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25.(エピローグ)栗の花


 その日、己が築いたカーストが崩壊したことをまだ知らない堂島は雪希との放課後デートを楽しんでいた。


 二人は仲良く手を繋ぎウィンドーショッピングに耽る。

 堂島はご機嫌取りとばかりに服をプレゼントした。

 それはハイブランドながら雪希が普段着ない背中が開いた露出度の高いブラウスで――


「聡君、ありがとう。優しい」


 下心満載のプレゼントを受け取る時、雪希は可愛らしく微笑んでみせた。


 堂島はプレゼントした服を着こなすセクシーな雪希を想像して――

 これには堂島も思わず赤面した。


「そ、それにしても今回は災難だったな。あの後、由香達には俺からも言っておいたから、雪希も彼女達を許してやってくれ」

「ありがとう。これで友達を無くさなくて済む。聡君は本当に優しいね」

「そんなことないさ」


 雪希に「優しい」と繰り返し褒められ満更でもない堂島。


「正直、今日は聡君に振られるんだと思ってた」

「まさかっ!」

「落ちぶれたこんな私と付き合っても意味ない。それなのに、なぜ?」

「それは……」


 それは当然だ。彼氏()に惚れさせるために父親の力を借りてまで手に入れた雪希の人質話(スクープ)――これで彼女の心を揺さぶり、仕上げに声の異能で支配した。更に依存させる為に、今回の事件を雪希達に起こさせ雪希を孤立させたのだ。

 ファストファッションの様に女性を取っ替え引っ替え重ね着(二股)すらしている堂島であったが、意外にも雪希だけは本気で惚れていた。堂島にとっては初の純愛だった。してきたことは褒められることではなく雪希を傷付ける様なこともあったが、(ひとえ)に雪希の愛情を得るためだった。今は真に恋人関係になれたと、堂島は結果に満足していた。


「俺は雪希のことを信じてるからな」

「ありがとう」


 雪希は俯いて、また堂島の顔を見上げた。 


「ねぇ、聡君。私にとって聡君はどんな存在?」

「えっ? 雪希にとっての俺?」


 尋ねるなら、普通は逆じゃないだろうか。

 しかし、この質問は恋人への雪希の甘えみたいなものだろう。


「そりゃ、最愛の人だろう。雪希は望んで俺に身も心も捧げただろう?」


 声の異能でその様に命令し、その命令は今も雪希の心に根付いているはずだ。


「そっか。そうだったね」


 その答えに雪希も満足したらしい。

 彼女はしきりに頷いた。


 堂島は思わずニチャリと嗤った。

 

「あぁ、そう言えば……今日ってこの後も空いてるか? 前に気になってるって言ってたベチュラー(流行りの配信ドラマ)だけどさ、一緒に見ねぇ? 自慢だけど、本格的なプロジェクターがあるから映画館気分で見れるぜ」


(それに、身体がムラムラしちゃう特別ドリンクも用意してるからさぁ、ぐへへ……)


「嬉しいけどごめんなさい。今回の停学で門限が設けられた。もう帰らないと間に合わない。破ると家を追い出すとも言われてる」


 予想とは反した雪希の反応――堂島は肩透かしを食らった形となった。


(いやいや、ここまで来て据え膳は無いだろう)


 堂島は雪希を抱き締め囁く。


《家に来て、セ◯◯スしようぜ》


「……」


 堂島の言葉を聞いた雪希はいつもの様に脱力する。

 そして、囁き返した。


堂島(・・)君は私の純潔を大事にしてくれるよね》


「あ、あぁ……」


 雪希のその言葉を聞いた時、堂島は途端に自分の性欲を無理に雪希に押し付ける事が不味い気分になった。

 そして、前の事件のせいと言われると、堂島としてもこれ以上は無理に誘えなかった。


「私、帰るね」

「そ、そうか……(他の女とヤッてずに、もっと早く連れ込むんだった)」

「うん、本当にごめんなさい。それじゃあ、また……」

「あぁ、じゃあな……」


 堂島は残念さを露わにしながら雪希の腰に回した手を解いた。


 しかし、今度は雪希から距離を詰めて――


「これ、私の気持ち」


 堂島の唇にキスをした。


「――それじゃあ」


 そして、雪希は走り去った。



 置いてけぼりにされた堂島。

 しかし、彼はほくそ笑んだ。


「思ったより素っ気なかったから(異能の)効果を心配していたんだが、手間をかけさせやがって。やっと……やっと落ちたぞ! ははは!!」


 そして、彼は高笑いした。


 ちなみに、堂島はこの時既に雪希に新たな毒を仕込んでいた。

 同じく停学処分になって、クラスメイトとも孤立しているらしい雪希の()友達の由香と沙織を堂島は纏めてセフレにしていた。更に、彼女達に雪希を更に口説く為の脅迫ネタを探させる協力を取り付けていたのだ。

 今頃、雪希のスマホには彼女達からの仲直りのメッセージが届いているに違いない。



 しかし、堂島は気付いていなかった。


 自分自身が既に毒を飲み込んでいることを――


 そして、雪希が栗の花に似た独特の()えた匂いをさせていたことを――




 そして――


――さくっ……


「えっ……?」


 堂島は脇腹から急激な熱さと痛みが広がるのを感じた。


「い……いてぇぇぇッッッ!!!」


 彼はその場に倒れ痛みにのたうち回り、自分を刺した(・・・)女を見上げた。


 その女は見覚えがあるようで、しかしこんな見窄らしい女に見覚えがある訳がなく――

 その女は先日、堂島に騙され取り巻き達に輪姦された名無し君の幼馴染の雫だった。しかし、堂島は捨ててしまった女のことなど全く覚えていなかった。


「お前が……お前が……お前のせいでッッ!!!」


 激昂した雫は尚も手に持つナイフで堂島に襲いかかり――


「やめろぉぉおッッッ!!!!」


 堂島の悲鳴が夜の喧騒を貫いた。




 その時、雪希は堂島が襲われ周囲に人だかりが出来る様を遠目から眺めていた。

 近くで待機していた由香と沙織も慌てて堂島に駆け寄る姿もばっちり見えた。


「不幸の願掛け(キス)、効いた?」


 『藁人形』である雪希が願掛けをしたのだ。

 当然、堂島に不幸が訪れるだろう。


 そして、彼女は濁った瞳の中、ハートのハイライトを浮かべ――


「一緒に地獄に堕ちよう。堂島君♡」


 雪希は口角を歪に上げ醜穢に嗤う。

 それは復讐に囚われた陽にそっくりの笑みだった。



 陽を嵌めた者達による愉快なラストダンスが今、始まる――


拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

これにて、第一章『人形劇編』終幕です。

第二章『兄妹編』は1話目だけ投稿し、他は執筆完了次第にしたいと思います。


あと、たくさんの感想ありがとう御座います。全部、読んでます。

ネガティブな感想も参考になりました。

今だから言えるのですが、「そうなんだよ。期待してくれる貴方の言う通り! でも、今その解説を返信したらネタバレになるし……」で、返信しませんでした。

この後、順次お礼の返信をしたいと思います。


あとお願いですが、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして『ポイント評価』をして下さい。

作者の今後の執筆の励みになります。

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― 新着の感想 ―
しかし、この元幼馴染やその友人含めて同情の余地ゼロ。 精々、この話の登場人物で同情出来るの雫ぐらいなんじゃあ。 堂島は死に逃げかな。
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