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面倒くさい少女たち  作者: 深井陽介
第4話 Cheering Girl's Love
21/48

4-4 遠ざかる絆にエールを

電話のシーンは、全セリフが第3章4話『思い出が遠くても』と完全に共通しています。ようやく同時進行スタイルに意味を持たせられましたよ……。


 わたしがいつから、女の子同士の恋愛に抵抗感をもたなくなったのか、自分でも分かっていない。もしかしたらかなり早い段階で、そういう形の恋があってもいいんだ、と理解できていたかもしれない。周囲に女の子同士で付き合っているという人はいなかったと思うけど、それが異常であると後ろ指を差すような人もいなかった。偏見をもたないまま高校生まで成長したのは、きっとそのおかげだろう。

 だけど一方で、わたし自身が女の子を好きになることはないと思っていた。それはそういう性質の人の話であって、自分とは無縁のことだと。だからたとえば、わたしが女の子から告白されたら、わたしはその想いを否定することはしなくても、受け止めることはしなかっただろう。

 恋に憧れはあるけれど、それは周りの人たちと大差ない、少数派に属さないタイプになるだろうと、初めから決めてかかっていた。だが、ずっと一緒にいた親友二人が、女の子同士で付き合い始めたことで、その自信が揺らぎだしている。

「女の子同士でも構わない、なんて思ってきたつもりはないんだけどなぁ……」

 わたし、矢澤(やざわ)波花(なみか)は、ベッドに仰向けに転がって、果てない自問自答を続けている。時間の無駄づかいだってことは分かってるよ、うん……。

 あの二人……楢崎(ならさき)鞠亜(まりあ)倉知(くらち)明菜(あきな)が順調に仲を深めている様子に、当てられただけかもしれない。わたしだって恋をしてみたい。そしてその形にこだわりはない。でもわたしの憧れは少しずつ、今の彼女たちの形に成り変わりつつある。鞠亜と明菜のふたりは、明らかにレアケースのはずなのに。

 女の子同士だろうが、そうでなかろうが関係ない。ただ純粋に互いを想いあえる。そんな恋をしてみたいという欲求が、日に日に強くなっている。

 しかし……アイスやパフェを食べたいという欲求とは違い、恋愛の欲求は相手を見つけるまでが途方もなく長い。だから普通は、どんな“恋愛したい”もお話程度で終わるものだ。わたしも今まではそうだった。それなのに、今のわたしは、“恋愛したい”をお話程度で済ませられずにいる。

「なんでこんなに……そもそもこれってホントに、恋をしたい思いが強くなっただけなのかな」

 わたしがこんなことを考えるようになったのは、現在進行形で関係を深めているあの二人を、見る目が変わってきたと思うからだ。あの二人を見ていると、なんだか……。

「波花ぁ、起きてるー?」

 部屋の外から母の呼ぶ声が聞こえてきた。真っ昼間なのに、わたしがまだ寝ているとでも思っているのか、あの人は。わたしはベッドから起き上がり、部屋の外に出た。

「起きてるよ、失敬な」

 階下にいる母に向けて言い返したけど、母には通じなかった。

「そうめん用のつゆを切らしてたの、すっかり忘れてて……悪いけど買ってきてくれない? お母さん、これからちょっと仕事しないといけないから」

 母はどこかの大学教授の下で事務仕事をしているという。

「その仕事を後回しにして買い物に行くという選択肢はないの?」

「推薦入試の答案整理よ。時間見つけながら進めないと終わりそうにないの。なるべく後回しにはしたくない」

「……アイスも一緒に買ってきていいなら行くけど」

「はいはい、勝手にしなさい。言っとくけど、ついでに買っていいのはアイスだけね」

 それだけでも許してくれるなら十分な温情だ。わたしは母から千円と買い物袋を受け取って家を出る。

 ここ最近はぐんと気温が上がっているけど、わたし自身はそんなに暑さが苦手じゃない。じわりと汗がにじむくらいなら割と平気だ。照りつける日差しに、反射的に手をかざしながら、わたしは近所のコンビニへ繰り出した。安くはないけど、時間をかけるよりはいいだろう。

 コンビニに向かう道の途中には、小さな公園がある。さすが夏休み、楽しそうにはしゃぎ回る子どもでにぎやかだ。

 小学校の頃、ここで鞠亜とよく一緒に遊んでいた。お節介なわたしは、いつもひとりで寂しそうだった鞠亜を、ことあるごとに連れ出して遊びに付き合わせていた。バカだったから、そうやって連れ回すことが悪いとは思わなかったけど、ある時、遊んでいる最中に鞠亜が怪我をして、そこでようやく、もしかしたら迷惑なことをしたのではないかと思い始めた。わたしの両親や鞠亜の親御さんは、わたしを責めてこなかったけど、鞠亜に対する後ろめたさは残った。

