47 公爵令息の謝罪
ルカ様達の話し合いが終わるのを談話室でライラック様達とソワソワしながら待っていると、ルカ様がやって来て、私に質問してきた。
「レンジロ卿は自分の父親のしたことを申し訳ないと思っているらしい。で、今更意味がないとはわかっているけど、リゼに謝りたいって言ってる。彼なりのけじめなんだろうな」
「そうだったんですね……」
だから、私に接触しようとしていたのね。
レンジロ公爵が両親を殺すように命令したのなら許せない。
でも、パルサ様は私よりも年下だから、その頃の彼に、両親を止めることなんて出来ない。
もし、彼を責めるとしたら、私だって、あの時に何も出来なかったことを責められないといけないかもしれない。
そう思うと、彼からの謝罪は受け入れても良い気がした。
もちろん、これは私の考えであって同じ立場になった人、すべての人がそう思うかはまた違ってくると思う。
「とにかくお話ししてみても良いですか」
「良いけど、どうするつもりだ?」
「パルサ様の様子を見てから受け入れるか考えたいんです」
「わかった」
ライラック様たちに背中を押され、少し緊張審ながらルカ様と一緒に応接室に向かった。
パルサ様はどんな方なのかしら。人型を見るのが初めてだから楽しみ。アルパカの顔は可愛らしいから、可愛らしい顔立ちをされているのかしら。
ドキドキしながら部屋の中に入ると、視界に入ってきたのはアルパカだった。
「え? アルパカ?」
「あ、いや、その、俺が頼んだ」
「ルカ様が頼んだ? どういうことです?」
謝罪と言うのだから人間の姿なんじゃないの?
アルパカの姿で謝られても……、と思ったけれど、ルカ様が頼んだというのであればしょうがない。
でも、どうしてルカ様はパルサ様にアルパカの姿になるように頼んだのかしら。
気になって尋ねると、ルカ様は視線を逸らす。
「あー、まあ、別にいいだろ」
良くはないような気がするんだけど、何か理由があるからこうしているのよね?
「……ルカ様の希望なのでしたら私はかまいません。それに、アルパカの姿はとても可愛いので癒やされますし私としても良いです」
苦笑してからパルサ様を見ると、表情が変わらないから、どんな感情なのかはわからないけれど、何度も頭を下げてくれた。
その仕草が可愛くて、つい微笑んでしまう。
謝罪をしてもらうにはちょっと変だけれど、アルパカの姿は本当に可愛いわ。
「あの……」
アルパカの姿でパルサ様が口を開いて、深々と頭を下げる。
「僕の両親が取り返しがつかないことをしてしまい、申し訳ございませんでした。謝って許されるだなんて思っていません。でも、謝るしか出来なくて。本当に申し訳ございませんでした」
頭を下げたままでいるパルサ様に話しかける。
「頭をあげてください。パルサ様のせいだなんて思ってはおりません。実行犯はあなたのお父様が手配した方かもしれませんが、あなたのお父様に私の両親のことを密告した誰かがいます。私が許せないのは、罪を犯した伯父もそうですが、密告者やあなたのお父様達であって、あなたではありませんから」
悪党の子供も憎いと思ってしまう人がいてもおかしくないとは思うけれど、私は、彼が本気で自分の御両親の代わりに謝ってくれているのだろうと思ったから、彼のことを責めることは出来なかった。
「ありがとうございます」
パルサ様の声が震えているのがわかっただけで、甘いと言われるかもしれないが、彼からの謝罪は私としてはもう十分だった。
「あの、リゼさんやノルテッド卿は、これからどうされるおつもりですか?」
パルサ様はゆっくり顔を上げて、つぶらな瞳を私達に向けて聞いてきた。
こんな時に思うことじゃないとわかっているけれど、やっぱり可愛いわ!
しかももふもふだし! もふもふしたい!
「フローゼル卿はリゼを狙ってますから、このまま黙っているつもりはありません。それに、フローゼル伯爵に対しても、リゼの両親の件で聞きたいことがあるので接触はするつもりです。このまま許すわけにはいきませんので」
「ノルテッド卿達が動いてくださることであって、リゼさんは関わらないということですね?」
「そのつもりです」
ルカ様が頷くので、私は慌てて首を横に振る。
「いいえ。私だって何もしないわけにはいきません! ミカナとデフェルには私自身、嫌な思いをさせられていますから」
ミカナには意地悪されただけじゃなく殺されそうになったし、デフェルのことなんて思い出したくもないけれど、このままじゃ、彼は私を諦めたりしないだろうから、絶対にそんなことを二度と思えないように痛い目に遭わせてやりたい。
きっと、デフェルは私なんて何も出来ない弱虫だと思っているはず。
私は弱いかもしれないけれど、だからって何もせずに、ルカ様達に守られてるだけじゃ嫌だわ。
「出来れば、リゼさんには危ない目にあってほしくはないのですが」
パルサ様が大きな目をルカ様に向けた。
「わかってますよ。危険な目に遭わせるつもりはありません。だけど、リゼの気持ちも尊重したい」
「……そうですよね。実際、嫌な思いをされたのは、リゼさんですからね」
パルサ様はしゅんと頭を下げた。
明らかに悲しげな様子が、とても可愛い。
ああ、こんな時に言うべきものではないとわかっているけれど、欲求が抑えられない!
「あの、それはそれとして、パルサ様がご迷惑でなければ触ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんですよ! どうぞどうぞ!」
パルサ様は目をぱっちりと開け、嬉しそうに首と頭を何度も縦に振ってくれた。




