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【書籍化】後宮の嫌われ白蛇妃〜推しのためなら悪意も美味しくいただきます〜  作者: 碧水雪乃@『龍の贄嫁』2巻〈上〉1/23発売&コミカライズ連載中


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7 お兄様と木蘭




 二十四歳と五歳の対話。年齢差を見れば異例にも思えるが、家格を思えば妥当だ。

 白家は九華(きゅうけ)に名を連ねる貴族ではあるが、歴代に多く皇后陛下を輩出した朱家と比べれば、その地位は足元にも及ばない。


 それもそのはず。白家の娘といえば『白蛇の娘』だ。

 そのうえ白家ではひとつの世にひとりの娘しか生まれないこともあり、家格を上げるために後宮へ娘を嫁がせる政略結婚には向いていない。


 現に、延峯(エンホウ)帝の治世から遡って三世代……約百年の間は、皇帝陛下の後宮に白蛇の名を冠する妃は冊封されていない。


 延峯帝の今代は娘に恵まれず、また八華八姫(はっけはっき)の勅命がなかったことから養女も取らずに済んだ。

 先代は選妃姫(シェンフェイジェン)の最中に他の妃嬪に罪を被せられ自害。

 先々代は同じく罪を被せられ、皇太子から直々に流罪を言い渡され処刑されている。


 そして、それ以前の数百年間はどこまで遡っても、『白蛇の娘』の末路は同じだった。


 だからこそ、いつの時代も白家当主は愛おしみ育んだ『白蛇の娘』を、白家の威厳や繁栄のために手放したいなどとは考えていなかった。

 それは次期当主である苺苺の兄、静嘉(セイカ)もだ。


 静嘉は、尊い血筋にある幼姫の深い事情を察して、あえて何も言わずに『是』と頷いたのではない。

 経緯はどうあれ、最も尊き燐家の紋章を持ち出してまでも『白蛇の娘』に依頼をしたいのだという誠意と、最上級の礼儀をはらった木蘭(ムーラン)に対し、信頼の証として快諾したのだ。


 苺苺を溺愛している兄は、優しい顔を浮かべながらも木蘭自身とその背後を容赦なく判定していた。

 しかし兄の思い妹知らず。


(やはりお兄様も、木蘭様の深いご事情を察されたのですね! 健気でかわゆく尊い存在であらせられる木蘭様を全力でお助けしたいお気持ち、手に取るようにわかりますわ!! やはり兄妹は似るものですのねっ)


 と、思いがけない場面で血は争えないと実感した苺苺はひそか照れつつ、兄への尊敬の念を強めていた。


「白家の姫君には代々異能が受け継がれると聞いた。妾にかけられた呪詛を至急解いてほしいのだが、できるだろうか」


 膝の上に置かれていた両手にぎゅっと力を入れて、唇をきゅっと結んだ木蘭は不安そうに尋ねる。


(こんなにお小さい頃から悪意を向けられているなんて……。きっと我が家へ来る決断をするまでも、必死に悩まれたはずです)


 藁にも縋る思いであることが如実にわかる木蘭の仕草に、苺苺は痛みでいっぱいになる胸を押さえる。


(王都から遥ばる白蛇の娘を頼っていらしたのですから、わたくしが絶対に呪詛を解いて差し上げなくては!)


「苺苺。この件は白家への勅命に値するんだ。頼めるかな」

「もちろんです、お兄様」


 苺苺は食い気味に「すぐに確認させていただきます」と身を乗り出す。

 そうしてすぐさま紅珊瑚の双眸に異能を集中させて木蘭を視た。だが。


「あら? あらあら? どうしてでしょう……?」


 悪意が呪靄(じゅあい)となったものも纏っておらず、呪詛の痕跡すらもない。


「な、んだ。なにが視えている……?」

「それが、なにも視えません。特に異状は見当たらないのです」


 燐家の木簡と印章を用いてまで白蛇の娘を頼ってやって来たのだから、彼女自身は呪詛を自覚しているはずだ。

 そして少なからず皇帝陛下や皇太子殿下も、その事象、または怪異を実際に確認していることになる。


(朱家のお血筋にありながら、あえて朱家当主の持つ印章を使用しなかったのだとしたら……)


 木蘭は確かに、朱家当主にも漏らせぬ国家機密に匹敵するほどの問題を抱えながら、苺苺のもとを訪れているのだ。


(きっと木蘭様のお命に関わるはずです。一度で視えぬからと諦めては駄目ですわ)


 苺苺はその後も何度も集中して挑戦してみる。

 が、何度試しても悪意の残滓すらも掴めない。


「……そうか。やはり、妾にかけられた呪詛は視えないのだな」

「ううう。お力になれず、大変申し訳ございません」

「頭を上げてくれ。そうかもしれないと思いながら、白家を訪ねた。世話になったな」



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