 だけどそれから、鞠亜は自分からわたしの遊びに関わるようになった。多少の無茶も、眉ひとつ動かさず付き合ってくれた。何が鞠亜に気持ちの変化をもたらしたのか、今でも分からないし、本人も教えてくれない。

 同じようなことは明菜との間にもあった。最初こそわたしがぐいぐい積極的に絡んでいただけだったが、ある時を境に、わたしが何も言わなくても付き合うようになった。たぶん一年前の夏、というか二学期に入ったあたりからだろうか。でも去年の夏休みは、明菜が遠方の親戚の家に行っていて、ほとんど会っていないから何も起きようがないのだが。

 こうして振り返ると、あの二人についてはまだ分からないことが多い。友達とはいえ、それは当然なのかもしれないけど、二人の恋路をひたすら応援したい立場としては、知らないことがあるとどうも気分がよくない。彼女たちのことを知らないと、的確なアシストができないからだ。いや、本当にそれだけなのかな……。

 用事はまだ済ませてないけれど、どうにも落ちつかない。鞠亜との色んな思い出がある公園では逆効果かもしれないが、とりあえず景色でも眺めて気持ちを落ちつけよう。わたしはそう考え、公園のベンチに腰かける。

「うぅむ……どうしたらいいものか」

 生来(せいらい)頭の悪いわたしが、こんな複雑なことで延々悩んだところで、解決にこぎつけられるはずもない。そもそも何に悩んでいるのかさえ上手く説明できないなら、誰かに相談することも難しい。ともすればわたしの人間性にも関わることだから、赤の他人に話を聞いてもらうのはよくないだろうし、かといって鞠亜と明菜の二人に打ち明けるのは論外だ。そうすると……。

「あの子しか、いないよなぁ……」

 友達はたくさんいる。だけど、こんな込み()った話を冷静に聞いてくれる人は、彼女以外に思い当たらない。わたしはスマホを取り出し、メッセージアプリから電話をかけた。コール三回で相手は電話に出た。

「もしもし?」

「あ、もしもし(かなで)ちゃん? 久しぶりだね~」

「矢澤さん……久しぶりっていうほど長く離れてはいないのに」

 聖木(ひじりぎ)奏。一学期までわたしと同じクラスにいた女の子。残念ながら親しくなる前に転校してしまったけど、今でもメッセージでやり取りする仲だ。そして彼女、鞠亜と明菜の事情についても知っている。相談相手にはもってこいだ。

 とはいえ、どう切り出したものか……とりあえず適当に話を進めるか。

「どう? 島暮らしは満喫してる?」

「まあ、それなりに……初めのうちこそ結構バタバタしましたけど、今は落ちつきましたよ。あぁ……そんなでもないかな」

「どっちだよ、もう」

 思わず笑ってしまったけど、ふと思い出した。以前、奏がわたしに頼まれて送ってきた、離島で撮った海の写真。どう見ても一緒に写っている女の子がメインだったような。

「まあでも、奏ちゃんってうちの高校にいたときから、ひとりで過ごしていることが多かったから、友達とかができるとかえって落ちつかないかもしれないね」

「……友達?」

「え、ほら、この間わたしに送った写真……あれに写ってた女の子でしょ」

「友達……なのかな」

「えー?」

 何を迷うことがあるんだ。あの少女の笑顔を見れば、ただの知り合いだと言われたって誰も信じない。

「あんないい笑顔、赤の他人には向けないでしょ。というかあれって、引っ越して間もない頃に撮ってるよね。奏ちゃん、こんなに早く友達ができるなんて、やるじゃん」

「ああもうあの人のことはどうでもいいですから! それより、矢澤さんこそ何の用で電話してきたんです?」

 はい来た。でももう少し心の整理ができてからにしてほしい。

「いやぁ……ちょっと、声が聞きたくなって」

「矢澤さん、それは心に重いものを抱えてしまった人の常套句ですよ」

 …………。

 ぐうの音も出ない。三ヶ月ちょっとしか一緒にいなかったけど、奏の鋭さはよく分かっているつもりだ。さて、どうするべきか……。

「……相変わらず、冷静沈着だね」

「どうしました? 前と様子が違うみたいですけど……」

「色々あってね。まあ、話せば長くなるっていうか、うまく話せる自信がないっていうか……」

「楢崎さんと倉知さんの二人と、何かあったんですか?」

「のぁっ!? なっ、なぜに……!!」

 唐突に図星を突かれて、驚きのあまり分かりやすい反応をしてしまった。いかんな、自分でも整理がついていないのに、このままではトントン拍子に話が進んでしまう。

「いえ、なんとなく。そういえば、前に皆さんで海水浴に行ったんですよね。そこで何かが?」

「いーやぁ……何か、ってほどたいしたことはないんだけどぉー……」

「ごまかし方下手ですか」

 やっぱりダメか。言葉を濁したって奏には通じない。

「何があったのか知りませんけど、わたしの声を聞くだけで何も言わないっていうのは、ちょっと扱いが悪すぎると思います。手助けできる距離にいませんし、頼りにはならないでしょうけど、愚痴くらいは聞いてあげますよ」

