41 伯父の八つ当たり
「何だあれ……」
ルカ様はプレゼント選びに必死だったらしく、アルパカが店の外にいることに、今、気が付いたようだった。
「ルカ様、あれがアルパカです」
「見た目は可愛いっちゃ可愛いな。ということは、あれがレンジロ家の長男か?」
通りの人達は、繁華街の通りに現れたアルパカを見て、驚いた顔をしていたり、直接触ったりして、様々な反応を見せていた。
「何をしに来られたんでしょうか」
「リゼを見に来たんじゃないのか? それにしても迷惑だな。この店に裏口があるか聞いてみるか」
ルカ様がそう言って、店員のところに行こうとすると、扉が開き、アルパカが中に入ってこようとした。
「ああ! 動物は入ってきちゃ駄目です!」
店員が慌てて、アルパカに向かって走っていく。
私達がいる店は紳士小物が売っている店なのだけれど、さすがに動物の入店はお断りらしい。
というか、アルパカの入店を認めるところのほうが少ないわよね。
「リゼ、行くぞ」
「あ、はい」
裏口のほうから出ていこうとすると、アルパカは諦めたのか、大人しく外に出て行った。
私達はそのまま裏口から出て、反対側の通りに出ると、プレゼント選びどころではないから、今日は帰ろうかという話になり、馬車を待たせているところまで戻ろうとした。
「リゼ!」
聞きたくない声が聞こえて振り返ると、そこには伯父様がいた。
「お前のせいで俺は悪者になったんだぞ!」
「……どういうことですか?」
「どうもこうもない! お前が大人しくしていれば、こんな思いはしなくて済んだのに!」
そう言って、伯父様は白いシャツの袖をまくりあげて、私に向かって腕を見せてきた。
目を向けると、伯父様の白かったはずの腕の大部分に焼けただれた痕が出来ていた。
「ど、どうされたんですか……?」
「レンジロ公爵にやられたんだ!」
店の裏側の通りは、そう大きな通りではなく、人の姿がない。
だからか伯父様は怒鳴り散らしながら、私に近づいてくる。
「お前のせいで、ミカナの人生も狂ったんだ! 今は何をしているのかわかるか!? アルパカとかいう生き物の姿をした令息のお世話係だ! しかも、毎日、唾を吐かれまくって、酷い臭いを漂わせている!」
アルパカが裏に回ってきたのか、伯父様の隣に立った。
けれど、突然、踵を返して走り出した。
伯父様も目を見開いて私の背後を指差す。
「うわああっ! ど、どうしてこんなところに豹がいるんだ!」
伯父様は絶叫したあと、必死になって逃げていったアルパカの後を追う。
「ま、待ってください!」
伯父様は叫ぶけど、アルパカはそんなことはおかまいなしで一目散に逃げて路地に入り、姿が見えなくなってしまった。
いつの間にか豹になっていたルカ様が、私の隣に来て呟く。
「ったく、人の姿よりも豹の姿のほうがインパクトがあるなんてなめられたもんだな」
「……一応、アルパカは公爵令息ですし、ルカ様よりかは身分が上になりますから、人間の姿で相手をすると、それはそれで面倒になりそうですし、今回みたいな形でも良いのではないでしょうか」
「向こうもアルパカだしな」
ルカ様は路地に入り、人の気配がないことを確認してから人の姿になって戻ってきて聞いてくる。
「今日はとにかく帰るか。それにしてもアルパカ、リゼに話しかけたそうにしてたな」
「女性が好きだと言ってましたからね。あと、少し気になることがあるのですが」
「どうした?」
「伯父様は、レンジロ家から罰されたということでしょうか?」
何をされて、あんな酷い火傷になってしまったのかわからないけれど、かなり辛い思いをしたと思われる。
「そうだろうな。もしかすると、ミカナ嬢を切り捨てるのはレンジロ公爵家にしてみれば悪手だったのかもしれない」
「自分達の悪事をばらされる恐れがありますものね」
「だから、ミカナ嬢を助けて、彼女に余計なことを話させないようにしたのかもな」
「ということは、ミカナを見捨てたのは、伯父様の勝手な判断だったということでしょうか?」
「……になるんじゃねぇかな」
ルカ様はアルパカ達が走り去っていった方向を見ながら頷いた。




