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キリのいいところで終わらせたので、少し短いです。すいません。

「…………はい?」

 え、と固まるリツキさん。


 だよねぇ〜、初見だとびっくりするよね。

 なにせ、()()()()()()()()()()()()()()に手足が生えたバケモノがふよふよと浮いているんだから。


「コレ………なに?」

「あー、んーっと…………説明が難しいんですが…。

 あれ、HPゲージが存在しないモンスターなんですよ。それれ。」

 そう。このルービックキューブにはHPゲージが存在しない。

 じゃあ、どうやって倒すんだ、っていうところだよね。このルービックキューブを倒すには……。


「コレはギミックで倒すしかないんです。」

「ギミック?」

「はい。このモンスターはマスに攻撃を当てることでランダムに縦横どちらかに一回回転します。それを使って、すべての面の色を揃えることができれば良いんですけど……。」

 と、私は横目でモンスター―――ギミック・ルービック・キューブを見やる。


 何処(どこ)かコミカルな白い手(本体からは浮いている)を自由自在に操り、何処からか出現した大斧を持たせこちらへと接近させてくる。

「え!? え!? もしかして、普通に攻撃してくるの!?」

「そうなんですよ。」

 先程の条件だけでも結構厳しいのに、攻撃までしてくるのだ。

 この攻撃も結構痛い。


「むっず!!」

 リツキさんは魔法でつくったのだろう氷の剣で、大斧の攻撃をバリィする。

 あ、パリィってスキル持ってなくてもできるのね。

「そりゃそうですよ、だってこれ【砂血の大地】のエリアボスですもん。」

「はい!?」


 うん。そう、このギミック・ルービック・キューブ、エリアボスなんだよ。

 このエリアボスをあと十体倒せっていうのが腐血種族クエストのクリア条件。…しかも、制限時間付きで。

 確かに、このエリアボスは腐血や吸血鬼にとっては倒せなくもない敵だ。

 だが、そのことに気づくまでに何時間掛かることか……。

 かく言う私も何時間も、ほんっとーに何時間もかかった。


 ほんとこのゲームの運営は性格悪いね!


 リツキさんは攻撃を捌きながらこちらへと話しかけてくる。

「つまり、シルフィードさんはコレを撃破したと…?」

「はい、そうですね。コレを連続で十体倒せっていうのが腐血の種族クエストのクリア条件でしたから。」

「え……。鬼畜だね。」

 私のその言葉に、リツキさんも絶句する。

「ハイ。本当に疲れましたよ。」


 私は血液でパリィし、ほぼ戦闘には関与していない。

 リツキさんは反射結界を魔法でつくって弾き返すか、剣で弾き返しているので、何度か風の刃みたいなものが飛んで、ギミック・ルービック・キューブに当たっている。


 コツを掴んだのか、リツキさんの攻撃が何度もあたり、くるくるブロックが回転して、シャッフルされていく。

 順調だね。……そのたびにガッシャンガッシャンって音がなるのはうるさいからやめてほしいけど。 


「あ゛〜〜〜! もう!」

 いつまでも倒せないことにストレスが溜まったのか、接近してドッカンドッカン遠慮なく魔法を打ち込み、また、剣で攻撃するリツキさん。

 あ、すごい。一面揃った。


 どがぁぁああん、と一際大きな音がしたかと思うと、リツキさんが後方まで下がってくる。

「なん、っなのあれ!

 超面倒くさくない!?」

「あははー、ガチめんどいですけど…まぁ、拘束できればそこまでは。」

「確かに……って、あれ? 拘束……できるの? いや、そんなわけないか。」

 ぶつぶつとなにかを言いながらも迎撃するリツキさん。イケメンですね。


 ん? あ。

 やばいやばい。リツキさんの顔に見惚れていたら、もう結構遅い時間になってる。

 私情で申し訳ないけど、明日の朝はちょっと用事あるし、早めに切り上げてもらいたい。


「あのー! リツキさーん!」

「なにー?」

 戦闘音で声を張り上げないと聞こえない。


「時間的にもう私が倒しちゃっていいですか!」

「え!? あ! ごめん! お願いしていい?」

「はい!」


 よし、と私は()()()から血の入った瓶を取り出す。きゅぽ、と音をたてさせて栓を開け、中身を下へと振りかける。

 重力に逆らわず地面へと落ちていっていた血液にすぐさまスキルを使う。


「避けてください!」

 リツキさんにそう声をかけてから血液できた縄でマジック・ルービック・キューブの手足を拘束する。

 このモンスターは手足が宙に浮いているように見えて、キチンと繋がっている。なので、縄で縛って仕舞えば行動出来なくなる。


 もちろん、このモンスター以外のモンスターはほぼ血で拘束することができない。

 まぁ、何でもかんでも拘束できたら強すぎるしね。


 今のところ、拘束するモンスターのステータスより十倍くらい高くないと拘束は不可能らしい。

 一つでもそれ以下のものがあれば不可能なので、他の人ができたのはスライムだけだったらしいけど…。このモンスターは特別みたいなのである。


「んじゃ、失礼。」

 私は呼び出した刀を持って、マジック・ルービック・キューブに肉薄し、ぱぱっと手早く切る。


 問,マジック・ルービック・キューブの隣り合っている二つの面を切断したらどうなるか。

 答え,最後に切断した方の面の方向に一周回る。


 この性質に気づくまで何時間もかかった私は怒りに任せて一体ぶっ壊した(その前に二体頑張って倒していた)。もっと早くに気づけていたら、もうちょっと楽に倒せていたはずなんだよね。

 切り終わり、くるりと反転して振り返ると、全面揃った綺麗なルービックキューブの巨体が空に溶けていくところだった。



 その向こうで、ぽかん、としているリツキさんの顔が印象的だった。


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