「奏ちゃん……」

「色んな手違いで、こっちはだいぶ暇を持て余しているので」

「暇つぶし感覚で相談を聞くというのもどうなのかなぁ……」

 まあ、ちゃんと話を聞いてくれるならありがたいけど。上手く説明できる自信はないけど、奏がここまで真摯になってくれるなら、わたしも努力しなければ。

「えーと、どこから話すかな……奏ちゃん、鞠亜と明菜が付き合い始めたのは気づいてる?」

「なんとなくそうだろうとは思っていました」

「終業式の日に鞠亜が告って、その日からもう付き合い始めてんだ。今じゃ順調に関係を深めていて、まだ初々しい所はあっても、ちゃんと恋人の付き合いができているみたい。まあそれは二人の友達として嬉しい限りなんだけど……ここ最近、そんな二人を見ていると、なんだかこう……胸が苦しくなるっていうか」

 うぅむ、こうなるとは思っていたけど、やっぱり要領を得ない。ここは奏の賢さが察してくれることを祈るしかないだろう。

「それ、二人が普段から恋人みたいに仲良くしている時に、いつも感じますか?」

 おっと、なんとか察してくれたか。わたしは考えを巡らせる。

「うーん、そうでもないかな……なる時とならない時があって、自分でもよく分からない」

「じゃあ、最近だと、どういう時に胸の苦しさを感じました?」

「やっぱり海に行った時かなぁ。あれからもちょくちょく会ってはいるけど、いたたまれない感じになったのは、たぶん海に行った時が最後だね」

「どんなことがあったんですか? できる範囲でいいので教えてくれますか」

「いいけど……奏ちゃんって、わたし達のことでそんな積極的だったっけ」

「……こっちは不慣れなのに相談を受けている立場ですけど」

 ちょっと不機嫌そうな声で奏が言い返す。向こうにも探られたくない事情があるようだ。

「ごめんごめん。海での出来事か……最初はなんともなかったんだよ」

 そしてわたしは海水浴の顛末を、奏に打ち明けた。水着に着替えて、しばらく浜のそばでビーチバレーボール、その後の休憩時間で、わたしの名前に関する衝撃の事実が判明、そしてわたしが飲み物を買うために二人から離れた。ここまでは……まあ普通だった。だけど戻ってくると、二人がゲスな男たちにナンパされていて、レズに対するヘイト発言をしたことで、わたしの怒りを買ってボコボコにされた。……そう、これが転換点だった。

「そっか……二人を応援していた立場からすれば、確かにそれは腹が立ちますね」

「でっしょー?」

「……でも、話を聞く限りだと、あの二人の距離感が一気に縮まった瞬間に、矢澤さんが胸の苦しい感覚を覚えたように見えますが」

「一気に?」

「そうです。矢澤さんが想定した通りに、二人が互いを意識した時には、矢澤さんも普段と変わらないですけど、想定外の形だと違うんじゃありませんか」

「あー……言われてみればそうかも。考えてみればあの時も、不意打ちを食らったような感じだったなぁ。うん、今までに変な感じがしたのって、みんなそういう時だったかも」

 やはり他人の話を冷静に見つめてくれる人がいると、自分では気づかない事に気づけてとても助かる。おかげで結論が見えそうだ。

「つまりわたしは、予想もしなかったことで動揺しただけってこと?」

「ただ動揺しただけなら、そもそもこんなに引きずらないんじゃありません?」

「それもそっか。じゃあどういうことなんだろ」

 わたしの気持ちが何なのか、まだ答えを出すには手掛かりが足りない。今まで二人と過ごしてきた時間の中で、ヒントになりそうな出来事はあっただろうか……。

 うーん、と考えを巡らせていると、電話の向こうで奏が告げてきた。

「……もしかしたらわたし、矢澤さんのその気持ちが何なのか、分かるかもしれません」

「え? ホントに?」

「ええ……その前に少し、わたしの知り合いの話をしてもいいですか」

「それ、本当は自分の話だけど恥ずかしくて言えない人の常套句だね」

 奏がさっき使ったセリフを拝借してみた。

「……別に恥ずかしいわけじゃなくて、本当にわたしの話をするつもりでしたよ。わたしと、知り合いに関する話です」

「もしかして、写真の女の子のこと?」

「こういう時だけ勘がいいですね……」

 呆れたような声で返事する奏。そうだなぁ……あの女の子のことも気になっていたし、いい機会だから奏の口から聞きたいな。

「あの人とは、島に来てすぐに出会ったんですが、なぜか早々に気に入られてあちこち振り回されるようになって」

「うわー、奏ちゃんそういうの苦手そう」

「まあ最初は渋々でしたけどね……でもそのうちに、どこか楽しみに思うようになりました。その人と一緒に色んなものを見て、色んなことを経験して、島での出来事を思い出すといつも、その人のことが思い浮かぶくらい、同じ時間を一緒に過ごしました。ことあるごとにその人のことを考えるようになって、そのたびに心臓が締めつけられるような気持ちになるんです」

