38:はじめての性能鑑定!(てんせいしたらあかちゃんだったけん!)
(なろうはステータスあったほうがいいことを)思い、出した……!
事務員として、ブラック企業で暴力無双して裁判沙汰になった華麗なる三姉妹(名前:孔雀一花さん、孔雀二乃さん、孔雀三玖さん)を雇ってから数日後の夜。
俺は地元の巨大美術館にて、絵画を背負った『妖術師』の男と追いかけっこしていた。
「あくせるしんくろぉぉぉぉぉぉぉぉ!(うおおおお待てオラーーーッ!)」
以前ミズホに見せた爆走ダッシュ状態だ。
そんな俺に、敵は「ぎゃーッ!? 赤ちゃんが爆速で追いかけてきやがるッ!? キモこえええええーーー!」と叫んでいた。
失礼な。
「くそっ、捕まってたまるか……!」
必死に逃げる男。
それもそうだ。
なにせ『妖術師』には人権がないからな。
「しゃちょぉのむすこ(犯罪者となった術師、それを妖術師と呼ぶんだったか)」
呪術師が特権階級なこの世界。
呪術師なら何やってもいいと思いきや、呪法を用いた犯罪行為だけにはめっちゃ厳しい。
やっちまった者は『妖術師』と呼称され、『妖魔』と同じ扱いとなる。
「わたみ(すなわち人権消失だ)」
殺されても文句は言えない存在となるのだ。
「わたみ、わたみ(逃がさないぞ、お前はもう終わりだ)」
「うぅッ、何言ってるのかわからねぇが、おぞましい言葉発しやがって……!」
いよいよ男を角まで追い詰めた。
この場で殺すつもりはない。
犯罪の手口や関係者を洗い出すためにも、『呪術総會』は“できれば捕縛して渡してほしい”と言っているからな。
でも、あくまでもできればだ。
暴れるんならわかってるな?
「わたみわたみわたみ(抵抗するな大人しく従え心を殺せ)」
「ひぃぃ……!?」
俺の説得が通じてか、やがて男は膝をついた。
「くそっ……強ぇ赤ちゃんだってのは知ってたが、スピードなら負けねえと思ってたのに……!」
なんだ、そんな理由で俺の管理地に盗みに入ったのか。
妙に自信があり過ぎなような?
「ちっちゃい赤ちゃん足でチクショウッ。敏捷ステータスAの俺に、追い付いてんじゃねぇよ……!」
お? ステータスが、なんだって?
◆ ◇ ◆
ある妖術師を捕まえた数日後。
上司ボコってハッピーレディ三姉妹が提案したあるイベントを、俺は上機嫌で開いていた。
その名も、
「ではこれより、『特等赤ちゃんウタ様の握手会』を開催しまーす!」
『やったーーーーーーーっ!』
地元ドームに集まった数万人の者たちが声を上げる。
そう、握手会だ。
アイドルとかがよくやるアレだ。
「あれがウタ様かー。顔めっちゃ可愛い!」
「ガチ赤ちゃんじゃん!」
「目が離せない可愛さ! 地雷系女子みたい!」
ワーワー騒ぐお客さんたち(誰だ地雷系女子扱いしたやつッ!?)。
中には県外から来てくれた人もいるようだ。
その理由は、話題になってるらしい俺と触れ合えるだけじゃなく、
「ウタ様、握手してください!」
「こんるしー(あいよー。ついでに『肉体再生』)」
「わっ、わぁあっ!? 腰痛が消えました!?」
そう。
サービスで“高等術式『肉体再生』かけますよー”と宣伝したら、これだけ集まったのだ。
そりゃ俺に興味ないヤツでも来てくれるわなー。
「ウタ様よろしくお願いします!」
「こんぺこー(あいよ『肉体再生』)」
「うおおおっ、痔が治ったー!?」
「ウタ様自分もお願いします!」
「こんるる~(頑張れ『肉体再生』)」
「わーッ、髪の毛が生えてきたぁッ!? 死んだ毛根が生き返ったー! やったあああああああああああーーーー!!!」
というわけで握手ついでに集まった人々を無料で癒しまくっていく。
普通の術師なら民衆にタダで尽くす真似なんてしない。
みんな権威と利益第一で、四条イラガみたいに非術師を見下しているのが基本みたいだからな。
