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【書籍化】後宮の嫌われ白蛇妃〜推しのためなら悪意も美味しくいただきます〜  作者: 碧水雪乃@『龍の贄嫁』2巻〈上〉1/23発売&コミカライズ連載中


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47 紅玉宮の侍女たち(1)



(確かに一部の手札を晒したことで、紅玉宮(こうぎょくきゅう)内を動きやすくなりました)


 苺苺(メイメイ)を歓迎していない女官は春燕(チュンエン)を代表して多くいるみたいだが、今後は朝だろうが真夜中だろうが、『あやかしがいないか警戒している』とひとこと言うだけで反対派の女官たちをも黙らせることができる。


(わたくしにあやかしを退ける力しかないと知ったら、相手の気も多少は緩むはずです)


 そうでなくては困る。


 木蘭(ムーラン)は再度確認をするため、朝餉の準備を整える女官も昨晩とは違う顔ぶれにした。十五人の女官を、明言はせずに三つの班に分けたのだ。

 お茶会の準備を行った筆頭女官が率いる侍女五人、そして夕餉を準備した古参の女官五人、今朝の朝餉を担当した年若い女官五人。

 暗殺を謀った犯人をさらに絞るため、今後はその三組の体制で徹底的に給仕にあたらせるそうだ。


(女官の皆様は順当という反応でしたね)


 当初は苺苺にお礼をするためのお茶会を予定していただけだったので、それを最も木蘭に近しい上級女官の侍女たちが準備するのは当然である。


(急遽決まったお泊まり会の準備を侍女の方々、そして夕餉を古参の女官の方々がするのも納得の配置です)


 最下級妃の白蛇の位といえど、苺苺は妃。

 貴賓を迎える準備に女官歴の長い上級女官たちが腕を振るうのは、木蘭からの信頼の証である。彼女たちにとっては名誉だったはずだ。


(そして中級女官の皆様。朝餉の準備は夕餉に比べると簡単ですし、普段はしないはずの仕事を任せていただけたのは、『紅玉宮は素晴らしい女官ばかりなのだと木蘭様が自慢したいからだわ』と、満更でもないご様子でした)


 上級女官見習いという立場の、普段は紅玉宮の掃除を専門に行う中級女官たちだ。

 慣れない給仕をしながら、嬉しそうにクスクス笑い合いながら喋っていたのは聞こえていた。


(けれどもこの給仕で、本当に確定してしまいましたわ。木蘭様の五人の侍女のどなたかが、呪毒(じゅどく)をもたらす悪意を秘めていると)


 結果、監視や行動把握がしやすいよう、木蘭は五人の侍女をふた組みに分けた。

 木蘭付きには侍女頭・若麗(ジャクレイ)、侍女頭補佐・怡君(イージュン)、第伍席の侍女・美雀(メイチュエ)

 そして、苺苺付きとなったのが第参席の侍女・春燕(チュンエン)と第肆席の侍女・鈴鹿(リンルー)である。


(春燕さんは正真正銘の木蘭様推しみたいですし、とっても仲良くなれそうな気がするのですが……。残念ながら、目の前にいるどちらかが、呪毒を秘める恐ろしい女官の可能性もあるのですね)


 今もまだ、怒りがおさまらないのか、春燕は鈴鹿に噛みついている。


「異能があるからなんだっていうの?」

「あやかしから木蘭娘娘を守ってくれるのです」

「あやかしなんて見たこともないし、もう出ないに決まってる。――『白蛇の娘』なんて、絶対に追い出してやるんだから」

「春燕」

「左遷なんてまっぴらごめんよ! 左遷先がなくなったら、戻れるんだから!」


 部屋の隅でフンッとそっぽを向いている春燕と、しずしずと控える鈴鹿を観察していても、怪しい様子は見当たらない。

 ――追い出したいくらい、『白蛇の娘』を厄介に思っているところを除いては。



 ◇◇◇



「もう、なんで私が白蛇妃(はくじゃひ)の部屋付きなんですかっ」

「……春燕? その言葉、この三日で聞き飽きてしまったわ」

「若麗様ぁ。そんなこと言うなら交代してください!」

「木蘭様の命令よ、代わったりできないわ。わかっているでしょう」


 紅玉宮の厨房で材料を広げ、本日の飲茶(やむちゃ)点心(おやつ)となる生地を手でこねながら、若麗は苦笑する。


「それに苺苺様って、とっても素朴で良い方よ? 妃であるのに威張っていないし、白州出身だから針仕事もお上手で……。しっかりした姫君だけれど、ふふっ、ぬいぐるみがないと夜は眠れないんですって」

「ふふふっ、そういうところが木蘭様の姐姐(おねえさま)たるゆえんでしょうか? 『白蛇の娘』なんて恐れられていたけれど、近くで過ごせばお優しい方だとすぐにわかりました」


 くすくすと、若麗と怡君は穏やかな声で微笑む。


「そうそう。水星宮(すいせいきゅう)を訪れた時には、女官の私を部屋に招いて手作りの薬草茶をご馳走してくれたのよ? 野苺の葉の薬草茶」

「野苺の葉が薬草茶になるのですか? それは知らなかったです」

「ええ、私もよ。なんでも、胃腸や美肌にとっても良いんですって」

「まあ。春先の御花園ではよく見かけますよね。まさか胃腸や美肌に良いだなんて」


 怡君は生地をこねていた手をつい頬に当ててしまい、舞った小麦粉に驚く。

 そんな様子を見て、厨房には侍女たちのクスクスという賑やかな笑い声が響いた。




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