「あはは、まるで恋でもしたみたいな感じだねぇ」

 このセリフに対する、奏からの返答はなかった。

 どうやら奏はその少女のことを、少なからず特別に思っているようだ。知らない仲じゃないし、もし彼女がその子と関係を深めたいなら、遠距離ながら応援してみたい気持ちもある。

 それにしても、濃密な時間を共有するうちに思い出が増えて、ことあるごとにその女の子のことを考えるようになって、そのたびに胸が苦しくなるとか、なんだか……。

 なんだか……え?

 どういうことだ。まるで、今のわたしと同じじゃないか。

 まさか、わたしが鞠亜と明菜の二人に抱いている気持ちは、強い憧れとか、置き去りにされる不安や焦りとかじゃなくて……。

「…………うそ」

「簡単に決めつけていいものではないと思いますけどね。でも、わたしにとって、あの人に心惹かれるものがあるように、矢澤さんにとっても、あの二人には心惹かれるものがあるんじゃないですか? わたしから言えるのはこれだけです」

 心惹かれるものか……それならいくらでもある。百個挙げろと言われても容易にできる。友達としてずっとそばにいて、ここ最近は二人を互いに意識させるため、二人のいい所を見つけてはそれとなく相手に吹き込んできた。お互いのことを知って、もっと好きになれるように……。

「……まいったなぁ」

「どうしました?」

「奏ちゃんの言ったとおり、やっぱり予想外ってだけじゃなかった。考えてみれば、海でも他に予想しない出来事があったけど、同じような感じはしなかったし。でもって、今この状況でも同じ感じはしてない。けどまさか……友達どころじゃなかったなんて」

 そう、わたしは……大好きな二人を幸せにするために、色んなことを考え、色んなことをしてきた。そしてやりすぎた。二人の気持ちに移入しすぎたのだ。恐れていた事態になった……もうわたしにとって鞠亜と明菜は、友達どころじゃなくなってきている。

 相談したいことはぜんぶ相談したので、この辺で通話を終わらせる。惜しむらくは、しばらくわたしのことで気持ちの整理に時間を費やすから、奏の応援はできそうにない。

 さて、このままでいいはずはない。恋だと断言はできないものの、わたしは今、二人の恋路を応援するときに障害となるほどの、強い想いを抱いてしまっている。まだ鞠亜と明菜の恋は進展の途上にある。わたしは、他ならぬ友達のために、自分の気持ちに決着をつけないといけない。


 翌日、鞠亜と明菜はデートに出かけた。場所は隣町にある遊園地。わたしが二人のデートスポット候補に挙げていたところだ。夏休みでしかも日曜日なので、たくさんお客さんが来ている。

「やっぱ人がいっぱいいた方が盛り上がるよねぇ。静かなのもいいけど、騒がしい方がデートのしがいがあるってもんだね」

 ええ、もちろんわたしも来ています。来ないわけがない。

「だから友達のデートになんでついてくるんだよ」と、迷惑そうな顔の明菜。

「そりゃあ二人が人目を忍べる場所を見つけてはイチャコラするところを我が目と写真に焼き付けるために決まってるでしょ」

「人目を忍んでいると思うなら引っ込んでろ」

 ずいぶんな物言いだ。よほど誰にも邪魔されずに鞠亜と二人きりになりたいらしい。

「まあまあ、せっかく来たんだから、三人で楽しめる所は楽しもうよ」

 さすがの鞠亜サマはわたしを受け入れてくれた。嬉しくて、わたしは目線より下の鞠亜の頭をポンポンと軽く叩く。

「いいねぇ、鞠亜は優しい子だねぇ」

「なんで保護者みたいな感じに?」

「あーもう、行くならさっさと行くぞ」

 自分の恋人とスキンシップをとってきたわたしに軽く嫉妬したのか、明菜はわたしの服の襟首を掴んで引き離しにかかった。ちょ、首、首が、絞まるから。

「だったらわたし、まずコーヒーカップに乗りたい」と、鞠亜。

「おー、行こう行こう」

「ぐ、ご、ご、ごぉ」

 いきなり後ろから引っ張られたせいで体勢が崩れ、早足で歩く明菜に襟首を掴まれたままズルズルと引きずられているわたし。……喉が圧迫されて言語が崩壊しています。

 最初は鞠亜のリクエストに応え、回転コーヒーカップに三人で入った。制限時間いっぱいを使って、真ん中のハンドルを(わたしが)操作して高速で回りまくる。わたしは割と三半規管が強いのか(適当なこと言ってみた)、このくらいの回転なら平気だったけど、鞠亜は……。

