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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
肥える女王様

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シェイカー

 朝、俺は目を覚ますと日課の掃除を開始した。

 今日の掃除はベランダ。昨日、大雨が降った影響と、秋に差し掛かる季節ということもあり……ベランダには、向かいに生えた樹木の葉っぱが落ち始めていた。

 紅くなりつつある葉っぱを箒で掃いて、ちりとりで取って、ゴミ袋に回収していく。

 この季節にしか味わえない葉の掃除は、意外と新鮮で楽しめた。


「おはよぉー」


 林が目覚めてきたのは、俺が掃除を終えてからしばらくしてだった。

 林は相変わらず朝が弱い。今だって、目を開けているのか閉まっているのか、実に微妙な状況でうとうと顔を作っている。


「朝ごはん作るね」


「そんな調子で、怪我とかするなよ?」


「大丈夫」


 林はあくびをかました。


「痛いのには慣れているから」


「怪我するなって言ってんだよ」


 なんでこいつ、怪我する前提で語っているの。

 俺はリビングに戻り、広げたままだった布団を部屋の隅に片付けた。


 しばらくしたら、キッチンから卵を焼く音が聞こえてきた。

 今日の朝食のメニューは、昨晩の内に二人で相談して決めていた。


 ご飯。味噌汁。卵焼き。

 この前までなら、ここにウインナーを追加していたが……ダイエット中ということを加味して、しらす干しに変更した。


「……あんたのダイエットって、最近の流行りからかけ離れているよね」


「ん?」


「ほら、最近糖質制限ダイエットが流行りじゃん。ご飯控えるの大変って言う子、結構見るよ」


「持論だが、控えるべきは糖質より脂質だな。脂質は直接、体脂肪になるからな」


「へー」


「あとは、たんぱく質は積極的に摂取するべきだ。たんぱく質は筋肉に変わる。筋肉量の増加が、基礎代謝の向上に繋がるんだ」


「ほー」


 話半分といった調子の林が、コンロの火を消した。

 俺は立ち上がって、料理を運ぶのを手伝った。


「いただきます」


「頂きます」


 二人で手を合わせて、朝食を食べ始めた。

 静かに、ゆっくりと……この優雅な朝食の時間も、随分と日常の一部となった。


「ご馳走様」


「ご馳走様です。おいしかった」


「どうも」


 簡素な言葉を交わして、林はよいしょと立ち上がった。


「プロテイン作る」


「手伝う」


「手伝う程、複雑な工程ないでしょ」


「じゃあ座ってる」


「ん」


 俺達がプロテインの摂取を始めたのは、つい三日程前のことだった。

 勧めたのは俺。

 三日前、俺は林にダイエットにおけるたんぱく質の重要性をこれでもかと説いて、まあまあ値が張るものの、共有アイテムとしてプロテインの購入を決心させた。もちろん、金は折半だった。


 プロテインの作り方は至って簡単。

 専用のシェイカーに水を張り、そこからプロテインの粉を適量入れるだけ。この際、プロテインの粉末から先に入れると、ダマになりやすいから注意が必要だ。

 そして粉末を入れた後は、蓋をしてシェイカーをシェイクする。

 たったそれだけ。


 二つ分のシェイクの音がキッチンから聞こえた。


「はい」


 歩きながら、自分の分のプロテインを飲み始めていた林は、蓋を開けていないもう一つのプロテインを俺に渡した。


「座って飲めよ。はしたない」


「ね、あたしもここに来る前まではその辺気にしてたんだけどねぇ」


 ゴクゴク、とプロテインを飲んでいく林が、一旦飲むのを止めた。


「なんだかこの空間に毒されたみたい」


「この空間を形成しているのが俺でなければ、笑って済ませることが出来たんだがな」


 この空間を形成しているのが俺だから、これから始まるのは戦争。

 もしくは、喧嘩だ。


 ……いや、林による俺への一方的ななぶり殺し、か。


 俺は黙って、プロテインを飲もうと蓋に手をかけた。


「ん?」


 その時、俺は気づいた。


「林、お前、またシェイカー間違えているぞ」


 俺は指摘した。

 一応、二人分のシェイカーを買う時、どっちがどっちのものか区別出来るよう、蓋の色の違うシェイカーを俺達は買っていた。

 俺は黒。

 林はピンク。


 しかし、林は今、ピンクの蓋のシェイカーを俺に手渡してきた。


「あー、ごめん。間違えた」


 プロテインを飲み終えた林に言われた。


「まったく。これで三日連続だぞ?」


「ごめんごめん。わざとじゃないから。許してよ」


「……まあ、怒っているわけではない」


 悪気のない林の今の態度は、なんだか少し癪に障るが。


 致し方なし。

 俺はシェイカーの蓋を開けて、プロテインを飲んだ。


「間接キスだね」


 ニヤニヤした林が呟いた。

 呟いた……と言ったが、林は今、俺をからかうため、俺に敢えて聞こえるくらいの声の大きさで言ってきた。


 ……意識していなかったといったら嘘になる。

 ただ、なるべく気にしないように努めていたつもりだった。


 プロテインが喉につまりかけたが、ここで噴出したりしたら、余計林の思う壺だ。


 ……それだけは絶対に避けたいっ!

 この女の思い通りにだけは、絶対になりたくない!


 鋼の意思で、俺はプロテインを飲み干した。


「間接キスじゃないだろ。洗った後なんだから」


 ……勝った。

 勝利を確信しながら、俺は平静を保ちながら言った。


「……ちっ」


 ……え?

 今、俺、舌打ちされた……?

第二巻発売日当日を迎えることが出来ました!

皆様のおかげです。本当にありがとうございます


二巻もたくさんの人に読んでもらえるとうれしいです・・・。


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― 新着の感想 ―
連載再開してください!
[一言] 2巻も最後まで引き込まれて一気読みしました!Web版と結構違うのでifルート見てる気分でお得感ありました笑 次巻も是非待ってます!
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