「ウ、ウタ様、どうか自分も……!」
「こんこんきーつね(任せろ『肉体再生』)」
「ッ、足がッ、なくした足が生えてきたぁッ!? あっ、ありがとうございます! ありがとうございます!」
「かれはじゃい(気にするな)」
笑顔になってくれればそれでいい。
別に俺も善行目的とかじゃなく、修練目的でやってるからな。
というのも、先日パクった妖術師の呪法が面白いんだよな~。
「すてーたすおーぷん(『極札呪法』疑似発動)」
握手の合間に唱えると、俺の前に光の札が現れる。
これは自分だけにしか見えないものだ。
そこに目を通すと、
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対象名:大文字ウタ
肉体特性:
『赤ちゃん』(最弱の期間。素の肉体性能を最低値に固定。柔軟性だけには極大補正)
『水のごとき大脳シナプス』(未熟故新鮮自在な脳細胞。修練による呪力上昇値に極大補正+呪法の疑似習得が可能)
魂魄特性:
『天輪者』(第二の肉体を得た者。他者の肉体への理解度を上げ、『肉体再生』の他者使用を容易とする)
『死傷体験』(死の痛みから得た学び。傷への理解度を上げ、『肉体再生』の技量に大きな補正)
最大呪力値:S+
最大攻撃値:A+(素:E)
最大耐久値:S(素:E)
最大敏捷値:A+(素:E)
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と出た。
なんとこの呪法、自分の状態やら能力値がざっくり可視化されるのだ(素ってのは素の肉体のスペックかな?)。
例の妖術師がやたら自信満々だったのはそういうことだな。
さらにカードの文章は続き、
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・五大技術練度
『衝撃強化』:B+(素の攻撃・敏捷に補正中。呪力量により補正値上昇)
『反発強化』:A(素の耐久値に補正大。呪力量により補正値上昇)
『武装強化』:C(武器使用時の攻撃に補正小。呪力量により補正値上昇)
『呪物無毒化』:D(Dランクまでの呪的毒性を無力化。呪力量により性能上昇)
『肉体再生』:A(高度な治療が可能。死傷への理解度・呪力量により性能上昇)
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とある。
自身の性能だけじゃなく、呪力操作による五大技術の練度も見れるのだ。
他にも呪法の練度まで見れたりな。
「へいきんち~!(能力値わかるとやる気が出るな~!)」
「あ、ウタ様がなんか突然笑ってる可愛い~! ODキメた地雷系女子みた~い!」
「いかんのい!!!(なんだそのコメントはぶっ殺すぞテメェ!?)」
俺が指をぺにょっと鳴らすと脇からミズホが時速220kmで出現。
フシューーーーーッと鳴きながら問題の客をどっかの部屋に咥えて行った。
さて。
これからは文字通り、成長度合いが目に見えてわかるわけだ。
モチベーションも上がるってもんだよ。
「ウタ様お願いしますっ」
「どうかこの子をッ!」
「お手を貸してくださいッ……!」
というわけで『肉体再生』の修練ついでに民衆を癒すことに決定。
三姉妹提案の握手イベントにオマケする形で、みんなを回復させまくって経験値上げまくってるわけだぜ!
「うぅ、実は彼女寝取られて脳が壊れちゃって……」
「あろーら、もこうともうします(生きろよ『肉体再生』)」
「治ったぁーッ!」
よかったね!!!!!
・なんとかなるなるなるみるな!!!!!!!(※寝取られた現実はどうにもならない)
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