「あうぅぅ……あぁ頭がぐるぐるするぅぅ……」

 完全に目を回していた。平衡感覚が狂ったのか、ぐらぐらと体が左右にぶれていて、そのたびに隣の明菜に肩がちょんちょんと当たっている。一応まだ感覚がはっきりしているらしい明菜は、別の意味で目を回していた。

「鞠亜からいっぱい触ってきてるじゃん、よかったねぇ」

「というかそろそろ回転止めろ」

 制限時間が来たのでコーヒーカップを降りると、まだ目を回している鞠亜は、おぼつかない足取りでくるくると回り始めた。なんだかバレエでも始めそうな勢いだ。

「さっそく遊園地の洗礼を受けたなぁ、鞠亜」

「どちらかというと、お前とコーヒーカップの洗礼だろ。さて、次はどこ行く?」

「鞠亜がこんな感じだし、次はちょっと穏やかなやつにしない?」

 そういうわけで、次はメリーゴーラウンドに向かった。同じ回転系とはいえ、だいぶゆるい回転なので、鞠亜が調子を取り戻すにはちょうどいい。ほどよく上下に揺られて、少しずつ感覚を取り戻しているようだ。

「たまにはこういうのもいいね、明菜ちゃん」

「そうだな……すぐ目の前にあからさまな盗撮犯がいなければな」

「もぅ、せっかく乗ってるんだから二人で笑顔を向けあいなさいよ」

 わたし達は前後に並んで馬に跨っていて、わたしが進行方向でいちばん前に来ている。二人の表情を間近でしっかり撮れるのは、このポジションしかないのだ。もっとも、こっちだって上下に動いているから、撮れるかどうかはスマホの性能次第だけど。そもそも二人とも、カメラを警戒してなかなか笑顔を見せないし。ぐぬぬ。

 結局あまりいい写真を撮れないまま制限時間がやってきて、わたし達は馬から降りた。さて、次はどこで二人をイチャつかせるか……思案するわたしをよそに、鞠亜と明菜は並んで歩きながら、仲良さげに語らっている。

「やっと調子が戻ってきたよ。明菜ちゃん、次はどこ行こっか?」

「そうだなぁ……このままブラブラ歩いて探すのもいいけど……あっ」

 明菜は何かを見つけて立ち止まった。その視線の先には、ツタがびっしりと生えた木造のボロい建物がある。入り口らしき両開きのドアの上に掲げられた看板には……。

「お化け屋敷、かぁ……」

「『ミッドナイト・ホラーキャッスル』っていう名前はちょっとセンスを疑うけど、デートなら欠かせないアトラクションかな。よし、これにしよう」

「えぇー……?」

 明菜は即決したが、不満を口にした人もいた。それはわたしである。

「どうした波花、怖いのは苦手か? だったらついて来なくていいぞ。鞠亜と二人で入るから」

「いや、そうじゃなくて……お化け屋敷の中って、たいてい真っ暗でしょ。だから……二人が恐怖をダシにしてイチャついて、吊り橋効果よろしくドキドキさせられて顔が真っ赤になっても、暗くてしっかり拝めないじゃないか!」

「やっぱり入ってくるな」

 冷たいヤツだ。お化け屋敷というシチュエーションに不満はあるけど、だからって友人のわたしを放置するなんてひどいじゃないか。

「うーん……」不安そうな顔の鞠亜。「わたしはあんまり得意じゃないけど、でも明菜ちゃんが言うなら入ってみる!」

「おー、この夏休みの間に、ずいぶんアグレッシブになったもんだね」

「明菜ちゃんとつり合うような女の子になりたいから!」

「鞠亜はそのままでも十分だって」

 フッとため息をつきながら、クサいことを言ってのける明菜であった。とはいえ、鞠亜にこう言われて嬉しくないわけがない。こっちは相変わらず気持ちを口に出すのが苦手みたいだ。

 さて、三人で揃ってお化け屋敷(名前はダサいので使わない)に入ったところで、予想もしない事態に直面した。

 明かりの全くない廊下を、最初は普通に進んでいたわたし達。しばらくして、廊下の脇で赤いライトが突然ついて、おぞましい表情をした大きな人形が現れた。不気味な妖怪みたいなものに、ひん剥いた目を向けられて、さすがにこれは冷や汗が出る。

