出すだけで顔が赤くなる。


「そ、そうじゃないでしょ。勝手に話を逸らすなー!」

「僕だって恥ずかしかったんだ」


 陸斗の顔も真っ赤だった。


「教室に戻ろう千香」

「そうね」


 私達は教室に戻ると教室中から視線をむけられたが、すぐにチャイムがなったので質問攻めにされることはなかった。その後の休み時間は、何人かに質問はされたが、そっけなく答えて読書に移れば帰ってくれる。コミュ障の私には、質問に答えるだけでも限界なのだ。





 さて、昼休みだ。私は陸斗のところに向かう。


「ねぇ、陸斗?あなたの分のお弁当も作ってきたんだけど、一緒に食べない?」


 えっ、なにこれとても恥ずかしいのだけど。返事がないので、陸斗を見ると。口を開けてぽかんとしていた。情けない顔。


「うん、食べる。超食べる」


 ようやく意識を戻した陸斗だったが、発言がかなり馬鹿だった。あと、まわりが少し騒がしかった。


「千香、打ち合わせではこんな事話してなかったけど大丈夫なのか?」


 陸斗が小声で、耳打ちする。


「大丈夫て、どういうことよ?」

「君、料理なんて今まで全くしてこなかったタイプだろ」


 うっ、図星だ。


「大丈夫、今日は簡単なものしかいれてないから」

「なら、大丈夫か」


 陸斗はホッとした顔をした。


「はいどうぞ」


 私は陸斗にお弁当を渡す。


「ありがとう」


 陸斗は、お弁当を開ける。まって、ものすごい緊張する。寄り弁とかしていたらどうしよう。


「おーいいじゃん。おいしそう」


 緊張していた、私に聞こえてきたのは褒め言葉だった。陸斗のその言葉に教室中から野次馬が集まってきた。恥ずかしい。


 クラスメイトの反応は、いいじゃんもしくはしょぼいの二択だった。天王寺君は、見に来てはいたが無言だった。確かにしょぼいという言葉を私は、否定できない。今日は、白いご飯に卵焼き、ウインナー、トマト、レタス。自分で作ったと言えるのは、卵焼きだけだ。そう言われても、仕方ない。


「あのさ、しょぼいて言うのはやめてくれ。僕の彼女が僕のために作ってくれた弁当だ。バカにするのは許さない」


 と陸斗は、足を震えさせながら言った。しょぼいと言ってきた男子は、ごめんと謝り席に戻っていった。


「ありがとう」


 私が、そう言うと陸斗は、顔を赤くして、


「大したことじゃない」


 と言って。弁当を食べようとしたので、私は弁当を取り上げた。


「なにするんだ、千香!」

「お礼にあーんして食べさせてあげる」


 私がそう言うと陸斗は完全に湯気が出るくらい顔が赤くなっていた。


「おーーー!」


 周りが騒がしいが無視する。


「はい、あーん」

「んっ」


 私が陸斗の口の中に卵焼きを入れると、


「きゃー!」


 と周りから歓声があがった。陸斗は、ものすごく恥ずかしそうな顔をしていた。なにが恥ずかしいのだろう?


 ……あれ、もしかして私とても恥ずかしいことしてる?


「はぁー、残りは自分で食べるよ」


 陸斗は、私が恥ずかしくなったのを察したのか。一人で弁当を食べ始めてしまった。


「美味しいよ、千香」


 そう、照れくさそうに笑う陸斗を見て、私は嬉しかった。


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