「ひやああぁっ!?」

 鞠亜は思わずしがみついて、ビクビク震えだす。……ちなみにしがみついた相手はわたしです。

「こら鞠亜、わたしに抱きついたら意味ないだろ。そこはせめて明菜に……え?」

 鞠亜は左腕に抱きついている。しかし、右腕にも何者かがしがみついている。よく見たらそいつは明菜だった。鞠亜と同じようにビクビク震えている。

「ちょ、明菜……あんたもしかして、怖いの苦手なの?」

「わたしも知らなかったんだよ……今までホラーものって映画でも見たことなかったから、自分でも苦手だと思わなくて……」

 経験ないから分からなかっただけかよ! よくそんな体たらくでお化け屋敷入りを即決したな。もしかしてこいつ、ガラになくデートで浮かれていたのか。

 わたしが呆れ果てていたところに、今度は別の場所のライトがついて、鎖で繋がれたゾンビ風の化け物が大声で唸りながら暴れ出した。

「「うぅああぁっっ!!」」

 鞠亜と明菜は揃ってわたしにしがみついてくる。おかしい、こんなはずでは……。

「な、波花……お前は平気なのか……?」

「入り口の時点ですでに否定したよね、それ」

「波花ちゃぁん……足が、足が動かないよぉ……」

 女の子ふたりに両腕をそれぞれぎゅっと抱きしめられ、唯一頼りにされている状況。これは……両手に花といっていいのだろうか。なんか違う気がする。

 まいったな……本当なら、明菜が鞠亜をエスコートして(または力を合わせてクリアして)、わたしはそれを遠巻きに眺めながらエールを送るはずだったのに。二人がこんな調子では、傍観者になどなれそうにない。というか放っておけない。

 仕方ない。必要以上の介入はしたくなかったけど、二人が怯えたままでは色々と先に進めない。

「二人とも、しっかり掴まってて。絶対に離れないでよ」

「「え……?」」

「わたしは二人を、必ずくっつけるって決めているから。わたしにしがみついていれば、離れることはないでしょ」

 そう言ってわたしは、両脇を締めて、腕にしがみつく二人を離さないようにしながら、歩き出した。鞠亜と明菜も、なんとかついてこようとする。

 暗闇のなか、たまに狙いすましたように現れる化け物たちに驚かされながらも、わたし達は曲がりくねった廊下をひたすら進んでいく。お化けが現れるたびに、二人がわたしの腕にしがみつく、その力が強くなる。やわらかな腕が、胸が、深く触れる。

 うぅむ……今までだって、この三人でスキンシップは山ほどしてきたはずなのに、どこかいつもと違う感じがする。緊張のせいか冷たい汗がにじみだす。暗い所にいるせいかな。それとも……。

 この二人に対する気持ちが、以前と変わってしまったせいなのか?

 答えは出せないまま、わたし達は出口にたどり着き、ようやく明るい場所に出た。恐怖から解放されて、鞠亜と明菜はわたしの腕から離れた。結局、中にいる間ずっとしがみついていたな……。

 ふと、このアトラクションの看板を見上げる。

『ミッドナイト・ホラーキャッスル』

 ネーミングセンスは微妙なくせに、中身はかなり上等だったじゃねーか。

 そろそろ空腹の気配も近づいてきたので、わたし達はカフェレストランのテラス席に移動した。鞠亜はホットドッグ(5個)にかぶりつき、明菜はエビドリアを上品に食し、わたしは名物のイチゴパフェを堪能する。わたしだけ昼食じゃなくデザートだって? いいじゃない、パフェがお昼でも。

「はあ……」食べながらため息をつく明菜。「みっともない所を見られてしまった」

「全くだよ、自分で選んだアトラクションで醜態を曝したら世話ないわ。わたしがいなくて二人きりだったら、もっとひどいことになっていたよ」

「それを言われると返す言葉がない……まさか自分が、ここまでホラーがダメだとは思わなくて。鞠亜にもがっかりさせてしまったみたいで、本当にすまん……」

 明菜がガチで反省するって、ネコ公園での出来事以来かもしれない。さすがに恋人の前で、イメージが崩れるようなことはしたくなかったようだ。

「だ、大丈夫だよ、気にしてないって」フォローに回る鞠亜。「明菜ちゃんがこういうの苦手なのは意外だったけど、わたしは明菜ちゃんのこと、もっと知りたいって思ってたから」

「鞠亜……」

「そもそも、わたしも怖すぎて頭が混乱してたから、明菜ちゃんが何をしてても気にする余裕なかったし」

 思い出したように顔が真っ青になって、自嘲する鞠亜に、明菜もわたしもなんだか上手く突っ込めない。どうやら明菜の醜態を、鞠亜が見ることはなかったようで。とりあえず友人の名誉のために、お化け屋敷での明菜の言動は、鞠亜に訊かれても話さない事にしよう。

「でも、波花ちゃんの言ったことは本当にそう……もし二人だけだったら、無事に出口にたどり着けたかも分からないし」

 いやそれはさすがに……と言いかけてやめた。二人で顔面蒼白のまま抱き合って、その場で腰を抜かしてスタッフに助けられる、そんな光景がありありと目に浮かぶ。それで出口まで案内されたとしても、決して無事とはいえないだろう。

「はあ、我ながら情けないよ……」頬杖をついて憂鬱な顔を浮かべる明菜。「恋人として鞠亜をリードしたかったけど、結局また波花に助けられちゃった……鞠亜に好きだと言ったときも、海でナンパに絡まれたときもそうだ。まだまだ、波花の助けなしでは、やっていけそうにないなぁ」

「そんなこと……」

「わたしだって」わたしが反論する前に、鞠亜が口を開く。「明菜ちゃんに告白する前は、何度も波花ちゃんに助けてもらったよ。ううん、今でもそう……臆病なわたしのこと、波花ちゃんが何度も背中を押してくれた。波花ちゃんがいないと、わたし、まだ何もできそうにない」

 二人とも、まるでわたしに気を遣うように笑いかけている。

 依存。

 今の二人がわたしに向けている感情の奥底には、それがある。恋愛に不慣れな二人が、関係を深める時にいつもわたしの力を借りていたせいで、この先の進展のために、わたしが不可欠な存在だと思い始めている。

 だけど、それじゃいけない。二人のことを特別だと割り切れていないわたしを、これから先も、きっと関係を深めていく二人の間に置き続けていたら……それは二人のためにならない。

「……二人とも、わたしを頼ってくれるのは嬉しいけど」

 空になったパフェのグラスの中にスプーンを置いて、わたしは言う。

「わたしの希望としては、二人には、わたしがいなくても恋人でいられるようになってほしいかな。わたしはいつまでも友達でいたいけど、二人がめでたく結ばれる段階になっても関わり続けるのは、さすがに無理があるだろうし。まあ、月下氷人(げっかひょうじん)として後々の語り草になるならいいけどね」

「だから気が早いんだっつの……」

 言葉の意味が分かる明菜はすぐに突っ込んだけど、分からない鞠亜は首をかしげるだけだ。

「まあ要するに、友達として何かをするなら一緒がいいけど、恋愛絡みで二人が何かするなら、わたしのことは空気とか観葉植物だと思えばいいよ。恋愛は二人でするものなんだから、わたしがいつまでも関わるようじゃダメだってこと」

「そりゃあ、いつかは波花がいなくても鞠亜をエスコートできるようになりたいけど、わたしは、波花との関係を今より弱くするつもりなんてないよ」

「いや、だから……」

「わたしだって、波花ちゃんにいつまでも頼ってばかりなのは嫌だよ。だけど、波花ちゃんを置いてきぼりにするのはもっと嫌だよ。友達なら、わたし達のこともいっぱい聞いてほしい」

 やっぱりこの二人、わたしを手放す気なんてないみたいだ。わたしが、他ならぬ二人のために、どれだけ気を遣ったとしても。

 ああ……これが、優しさなんだろうな。だから、つらい。

 二人にこの気持ちは伝えられない。だったら……やれることはひとつしかない。

「お昼、食べ終わったね。じゃあ今度は絶叫系でもいってみる?」

「あんまり激しいとリバースしかねないからほどほどにな……」

 この後、わたし達は続けざまにスピード系のアトラクションに乗り込んだ。食事の直後なので、最初は軽めにバイキングマシン、次はドロップタワー。ジェットコースターや回転ブランコはその後に回した。どれも二人をこっそり撮影するなんて無理そうだから、遊園地側がサービスで撮影した写真で我慢したよ。

 陽が沈みかける時間まで、あるだけのアトラクションを遊び倒した。鞠亜と明菜は、残された時間を無駄にしないように。わたしは、まとわりつく想いを振り払うように。

 閉園まで三十分を切ったところで、締めのひとつに選んだのは、デートのラストの定番である観覧車。ここの観覧車はとびきり大きくて、ゴンドラが六十個にも及ぶ。いちばん高い所まで達すれば、遊園地の敷地のみならず、この街の遠くまで見渡せるほどだ。

「一応初めに聞いておくけど、高い所がダメな人はいないんだよね」

 お化け屋敷の二の舞は御免(こうむ)りたいので、わたしは事前に確認する。まあ、聞かなくても答えは分かっているけどね。

「いたら今ごろ無事じゃ済まないだろう。絶叫マシンいくつも乗っているわけだし」

「わたしも全然平気だよ」

「それなら結構。あとは二人がゴンドラの中で何をしても問題なさそうだね」

「おい、何を想像している」

 よこしまな想像を予想したのか、明菜が怒ったように言ってきた。でも、わたしは何も想像していない。しても面白くなくなるのは分かりきっていたから。

「波花ちゃんは一緒に乗らないの?」

「うん、乗らない。二人の逢瀬の邪魔はしたくないし、他のゴンドラに乗ったところで、二人の様子を窺うのは難しそうだし」

「何を言ってんだ、お前」と、明菜。

「乗ったところで二人のためにできることはないだろうから、下で待つことにするよ。キスのひとつでもやったら後で教えてねぇ」

「きっ、キスって……!」

 鞠亜は顔を真っ赤にするが、明菜は平然としている。

「魚へんに喜ぶって書くやつだろ。波花は行かないみたいだし、さっさと行くよ、鞠亜」

「あ、明菜ちゃん、手、手痛い……握るの強いって」

 鞠亜の手を引いて観覧車の乗降口に向かう明菜だが、平静を装っても緊張が端々に出るようで、鞠亜の手を握る力が勢い余っている。ごまかし方下手かよ。

 いや……たぶんだけど、わたしも自分の気持ちを、うまくごまかせている気がしない。

 二人を乗せたゴンドラが、ゆっくりと、ゆっくりと、弧を描いて、空の方へと離れていく。途中までは、窓ガラスの向こうから手を振る鞠亜の姿が見えたけど、やがて真下からは角度的に見えなくなるまで、ゴンドラは遠ざかっていく。

 二人はここから、地上に戻ってくるまでに、どんなことをするのだろう。キスのひとつでも、とは言ったものの、恥ずかしがり屋の二人だとそこまでが長いだろうな。でも運がよければ、それより先もあるかもしれない。……上手く想像できないけど。

「……ううん、違う」

 想像できないんじゃない。無意識のうちに想像するのを抑えている。そんなことは自分でよく分かっていた。

 楢崎鞠亜に、倉知明菜。どっちもわたしの、大切な友達。二人が幸せになれるなら、二人の恋を終わりまでずっと応援したい。たとえそれが、わたしの気持ちを置き去りにして、遠く手の届かない存在になるものだとしても。

 すぐ近くのベンチに腰かける。観覧車は全体が見渡せるけど、ゴンドラの中はもう見えない。

 今ごろ二人は何してるのかな……なんだか、本当に遠くに行ってしまったみたいだ。

 わたしは、二人と一緒にいたかった。これまでも、この先もずっと。二人の間に何もなければ、それが普通にできたかもしれない。だけど、二人が恋人になったことで、わたしは、自分の気持ちと二人の幸せを、天秤にかけるしかなくなった。いや、どっちが大切かなんて、最初から分かりきっていた。

 わたしは二人を幸せにしたい。笑顔にしたい。だって……。

「好きな人には、幸せになってほしい……」

 このまま気持ちを閉じ込めてしまえば、気休めでも一緒にいられるだろう。だけどそんな時間は長く続かない。いつまでも抑え込める保証なんて、どこにもないからだ。いや、二人はとても優しいから、些細なことで優しさを受け止めてしまえば、もう気持ちに歯止めが利かなくなる。そうなればもはや友達ではいられない。

「だったらもう……これしかない」

 そう自分に言い聞かせ、わたしはベンチから立ち上がる。

 そして、恐らくゴンドラが観覧車のてっぺんに来たタイミングを狙って、わたしはその場から駆け足で逃げ去った。


 きっとわたしは後悔するだろう。二人を好きになったことを。逃げ出したことを。二人を裏切ってしまったことを。

 だけど、あの二人はもう、わたしの手が届かない遠くへ行ってしまった。そして、そのまま遠い存在でいてくれないと、ダメなんだと気づいた。二人に追いついてしまえば、手が届いたら、恋路を歩む二人を引きとめてしまう。

 どちらにしても、わたしはもう、あの二人にエールを送れない。応援は事情を知る第三者だからできることだ、気持ちが同化すれば応援なんてできない。そう、今のわたしでは……。

 息を切らしながら、できるだけ遠く、遠く、あの二人から離れていく。

「あれ? 波花のやつ、どこ行った?」

「えぇ……? 待ってるって言ってたのに」

 走る。走る。

 走る。

「あぁっ!」

 アスファルトの凹みにつまづいて、わたしは前のめりに転んでしまう。

 膝と肘と手のひらをしたたかに打って、じんじんと痛みが体中に広がっていく。

 瞬間、必死に抑え込んでいた感情があふれ出して、止められなくなって、涙で視界がにじんでいく。嗚咽が漏れる。

「うっ……、ううっ……!」

 ぽた、ぽた、ぽた。行き場をなくした想いが、(しずく)となって零れ落ちていく。

 当たり前にそばにあったものを失うのが、こんなにつらいなんて思わなかった。

 わたしは初めて、ひとりになった。

次回更新で第3章とこの第4章は同時に完結します。歪なトライアングルを描く少女3人が、夏休みの終わりを前にどんな答えを出すのか、どうか見守ってください。

鞠亜と明菜がゴンドラの中で何をしていたのかは、皆さんのご想像にお任せします。

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